第42話

レベル上げももちろんだし、付与魔法を使って試したいことも色々あるが、とりあえず一旦冷静になるために1時間ほどゲームをすることにした。

というより、動画として編集するための録画のストックが結構少なかったのだ。


なんだかんだ今でも少しづつドゲザーの再生数は伸びているみたいなので、今日は数日ぶりにドゲザーを遊ぶことにした。

やはりクロスプレイで人口が増えているのか、マッチングを開始するとすぐに成立し、特に問題なく試合が始まる。


「ん? 『honmonodesuka?』……誰か有名な配信者さんと同じ名前の人がいるのかな? え~っと……分からん。 最近は投稿するばっかりで、他の人の動画とか配信を全然見なくなったからな〜。 あとで久しぶりにドゲザーの配信がないか見てみるか」


とりあえずカウントダウンが終わったので、開始と同時に敵陣へ突撃。

普通に移動して、エイム力頼りのゴリ押しを敢行する。

本当は高速移動しながらグレネードを投げるのが一番強いのだが、私がこれをやられると純粋に殺意が湧くし、やる方としても動画映えはしないので、結局エイム力でゴリ押す方が動画の絵的にいい感じなのだ。


それにしても、やはり知っている名前の人とマッチングしないな……。

あの頃よく殺し合っていた人外の方々は、既に引退してしまったのだろうか?

チーターのオートエイムを超高速移動で全弾躱すような化け物達と、もう一度一緒に遊びたいな~……。


実はこのゲーム、バグなのか仕様なのかハッキリしていないが、理論上どこまでも加速することが出来る。

勿論加速し過ぎると認識も操作も間に合わなくて普通に事故るので、昔はある程度加速したら、それ以上速くなり過ぎないようにしていたのだが、それでもお互いにめちゃくちゃな速度で移動しながら銃を撃ちあうのは最高に面白かった。


移動が早過ぎて頭を空っぽにして本能レベルで操作をする楽しさを知ったからこそ、今でもこのゲームが1番好きなのかもしれない。

なぜなら私は考えないといけないFPSは下手糞だから……。


そんなわけで、頭を空っぽにして遊んでいるのだが、敵陣に突撃している間、読む暇はなかったが結構チャットが流れていた。

日本語入力しようとすると裏画面に行くバグが放置されているため、チャットは全て英語かローマ字なので、読むのが少し面倒なのだが、死んだタイミングで見てみると、どうやら有名人が本物で盛り上がっている様子。


「『gg』と『ez』と、読む時間が無駄でしかないチャットばかりだったドゲザーがこんなにも盛り上がっているなんて……チャット打つより、敵倒そうね? 敵ならどうでもいいけど、普通に負けそうだよ?」


お相手さん方はそこそこ強い人たちだった。

化け物レベルには程遠いけど、普通にやるな~と思えるくらい、キャラコンしながら弾を当ててくる。

それに対してお味方さんは……普通かな?

下手ではないけど、上手いとも言えない微妙なライン。

当然お相手さんは上手いので、お味方さんが次々やられているし、普通にスコアも稼ぎ負けている。


「調子はいいんだけど、ちょっと敵と会わずにお散歩してる時間が多いな……味方さんと一緒に行動するか」


というわけで、味方さんが何度も犠牲になるのを尻目に、頑張って敵のプレイヤーを倒してスコアを稼ぐ。

結構頑張ったので、めちゃくちゃ接戦になったのだが、残念ながら勝つことはできなかった。

これは正直、お相手の方々が普通に強かったとしか言いようがない。

敵も味方もチャットで『gg』と文字を打っている様に、負けはしたが内容は悪くなかった。

無双したわけでもないし見せ場があったわけでもないが、これは編集して動画にできるだろう。


「それで、チャットでなんて言ってたのかな?」


チャットをスクロールしていき、最初の方の会話を確認すると、こんな感じだった。


『honmonodesuka?』(本物ですか?)

『douga mitemasu』(動画 見てます)

『yu-meinahito?』(有名な人?)

『douga bazutteta hitoda』(動画 バズってた 人だ)

『wtf!?』(What the Fxxk!?)

『kusa』(臭or草)

『nani imano? yabasugi』(なに 今の? ヤバ過ぎ)

『mitaranigetehokanerao』(見たら逃げて他狙お)


「これって……動画を見てくれた人かな? まぁ、ドゲザーのコミュニティは狭いだろうし、リスナーとマッチングしてもおかしくはないか。 『gg』以外チャットうってないけど、大丈夫だよね? 『偽物です』ってうった方が良かったかな?」


そんなことを考えている間にリザルト画面に切り替わってしまったので、気にしないことにして次のマッチングを開始する。

初めてリスナーと遭遇したからか、だいぶテンションが上がっていることを自覚している。

今後ももっと、動画投稿を頑張ろうと思うのだった。




予定の1時間は少しだけオーバーしてしまったが、一応すべての試合で無双したと言えるくらい活躍し、朝日が昇るまで動画編集を行った。

そして開店時刻に合わせて買い物へ行き、帰ったら仮眠。

仮眠から起きてすぐスマホを確認すると、累から連絡が来ており、今日のクリスマスパーティーは累と2人きりではなく、この前の富考さんと牧添さんも参加の4人で行うそうだ。


時間は事前の予定通りらしいので、ゆっくりとお風呂に入って体を綺麗にし、身嗜みを整えてから、累の家へと移動する。

インターホンを押すと、出てきたのは富考さんだった。


「既知貝君いらっしゃい。 この前は本当にありがとう。 入って、もう準備できてるから」


「そうなんだ。 この時間に来て欲しいって連絡来てたけど、準備手伝わなくてよかったの? まぁたいした手伝いが出来るわけじゃないけど……」


「私と忍のお礼の意味もあるから大丈夫、気にしないで。 既知貝君の口に合えば嬉しいのだけど……」


(お礼か~……現金だけでウハウハの有頂天になれるから、あんまり気を使わなくてもいいのだけど……)


そんなことを思いながら家に上がり、リビングへ向かう。

リビングの扉を開くと、目の前には累が立っていた。

ただその服装は、少し屈めばパンツが見えそうなほどミニスカで、おへそも丸見えでお胸の谷間が全開の、超エッチなミニスカビキニサンタコス姿だった。

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