第11話

久しぶりのドゲザーはやはり楽しかった。

あまり集中している感覚ではなかったが、相手の動きをしっかりと認識できて、エイムも普通に調子がいい感じだ。

あくまでも『調子がいいな』と感じる程度の感覚なのだが、もしかするとダンジョンでレベルアップしたことによって、地味に肉体のスペックが上がっているのかもしれない。


「ちょっ! 違い無さん無双し過ぎでしょ! さっきからずっと20キル超えじゃないですか」


「いや、なんか今日NPC全然見ないのに敵とはめっちゃ遭遇するんだよね。 なんだろう? 今のメタと相性いいのかな?」


「メタとか関係なくエイムで捻じ伏せている件……」


「あ~……確かに何度か綺麗に頭入って助かった場面あったね」


「後ろいましたけど普通にヤバかったっすよ。 3人相手なのに普通に弾避けながら撃ち勝ってましたもん。 流れ弾で死にました」


「ドンマイドンマイ。 でもやっぱ久々にやったけど、もうこのゲーム上手い人しか残ってない感じだね。 ちょっとでもキャラコン甘いと一瞬で溶けるわ」


『人類には早過ぎたFPS』という声もあるドゲザーは、とにかくエイムの難易度が高い。

元プロゲーマーでも敵の移動の速さに慣れないうちは、一般人にボコボコにボコられる程度には難易度が高い。

だからこそ、普通は超高速変態機動でキャラコンしながら弾をばら撒くらしいのだが、やはりもうこのゲームには極まった人しか残っていないのか、ちょっとでもキャラコンミスると当然のように瞬殺されていた。


「それ多分エイムアシスト。 先月のアプデでPCとCSでクロスプレイが出来るようになったんすよ。 そんで、CSのエイムアシスト強すぎ問題がドゲザーでも少しあったんですけど……まぁPC鯖は元々、あんま人がいなかったからほとんど話題にならなかったんですよね~。 マッチング速くなった方がありがたい環境だったし」


「めっちゃマッチング早いな~と思ってたらそうだったんだ。 まぁ、毎試合同じ名前の人を見かけるよりは、相手にだけアシストがあってもいろんな人とマッチングする方がいいかな。 極まってる人たちと戦い続けるとマジで疲れるし……」


「そうっすよね~。 俺もこのゲーム、1時間ごとに休憩入れないとマジでつらいっす。 時間的にちょうどいいです、今日は次で終わりますか」


「了解でーす」


というわけで最後の試合だ。

本当にすぐマッチングするようになったので嬉しい限りだ。

コンシューマー機を持っていなかったので知らなかったが、もしかするとCS版は結構人の多いゲームだったのかもしれない。


ただまぁ、相手がPC版だろうとCS版だろうと、私がすることは非常にシンプルだ。

プレイヤーっぽい人に向かって突撃し、真正面から撃ち合いをしてゴリ押す。

撃ち負けそうなときや敵が複数いる場合、それにプラスして頭を狙い、ワンチャンに賭ける。

結局FPSは頭に弾を当てた方が圧倒的に強いのだ。

マグレで頭に当てられちゃったのならともかく、何度も何度も頭に当てられる人はキャラコンが足りていないか、無警戒に歩き過ぎだと思う。


例えば今倒した敵さんもそう。

お互い壁を走りながらの撃ち合いは、先に壁を離れて挙動を変えた方が弾は当たりにくいのだが、敵に弾を当てる意識が強すぎて自分の動きが疎かになっていた。

もちろん壁を離れた後は即敵を倒せないと、今度はこちらが圧倒的に不利になってしまうのだが、沼エイムが出ない限り撃ち勝てるくらいには、エイム力には自信がある。


(……最近は全くエイム練習出来てないな。 いやむしろ、リアル射撃のエイム練習はしてるけど……。 最近録画しててたまにしか魅せプができないのって、やっぱり練習不足なのかな?)


最近は動画編集にも慣れてきたのか、少しづつ時間に余裕が生まれてきているような感じだ。

まずは仕事を探さないといけないことには変わりないが、ダンジョンに変化が起きるまでは、空いた時間にエイム練習をして、感覚を磨いた方がいいのかもしれない。


「ラスキルゲットー! うわ、違い無さんまた21キルしてる。 やっばぁ……」


「ホント今日はなんかいい感じだったわ。 あ、もしかするとCS勢増えたから弾当てやすかったのかな? パッドってキャラコンが難しいって聞くし」


「このゲームで弾当てやすいって言ってる時点で相当ヤバいっすよ。 というか、仕事探してるのならプロゲーマーとか目指してみたらどうですか? ドゲザーは大会とかないですけど、ドゲザーで強いなら他のFPSでもプロ目指せるだけのエイム力でしょ」


プロか……プロねぇ~……。


「無理無理。 頭良くないとプロで活躍は無理だもん。 勉強は真面目にやったけど素の頭の出来がよくないから……プロとしてはやっていけないと思う」


プロゲーマーに限らず、今の時代どんな仕事だって、頭が良くないと稼げない時代なのだ。

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