第4話

手の中にある物を見る。

この武器は世界中にあると思うし、この国にも恐らく沢山あるだろう。

だが、この国で生活している人の中に、実物を見たことがある人はほとんどいないはずだ。


「銃だ……それも超有名どころのガバメント……。 やっぱり金属製だから重いな。 そうだ弾は?」


親指でボタンみたいなものを押して、手にマガジンを落とす。

弾は入っていなかった。


「……というかこれ、偽物じゃね? これだと銃弾は入らないよね? え〜……? あ、これ完全に偽物だわ。 エアガンってやつだ。 ……何で金属製でこの見た目なんだよ! 紛らわしいわ死ね!」


というわけで、マガジンをおもちゃの銃に戻し、銃はリュックの中に入れておく。


そして少し来た道を戻り左折。

道なりに進むと、大きな扉を見つけることが出来た。


「扉か……ボスでも出るのかな? でも疲れてるしお腹空いたし、今日はもう戻ろうかな。 そろそろ戻らないと、今日の分の動画投稿が間に合わないだろうし……」


というわけで、ボス戦かもしれない扉を今日はスルーして、マッピングした地図を頼りに戻ることにした。

意外にも地図は正確だったみたいで、ほぼ迷わずに家へと戻ることが出来た。




「なんとか間に合った……」


ダンジョンに少し時間をかけ過ぎてしまったが、なんとかギリギリ時間内に投稿の予約を済ませることが出来た。

良くも悪くも、投稿した動画の再生数はちゃんと伸びているし、登録者数も少しづつ増えている。

もう少しペースアップして欲しいところではあるのだが、このペースでも1年くらい後にはワンチャン収益化ができそうな雰囲気もあるので、なかなか見切りをつけられない今日この頃……。


「まぁ、数ヶ月以内にまとまったお金集めないと、どんどん生活が苦しくなっていくだけなんだけど……。 そういえば、今日ダンジョンでゲットしたやつ、まだ確認してないな。 飯の前に確認しておくか」


というわけで、まず最初に取り出したのは、もちろん銃のおもちゃだ。

弾は撃てないとしても、金属で作られているので、普通に鈍器として使えそうな重厚感がある。

とりあえずマガジンを取り出して再度確認。


「やっぱ銃弾は入らないよな。 エアガンだとたしか……BB弾だったっけ? あれなら入りそうだけど」


100均でおもちゃの弾が撃っているのを見た記憶がある。

明日は買い物に行くつもりだったし、ついでに買いに行こう。

このおもちゃの銃を売るとしても、動作確認をしていない本当に見た目だけのおもちゃなのか、それとも一応弾を飛ばせるのかで値段が変わるだろうし……。


「それで次は……あ、スマホがあったな。 差し込み口を見た感じ、今使ってるスマホと同じタイプCのケーブルで良さそうだけど……うん、ぴったりはまった。 充電できてるかな? とりあえず画面になにかでるまで放置するとして……。 小銭入れか」


見た目はちょっと高級そうな、普通の小銭入れだ。

所詮は拾い物ということもあり、金色のファスナーが錆びているのか硬かったので、ダンジョン内では中身の確認はしていなかった。

……まぁ、振ってみた感じ、たぶん何も入っていないだろう。

ただ見た目は落ち着いた色味で地味ながらも品がある印象なので、一度ファスナーを開けて、綺麗に清掃して開け閉めをスムーズにすれば、ワンチャン2,000円くらいで売れると思う。

ネットオークションに出すのなら、送料別で最低落札金額は500円にするつもりだ。


「とりあえずファスナーを開けないと話にならないか。 ……ホント硬いな。 錆を落とすやつは……あった。 あと綿棒も……」


というわけで、綿棒でチマチマとファスナーに錆取り剤を擦り付けていく。

擦って、力を入れて、擦って、力を入れて……。

2分ほどで、無事に壊すことなくファスナーを全開にすることが出来た。

やはり中には何も入っていない。

何も入ってはいなかったのだが……中が異常に広かった。

リュックに入れていた、水入りの1リットルペットボトルが入るほどだ。


「これはあれかな? アニメで出てくるマジックバッグみたいな感じ? ……流石にこれは売れないな……」


こんなファンタジーなアイテム、もし売るとしてもいくらで売ればいいのか一切分からないし、家のダンジョンを秘密にして独占している以上、どこでこんなファンタジーアイテムを手に入れたのか説明することもできない。

つまり、売らずに自分で使うべきだろう。


「……小銭入れがファンタジーなアイテムだったってことは、他のアイテムもファンタジーなものだったりするのかな……?」


オラ、数年ぶりにわくわくすっぞ!

あ、充電してたスマホの画面に何か表示が出てる。

ワクワク、ワクワク!

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