第2章 私は波に乗る男……になりたい
第10話
30万円……。
それが影打ちエラーの10円玉をネットオークションに出品したことで得た収入だ。
もちろん手数料やら送料やらを引いた純利益が約30万円だ。
「これでもう2か月は命を繋ぐことができるお。 いや〜……やっぱりなんだかんだでテレビって影響力があるんだな〜……。 3日目まで全く入札者が現れなかったのに、『テレビで取り上げてもいいですか?』って問い合わせにオッケー出しただけで、数時間後には何度も入札者が現れて、結果的にここまで価格が跳ねちゃうんだから、やっぱりテレビってすごいよ。 ……まぁ、うちにテレビはないけど」
もう完全にウハウハである。
「問題は、未だにダンジョンの宝箱とモンスターが復活してないんだよな……。 今日で11月も終わりだし、12月に入ったらダンジョンが復活してくれるといいな~」
今日お金が振り込まれると思っていたので、今朝は早くに目覚めてしまい、暇だったので朝のうちに日課のダンジョン散歩は終わらせていた。
一応お散歩だけではなく、ネットで買った300球700円のスチールボールを使い、銃の射撃練習も行っている。
地味に困るのが、撃った弾は溶けるのか燃え尽きるのかは分からないが跡形もなく消えてしまうので、毎日の射撃練習はお財布に悪いということ。
地味に嬉しかったのは、ネットでエアガンのガバメントのマガジンがめちゃくちゃ安くなっていたので買ったところ、魔法銃でも全く問題なく使えたことだ。
これやっぱエアガンをダンジョンが取り込んで、それを魔法銃に魔改造したのでは……?
「まぁいいや。 この後はなにをしようかな〜。 昨日ハイテンションで今日の分の動画編集までやっちゃったから、久しぶりに暇が出来ちゃったけど……」
そんなことを言っていると、スマホの通知音がなった。
画面には、知り合いと一緒にゲームをするとき、よくボイチャとして使っていたアプリが表示されている。
久しぶりにチャットが来たようだ。
パソコンの方で確認してみると、フレンドの1人から『今なにしてる?♡』とのメッセージ。
相手はもちろん同性の男性だ。
とりあえず『ちょうどさっき暇になった』と返信。
すると、『ドゼザーしよ〜』とのお誘いが……。
「久々にやるか……あ、せっかくだし録画しておこう。 え~っと、ゲーム音とボイチャ音を分けて録画するのはどうやるんだったっけ……?」
少し録画の設定を変えてから、ボイチャのサーバーで合流した。
「どーもどーもお久でーす。 よろしくお願いしまーす」
「お久でーす。 違い無さんホントめっちゃ久しぶりっすね。 会社倒産して無職になったって話してましたけど、最近なにしてたんすか?」
『違い無』は「ちがいね」と読む私のアカウント名だ。
「最近? ワンチャンバズらないか期待して、動画投稿してるよ。 一応ちゃんと仕事は探してるけど、このご時世だとねぇ……」
「え!? 動画投稿してたんですか? チャンネル名なんです?」
「普通に『チガイネチャンネル』だよ。 でもまぁ、やっぱりなかなか伸びないよね〜。 ゲーム実況は母数多いから、無名の動画投稿者はマジで伸びないと思った」
「いや、登録者500人以上いるじゃないっすか! 大手有名どころがやばいだけで、普通に多い方だと思いますよ……後で見とこ。 とりあえず2人なんで、カジュアルでいいですよね?」
「オッケーオッケー。 なんだかんだドゲザーは久しぶりだから、最初沼プレイすると思うし介護よろしく~」
「そう言ってまた神エイムでゴリ押すんでしょ〜? 知ってからね。 ブランクあってもエイムでゴリ押しできちゃうの」
(……普通にエイムがガバるときはクソ雑魚なんだけどな〜……)
ドゲザー……正式には『Don't get there』という名前のゲームで、6対6対NPCという形式で戦う結構珍しいスポーツFPSだ。
基本的には普通のチームデスマッチで、最初に250ポイント稼いだチームが勝ちというシンプルなルール。
プレイヤーは、プレイヤーを倒せば5ポイント、NPCを倒せば1ポイントなのだが、NPCからすれば敵は全員が5ポイント。
そしてこのNPCチーム、地味に強い。
ゲームに初心者が複数人いると、結構な確率でNPCが勝っちゃうくらいには強い。
キャラクターの移動速度が速いうえに変則的な挙動もできるので、難易度は非常に高いと言わざる終えず、ハマる人はとことんハマるのだが初心者離れは非常に激しい。
(人が少ないせいで、初心者が強い人しかいない試合に入ることさえなければ、普通に面白いゲームなんだけどな〜……)
そんなことを考えていると、マッチングしたようで試合が始まった。
「ま、ゲームなんだし、楽しくできればいいか」
「そんなこと言いながら違い無さん普通に無双するんでしょ! 今でも違い無さん1人で37キル取った試合覚えてますよ」
……そんなこともあったな〜。
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