第12話

「昨日は久しぶりに楽しくゲームしたな~。 やっぱ動画投稿ためにゲームしてると、色々考えちゃってなかなか純粋に楽しめないのかな? 今度からはもう少し、楽しむことを意識しながらゲームしてみよ」


そんなことを考えながら、今日も朝のダンジョン散歩会場に到着。


「……通路が完全に変わっちゃってる!」


昨日の朝までは十字路だったダンジョン入り口。

しかし今は、明らかに行き止まりの左と、正面にしか通路がなかった。

今日から12月に入ったので、もしかするとダンジョンは月ごとに更新されるのかもしれない。


「あ、そうだ。 スマホの『地図』は……あ、データなしなんだね。 前は最初からマップが完成してたけど、一度通った通路を自動でマッピングしてくれるのかな?」


というわけで、右手に金槌、左手にスマホ、腰のホルスターには銃を装備し、ダンジョン探索を開始した。


まずは行き止まりっぽい左へと進む。

特に何もなかったが、スマホの画面に表示されている『地図』に、入り口からここまでの通路が表示された。

やはり『地図』には、一度通った通路を自動でマッピングする機能があるようだ。


「やっぱり『地図』はめっちゃ便利だね~。 地図なしじゃホントにいつか遭難するようになっちゃうかも」


そんなことを言いながらも、ダンジョン内をサクサク進む。

宝箱があるかもしれないし、マッピングをしておきたいので、行き止まりのように見えるルートもちゃんと確認。

するとさっそく、茶色の宝箱を発見した。


「なにがでるかな~?……スマホやん」


スマホは既に持っている。

やっぱり電源が入っていないのか画面はつかないが、このスマホが今持っているスマホと同じ性能の物なら、表に出さない方がいいだろう。


「普通のスマホなら売って少しはお金になるけど、このスマホは多分お金にできないんだよな〜。 あ、そうだ。 このスマホってなんて名前なんだろう? スマホのカメラじゃスマホの情報映せないし、ちょっと確認するか」


一応周囲に敵がいないことを確認し、『カメラ』を起動してスマホを映す。


「『スマートフォン型多機能迷宮端末』か……思いっきりスマートフォンって書いてるやん……ん? なんか出た。 『現在のスマートフォン型多機能迷宮端末にこのアイテムを統合なさいますか?』……『はい』に決まってんだろ~!」


統合ということは、恐らく融合とかフュージョンとか変形合体的な何かで限界突破し、今使っているスマホがパワーアップするのだろう。

そう考えて『はい』の表示をタップする。

すると、画面に映っていたスマホは消えてなくなり、画面に新たな表示が現れた。


『統合完了。 バッテリー容量が少し上昇し、バッテリーの消耗が大きく減少いたしました』


「……確かにバッテリー持ちが良くなったら性能アップだけど……違うよ! そうじゃないんだよ!」


ファンタジーなスマホなので、よりファンタジーな方面に強化されることを期待したのだが、めちゃくちゃ無難なところが強化されてしまった。


確かにこれはファンタジーなスマホだが、3日に1回は充電していた。

だが普段から、パソコンと、ネットに必要なモデムやルーターと、冷蔵庫以外のコンセントは、使うときしか挿さない様にして節電している。

スマホの充電回数が減る程度では、電気代にはほとんど影響がないだろう。


そんな訳で少しガッカリしていると、どこからか足音の様な音が聞こえた。

ダンジョン内は少し音の反響があるので、正確な方向かは分からないが、来た道の様な、壁の裏から聞こえるような……。

少し手前に分岐路があったので、音の発生源はもう一つの通路の方にいるのかもしれない。


もしこの足音がモンスターの発している音だとすれば、ダンジョンが一新されてから初めての戦闘になる。

未知のモンスターが現れる可能性も考え、ホルスターから銃を抜き、コッキングしていつでも撃てる状態にしてから近づくことにした。


足音を立てないようにゆっくりと移動する。

やはり、聞こえてくるのは足音で間違いないようだ。

この曲がり角の先にモンスターが来ているはず……。

角からチラッと顔を出して確認すると、そこにはゴブリンが1匹歩いて近づいてきているだけだった。


「何だゴブリンか。 見た感じ1匹しかいないみたいだし、普通に撃つか」


というわけで発砲。

落ち着いた状態でしっかりと狙って撃ったので、普通に頭に当たり、ゴブリンは消滅した。


「だいぶ慣れたけど、やっぱりちょっと銃声が大きいな。 弾の大きさ自体は小さいんだし、サイレンサーさえ付ければだいぶ音はマシになると思うんだけど……帰ったら自作出来ないか調べてみるか」


マガジンは問題なく使えるのならエアガン用でも特に気にしない。

だが流石にサイレンサーは安全性に直結するパーツなので、使えるのか分からないエアガン用の物を買おうとは思わなかった。

本物の銃で使われるサイレンサーはさすがにないと思うので、恐らく自作するしかないだろう。


「まぁ、今はとりあえずダンジョンを探索するか」

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