第6話

お腹いっぱいになり少し眠気も感じているが、とりあえずダンジョンから持ち帰ったアイテムの整理を続ける。


「次は……錆びの酷いコインか」


小銭入れっぽい見た目のマジックバックに使用した錆取り剤を、同じように綿棒を使ってコインに塗って、擦っていく。

だがコインの錆はファスナーよりも酷いので、塗り終わった後は少し時間をおいた方がいいだろう。


「というわけで次、丸い石。 大きさは……ぴったり1センチか。真珠みたいな艶があって綺麗だけど、なんか明らかに重いんだよな。 表面だけ特殊コーティングして中身鉄だったりする? ……磁石は反応しない。 なら鉄ではないな。 重さは……だいたい10グラムか」


銃はまだ確認できていないが、小銭入れだと思っていたものはマジックバッグだったし、スマホもよく分からないテクノロジーの入った高性能なものだった。

ということは、この丸くて綺麗な石もなにかしらのファンタジーなアイテムの可能性があると思うのだが……。


強くつまんでも割れないし変形もしない。

ティッシュで拭いた後舐めてみたが何の味もしない。

本当によく分からない、ただ綺麗なだけの丸い石だった。


「分からん。 次……鍵か。 これはまぁ、売らずにキープだよね。 この大きさだと普通のドアの鍵じゃないと思うし……そういえばダンジョンの扉、鍵がかかっていたか確認してないな……。 あの扉の鍵かもしれないし一応持っておこう。 それで他は……ネックレスと木の指輪みたいなやつか」


とりあえず身に着けてみることにした。

頭を通してネックレスを首にかける……特に何も感じない。

指輪はサイズの関係で左手の中指にはめる。


「ん? 指輪の方は着けたときになんか違和感あったな……何か効果があるのかも」


とりあえず立って、指輪をはめたり外したりしながら体を動かして、どんな効果があるのか確かめてみた。

凄く微妙だが、指輪をはめた状態だと動きが滑らかに感じるような……?

正直プラシーボ効果を疑うレベルの微妙な違いだ。


「まぁ、ダンジョンで手に入れたものだし、誤差程度でもきっとなにかしらの効果はあるはず。 この見た目じゃどうせ売れないだろうし、身に着けておこうかな。 ネックレスは……これも売れないだろうしお守り程度に身に着けておくか」


というわけで、錆取り剤を塗っていたコインの確認に移る。

少し時間が経ったからか、綿棒で擦れば錆が落ちて、コインの模様や書かれている文字が読める程度には綺麗になった。


「……どこの国の硬貨だこれ?」


読める程度には綺麗になったと言ったが、読めるとは言っていない。

見たことのない文字が書かれていて、数字すらないので調べることも難しい。


「困るな〜。 もっとこう、換金しやすいものが出ればいいのに……。 写真撮って……あ、そういえば翻訳アプリに書いてある文字を自動翻訳する機能があったな。 ネットで画像検索するよりそっちの方がいいか」


というわけで、アプリストアで無料の翻訳アプリをインストールし、起動した後カメラをコインに向けてみる。

翻訳アプリは検出した文字を日本語に変換する設定にしたが、文字は翻訳されなかった。


「これ文字じゃないの? それとも、もっと綺麗にしないと読み取れないとか? ……めんどくさ。 やっぱ画像検索するか」


というわけで翻訳アプリを終了し、カメラを起動。

カメラをコインに向けると、コインの文字に重なる様に『目のコイン』という文字が表示されていた。


「……ナニコレ? 『目のコイン』? 使えば目でも良くなるの? というか、『カメラ』にこんな機能あったんだ。 さっき使ったときは特に何も表示はでなかったけど……あぁ、ダンジョンで手に入れたものにしか反応しないのか」


机の上に置いていた銃は『装弾射出型魔法銃6-50-10』。

小銭入れっぽいマジックバックには『マジックバック1-1-1』

アンティークの鍵には『扉の鍵』としか表示されなかったが、綺麗な丸い石には『魔法の種』の表示が出た。

指にはめていた指輪は『繊細な指輪』で、ネックレスには『回復のネックレス』という表示。


「なにこのスマホめっちゃ便利じゃん……。 指輪とネックレスは名前で効果が分かりやすいし、多分着けてれば効果が発揮してると思うからいいとして……『目のコイン』と『魔法の種』はどうすれば使えるの?」


スマホの『カメラ』機能は、ダンジョンで手に入れたアイテムの名前を鑑定することはできるみたいだが、アイテムの詳細を知ることはできない様だ。


「『目のコイン』はともかく、『魔法の種』っていうアイテム名なら、魔法が実在するってことだよね? 触っても舐めても使えていないってことは、壊すか魔力的な何かを使わないと、『魔法の種』は使えないとかかな?」


壊すのは最終手段だと思うので、一度も感じたことがない魔力的な何かを、この『魔法の種』に流してみることにした。

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