第15話

「昨日はめっちゃ疲れたけど、寝たら意外と疲れてないな。 なんだかんだ最近は毎日ダンジョンを歩き回ってるから、体力がついてきてるのかな?」


和室の侵入経路封鎖計画は問題なく進行し、日付が変わって少しした頃に作業は完了した。

これで普通はこの部屋に誰も入れなくなったはずだ。

めちゃくちゃ美味しいお肉を食べた夕食以外ずっと作業をしていたので、残念ながら昨日は動画の更新をすることはできなかったが、今日もいろいろと見直しをするつもりだったので、昨日の時点でSNSに動画投稿が数日止まると書き込んでいる。

できれば今日で、ダンジョンの存在を隠蔽してしまいたい。


「さてそれじゃあ……とりあえずお客さんの視点に立って、不自然なところがないか確認してみるか」


というわけで、まずは玄関に背中をつけて、家の中を見渡してみた。


「靴が一足で……あ、普段ダンジョンのとこで靴脱いでるから、昨日累が来たときは靴がなかったじゃん。 ……洗って風呂に置いていたことにするのもいいけど、今から洗うのもあれだし、しばらくは靴箱に入れることにしよう。 新しい靴も買わないとな……。 それで和室だけど……見た感じ全く不自然さは感じないね。 たぶん大丈夫そう。 反対側に目を引くものを置いて、和室への注意を逸らすのもいいかも?」


スマホで『玄関』『飾り』と調べると、風水がどうとかいう信憑性が微妙な記事が多かったが、招き猫を置くといいと書かれていたので、靴と一緒に買うことにしよう。

玄関を移動して、今度はリビングへ。


「う~ん……少し違和感を感じるな。 開きやすい方の襖を封鎖するために、襖を入れ替えたからかな? 表も裏も同じ絵柄だったから行けると思ったけど、左右が逆だと微妙に違和感が……。 私がこの家で育ったから、違和感を感じるだけかな? 一応封鎖はできてるし、正直何とも言えないわ。 とりあえず良しとしよう」


そして最後。

玄関を開けて外に出て、伸びをしながら周囲を観察する。

誰もいないし、累の家にも人影は見えない。

累の家の窓にも、人の目はなさそうだ。


「カーテンの色が変わってるな〜。 あそこが累の部屋かな? ……なんか今最高に気持ち悪いこと言った気がする……」



とりあえず和室の窓の前へと移動し、違和感がないか観察する。

光を99.9パーセントカットしてくれる障子紙というものがあったので、それならわざわざ窓ガラスに覗き防止のシートを張るのも不自然化と思い、窓は透明な防犯シートを張ることにしたのだが、窓から障子は見えるが中の様子は一切見えないし、なによりも外からの見た目に全く違和感を感じなかったので、ここは多分問題ないだろう。


「我ながらいい仕事したな~。 それじゃあ、ダンジョンに行こうかな。 10万円がなくなったどころか、靴と招き猫買ったらマイナスになっちゃうし。 戻ったら……今日まで動画投稿は休んで、PCデスクを作ってから模様替えしようかな」


というわけで準備をしてから移動し、今日もダンジョンの探索を始めた。

そして、サイレンサーを自作出来ないか調べることを忘れていたことを思い出し、メモにちゃんと残しておく。


「それじゃ、今日はいつも以上に頑張るか!」




2時間ほど探索を行い、地上へと戻ってきた。

なぜいつもよりも長くなったのかと言えば、単純に以前とは段違いでダンジョンの迷路が複雑になっていることと、宝箱がなかなか見つからなかったからだ。

ゴブリンと多く遭遇したことも要因の1つだろう。

多い時には4匹の集団だったが、所詮は頭1発で死ぬゴブリンなので、そこはたいして問題に感じていない。

やはり問題は、宝箱が少ないことだろう。

今日は1つしか宝箱を見つけることが出来なかった。


「でもまぁ、その1個の宝箱から今度は30万もゲットできたんだから、粘った甲斐はあったよね。 現金最高!」


現金が出るのは2度目なので以前よりも少しだけ落ち着いているが、少しだけハイテンションな状態で、とりあえずサイレンサーについて調べる。


「エアガンだとアタッチメントをつけて、そこにサイレンサーを付けるのか。 でも強度がなぁ〜……う〜ん、どうしよう? 」


今使っているガバメントの見た目の魔法銃は、見た感じサイレンサーをそのまま付けられる銃ではなかった。

銃口にアタッチメントを付けることで、サイレンサーを取り付ける方法もあるのだが、正直アタッチメントに不安がある。

となれば、バレルを別の長いものに交換し、バレルの周りに消音効果のある物をつける方法が有力になるのだが、この銃は魔法銃であり、普通の銃とは違う。

一度パーツごとに分解したあと、再度正しく組み直しても、魔法銃としての機能がなくなってしまう可能性があるのだ。


「……もう1丁銃が手に入ったら、リスク覚悟でバラしてみようかな。 魔法の銃って、めちゃくちゃ構造が気になるし」


ということで、銃の消音化計画は先送りすることにした。

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