第3話

今日はいつもより早く目が覚めた。

というのも、昨日は短い時間だけだったけど緊張感を持ちながらウォーキングをしたせいか、動画を投稿した時点で凄く疲れていて、いつもより早めに寝たのだ。

早く寝た分、早く目覚める。

至って普通のことだろう。


一応パソコンで就活サイトを巡回したが、まだ早い時間だからか更新されていなかったので、今日は朝から地下探索に行くことにした。




「見た感じ、昨日と何も変わってないな。 今日も最初は昨日と同じルートを歩いてみて、何もなかったら別のルートに行けばいいか」


今日はちゃんとリアルメモ帳とボールペンを持ってきている。

マッピングしながら歩くことになるので少し面倒だが、遭難するよりはマシだと割り切って頑張ることにしよう。


「問題は金槌をどう持つかなんだよな……。 ポッケに入るものでもないし、わきに抱えて歩くか」


というわけで出発。

歩数を数えながら進む。

多分昨日と同じところに、右折できる通路があった。

入り口から50メートルくらいだと思っていたが、51歩目で通路に差し掛かった。

私の歩幅が80センチくらいということを考えると、実際は40メートルくらいだろう。


そのまま進み、右折しかない突き当りの壁へと到着。

歩数は45歩なので、入り口からここまで約80メートルくらい。

自分の周囲はよく見えるけど、80メートルくらいなら普通、壁があったら見えるはずなので、やっぱりダンジョンの中は暗いのだろう。


「いや、逆に俺の周りだけ明るくなってる説……ないかな?」


そんなことを考えながら、昨日石像になっていたゴブリンを倒した広間へ到着。

壁に沿ってグルッと一周したが、やはりここには何もなかった。

通路を少し戻って左折すると、すぐに突き当たりがあり右折。

少し進むと、前方に何かが置いてあるのを発見したので、近づいてみる。


「箱……?」


豪華な装飾がされている宝箱ではなく、茶色い紙で作ったようにも見えるただの箱が、石でできた台座の上に置いてあった。

どうせ失うものも大してないので、特に警戒することなく近づいて、箱を触る。

……触っても変化はないみたいなので、今度は持ち上げてみる。


「結構軽いな……まぁいいや。 なにがでるかな〜? ……あ」


開け方が分からないので指に力を入れると、箱が粉々に砕け散ってしまった。

砕けた箱は昨日のゴブリンみたいに跡形もなく消えている。

残ったものは……10円玉1枚。


「……ファァァァァック!!」


10円玉をズボンのポケットに入れ、遭難する可能性など一切考えず、ダンジョン内を走り回った。




このダンジョン……他にも階層があるかもしれないか……今いるこの場所は、あまり広くはないと思う。

もう歩幅はバラバラだと思うし歩数の数え方も適当だけど、広さ的には縦横150メートル程度で、迷路のようになっているだけの感じだ。

マッピングさえ終わったら、入り口から出口まで5分もかからずに移動できるだろう。


一応危険かもしれない要素としては、昨日石像になっていたゴブリンを倒した時の様に、広くなっている場所が6ヵ所あって、その度にゴブリンの様なモンスターと戦闘になった。

今度はゴブリンの石化がちゃんと溶けていたので普通に戦った。

今のところは、金槌でボッコボコに殴れば殺せているので特に問題を感じなかったが、この先複数体と同時に戦うかもしれないことを考えると、もう少しまともな武器が欲しいように思える。

でもまぁ、武器や防具については儲けが出てから考えよう。


儲けと言えば宝箱。

宝箱はあの後7個見つけた。

宝箱があった位置とモンスターと戦った位置は、マップにマークを付けてあるので間違いない。

肝心の中身は……何ともコメントに困るものばかりだった。


木製の壊れやすそうな指輪っぽい輪っか。

100均で売っていそうなパワーストーンっぽい石がついた、紐のネックレス。

電池切れなのかどこを押しても画面が付かないスマホ。

錆の酷いコイン。

真珠っぽい見た目の綺麗な丸い石。

革製の小銭入れ。

アンティーク感が半端ないけど現在では使えるカギ穴が存在しなさそうな鍵。


「もっと現金とか宝石とか貴金属みたいな分かりやすいやつが出てくれればなぁ……」


一応使い道があったり売れるかもしれないので、とりあえずリュックサックにしまっている。


「あ、また宝箱だ。 しかも茶色じゃなくて銀色じゃん! なにがでるかな~?」


今回も箱を片手で鷲掴むと、箱が粉々に砕けて中身が出る。

今回のお宝は少し重いうえに握り方が悪く、箱が壊れた際に掴みきれずに落としてしまった。

壊れていないか少し心配しながら拾ったのだが、それはゲームでよく見る武器の形をしていた……。

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