第43話
「め、メリークリスマスねくら……どうかな?」
累が顔を真っ赤にしながら感想を聞いてくる。
ここは思ったことを正直に答えるべきだろうか?
それとも、無難なことを言うべきだろうか?
……2人きりじゃないんだし、無難にしておこう。
「すごく可愛い。 見ただけで全ての疲れが吹っ飛んだし、見ている間、どんどん元気が湧き出てくるよ。 累のおかげで、年越しまで元気に頑張れそうだ」
「そ、そう? ……いつもより胡散臭さが少ないから本当かも……」
「既知貝君こんばんは。 この前はありがとうございました。 これ、このタイミングで出すのもあれですけど、私と夢からのお礼です。 本当にありがとうございました」
真面目な表情と口調でそう言いいながら、トナカイっぽいコスプレをした牧添さんが封筒を差し出してきたので、ありがたく受け取る。
ほぼ間違いなく、封筒の中身は紙幣だろう。
今年の年末年始は、美味しいものを食べられそうだ。
正直に言うと、今日は累との仲をさらに深めるというか、ハッキリさせるつもりだったので、この2人も参加すると聞いたとき、少しだけガッカリしてしまった。
だが、累が自発的に、こんなエロエロミニスカビキニサンタの恰好をするとは、到底考えられない。
つまりこの衣装は、富考さんと牧添さんの提案によるものの可能性が非常に高い。
お金のことも併せて、2人に圧倒的感謝……!
「とりあえず、クリスマスっぽい料理も用意しているので、熱いうちに食べましょうか。 ケーキも用意しましたから、ちょっとお腹に余裕を残しておいてくださいね」
「お酒も用意しました! ワインですけど……既知貝君は普段、お酒とか飲みます?」
「こ、この恰好のまま食べるの? ……ちょっと恥ずかしい」
「本当は私がトナカイで、忍がサンタの予定だったから……服のサイズがね。 でも、凄く似合ってるわよ。 本当にすごく可愛い」
牧添さんがあのエロエロミニスカビキニサンタの恰好をする予定だったのか……。
道理で累のサンタコスは少しサイズが小さ過ぎる感じがして、牧添さんのトナカイコスは少しだぼついた感じがするのか……。
元々2人でコスプレクリスマスの予定だったってことは、牧添さんはコスプレが好きだったりするのかな?
そんなことを思いながらも、和気藹々とクリスマスパーティーが始まった。
ワインはやはり、お子様な私の舌には合わなかったが、料理がめちゃくちゃ美味しい。
特に美味しいのがフライドチキン。
お店で売られている香辛料たっぷりのフライドチキンも確かにおいしいけど、このフライドチキンのように鶏肉の旨味を引き出す控えめな味付けの方が、私の好みだった。
ゆっくりと味わっているが、食べる手が止まらない……。
「こうして見ると、やっぱり既知貝君って男の子なのね…… がっついてる感じじゃないけど、食べてる量がやっぱり違うわ」
「どれを食べてもすごくおいしいからね。 それにお酒をあまり飲まないから、食べる方が多くなるんだよ」
「既知貝君はお酒飲まないんですか~? はじめて飲みましたけど、けっこ~おいし~ですよ~」
牧添さん、以前の累みたいに加減なく飲みそうな感じだな……。
既に1人でボトル1本分は飲んでいそうだし……。
そういえば、富考さんはあまりワインを飲んでいない。
お酒苦手ナカーマだろうか?
「富考さんはお酒苦手?」
「苦手ではないのだけど……人前ではあまり飲まないようにしてるの」
富考さんはめちゃくちゃ苦笑いだ。
これは過去に、お酒で何かやらかしたのかもしれない。
「少し暑くないですか~?」
そう言って牧添さんはトナカイの服を脱ぎ始めたのだが……トナカイコスの下に服をなにも着ていなかったようで、綺麗な色と形のお胸がモロ見えだ。
累よりも結構身長は低めなのだが、明らかに累よりも大きい。
ロリ巨乳はリアルに実在したんだね……。
「ちょっ、ちょっと忍!? ごめん、ちょっと寝かせてくるわね」
「ゆめ〜。 今夜はいっぱいエッチしようね〜。 最近ずっとできなくてさみしかったよ~」
そんなことを言いながら、2人は2階へと上がっていった。
……ちょっと気まずい。
2人が今夜、累の家に泊まる可能性は考えていたが、まさか友人の家でそんなことをするつもりだったとは……。
というかあの2人、そういう関係だったのか。
シェアハウスで一緒に暮らしている間にそういう関係になったのかな?
まぁいいか。
とりあえず、顔を真っ赤にしている累と、2人きりの状況になった。
せっかくなので、今のうちにプレゼントを渡しておこう。
「累。 これ、高いものじゃないけど、クリスマスプレゼント」
「え!? ……あ、ありがとう。 開けてもいい?」
「誰かにプレゼント贈るの初めてだから、あまり期待しないでね」
というわけで、累の隣に座り、今朝買ったプレゼントを手渡す。
プレゼントは普段使いできる無難なデザインのブレスレットで、無難に『回復』の付与を施した。
「ありがとう。 大事にするね」
累はさっそくプレゼントを開けて、ブレスレットを手首にはめて喜んでくれた。
その笑顔を見ていると、なんと言えばいいのか胸がざわついて、累を私のモノ、私だけのモノにしたいという欲求が湧き出てきて、体の中に強い熱があるように感じる。
まぁ常識的に考えて、人を物扱いする訳にはいかないので出来るだけ我慢するのだが、抑えきれない熱に押されて、気づけば累を抱きしめていた。
累は少し驚いたようだが、すぐに私の方を向いて、ハグし返してくる。
これではもう抑えなんて効きそうにない。
今夜は一切我慢せず、累とクリスマスの夜を愉しむことにした。
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