第7話

目を閉じ、大きく息を吸う。

ゆっくりと息を吐きながら、心臓の鼓動を感じる。

右手の中に『魔法の種』の感触を感じながら、体のどこかにあるかもしれない不思議パワーを探し、右手に集めるイメージを繰り返す。


今日は朝からダンジョン内を走り回った。

そしてさっき、インスタントのラーメンを食べたうえに、スープに白米を投下して、1滴残さず食べつくした。

つまり疲労と炭水化物の大量摂取によって、いい感じに眠気が……。


不思議な感じだ……眠くなればなるほど、妙な温かさが右腕を通って手の中に集まっているような気がする。

でもそれを意識すると感じ取りにくくなるから、眠いのに寝ないで意識して眠い状態を維持するという訳が分からない状態になっている。


どれくらいの時間が経過しただろうか?

ふと、右手の中に持っていた『魔法の種』の感触が軟らかくなったように感じ、ハッとした時には既に跡形もなく消えていた。


「これは……無事に使うことが出来たのかな?」


若干ボーっとしている頭でスマホを手に取り、『体調管理』のアプリを開く。


______________

Lv4


身長:168㎝

体重:62㎏

健康状態:良好


特技

・治癒魔法Lv1

______________


一瞬で目が覚めた。


「治癒魔法! 普通に嬉しい魔法じゃん! ……で、魔法はどうやって使うの? さっきみたいに半分意識を飛ばさないと駄目?」


治癒魔法ということは、恐らく怪我を治す感じの魔法だろう。

ただ、わざわざ魔法を使うためだけに怪我をするのはあほらしいし、魔法の使い方も分からないのに怪我をするのは馬鹿のやることだと考え、治癒魔法を試すのはまた今度にすることにした。


眠気は覚めてしまったが、今度は『目のコイン』を使ってみることにする。

先程と同じように大きく息を吸い、ゆっくりと息を吐く。

ついさっき『魔法の種』を使ったからか、さっきよりも簡単に手の中のコインへ魔力的な何かが伝わっていくような感覚がある。

そして、『魔法の種』よりも短い時間で、『目のコイン』は崩れるように跡形もなく消えてなくなった。


「なんだろう? 凄くあっさり終わったというか……まぁいいか。 それで、『体調管理』の方は……さっきと何も変わってないな。 『目のコイン』は治癒魔法と違って特技じゃないからかな?」


一応念のため、一度『体調管理』のアプリを閉じてから再度立ち上げたが、やはり表示に変わったところはない。

実際見え方に関しては……特に変化を感じなかった。

指輪をはめたときと似たような感じだが、指輪と違って変化を比較できないので、実際効果がどれくらいあったのかは分からないだろう。


「さて……それじゃあ、おもちゃかと思ったらなんとか魔法銃とかいう名前だったこいつをもう一回見てみるか……『装弾射出型魔法銃6-50-10』ね。 装弾射出型……装弾は普通に考えてマガジンに弾を入れることで、それを魔法の力で射出するってことなのかな? ……おもちゃの弾を買う前に知って良かったわ」


もう一度マガジンを取り出して、入りそうな弾を確認してみる。


「やっぱりおもちゃの弾みたいな丸い弾を入れる感じだと思うけど……ちょっと調べてみるか。 え〜っと、『エアガン』『弾』『大きさ』……へ~、6㎜と8㎜があるのか。 『ガバメント』『マガジン』……あ、これは通販サイトか……めっちゃこれとそっくり~……」


1,000円以下で販売されている、エアガンのガバメント用マガジンが、手元にある魔法銃のマガジンとそっくりな件……。

なんだろう……ワンチャンだけどダンジョンって、この世界にあるものを取り込んで、魔改造してお宝の箱に入れてるんじゃないの?

それこそこの銃とか、エアガンが元になってたりして……。


「とりあえずこれは欲しいものリストに入れておいて、一般的な弾の大きさは6㎜なのか……。 『鉄球』『6㎜』……あ、普通にあるんだ。 なるほどベアリング用ね。 これならホームセンターで売ってたりしないかな? 値段もそんなに高くないみたいだし。 一応これもお気に入りに登録しておくか」


とりあえずこれで、今日ダンジョンで手に入れた物の確認は終わることにする。

明日はスーパーの特売日。

私と同じようにお金のない人は大勢いるため、開店前から並んでおかないと、安くなっている商品はすぐに売り切れて買えなくなるのだ。


「明日は朝から買い物で、戻るのはたぶん昼前。 やっぱり昼過ぎには動画編集を始めたいし、ゲームは30分くらいで終わるFPS系かな……。 ダンジョンの探索もしたいけど……まぁ、動画投稿が早めに終わったらでいいか。 寝よう」

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