第56話
初めての案件依頼は受けさせてもらったが、ゲームの先行体験は2週間後の18日から、10日間行われるらしい。
つまり、2週間以内に夜ダンジョンの探索を全て終えて、万全の状態で案件に取り組まなければいけない。
というわけで、ダンジョン探索をスムーズに行うためにも、新たな武器を作成することにした。
サブマシンガンは確かに発射音は小さくて、耳にやさしい銃だ。
だがどうしても、銃そのものが出す動作音は消すことが出来ないようで、1発撃つとモンスターに気づかれてしまう問題を抱えている。
そこで、動作音が小さくて、撃ってもモンスターに気づかれない銃があれば、一方的に暗殺できるのではないかと考えた。
モンスターを一方的に処理することが出来れば、間違いなく戦闘時間の短縮に繋がり、スムーズな探索の助けになるはずだ。
「というわけで出来たものがこちらになります……。 まさか魔力射出型の魔法銃が、複数の魔法付与の組み合わせで出来てるなんてね〜。 しかも付与魔法で付与魔法を付与とかいう意味わからない裏技もあったし、勉強になったな~」
ダンジョンから戻って案件について連絡を取ったのが午後の3時。
そして現在時刻は午前4時……累から連絡がなかったといはいえ、ちょっと熱中し過ぎてしまった……。
そして完成したのが『魔力射出型魔法銃3-50-50-10-1』という、AKMというアサルトライフルを参考にした、大きめの銃だ。
まぁ、形を参考にしただけで中身は完全に別物だが……。
この『3-50-50-10-1』という数字の意味も一応分かった。
3は弾速、50は射程、50はマガジン数で、10は弾の直径、1は1度に発射される弾の数だ。
面白いことに、これら設定をまとめて付与することはできなかったのだが、パーツごとに個別に付与を施してから組み直せば、このスペックの銃になった。
これは恐らく付与魔法のレベルが足りていないということなのだろう。
使い方は簡単だ。
1.まずはマガジンに魔力をチャージする。
ショットガンの場合、マガジン数が1だったからか、コッキングするだけで良かったが、この銃だと魔力のリロードが必要になるのだ。
2.マガジンを装填する。
装填するとマガジン内の魔力を勝手に消費して、薬室に弾が生成される。
コッキングの動作が必要ないというのは、楽だし音も出さないしでメリットが多い。
デメリットはセーフティが1つもないので暴発が怖いことだ。
3.そしてトリガーを引く。
ここが一番ファンタジーなところで、トリガーはどのパーツとも連動していないのだが、弾と動きを魔法で連動させることによって、トリガーを引いたら弾をバレルへと送り込むことが出来るのだ。
バレルへと入った弾は勝手に発射されるので、私はチャージ・装填・トリガーを引くという3つのことを行うだけ。
ショットガンは恐らく、ポンプをシコシコすることがチャージと装填を兼ねているのだろう。
というわけで、実際に撃つためダンジョンへと降りてきた。
この時間だと、夜ダンジョンのはずなので、ワンチャン入り口近くにクリーチャーがいるかもしれない。
そう思っていたのだが、探索開始から20秒ほどで発見したのは茶色の宝箱だった。
当然中身を確認すると、出てきたのは画面の大きな腕時計。
お年寄りや健康志向が強い人が多く使っているスマートウォッチというやつだろう。
『スキャン』したところ、『スマートウォッチ型迷宮端末連携機器』という、そのまんまな名称のアイテムだった。
「たぶんスマホと連携するアイテムだと思うけど……あ、やっぱり充電が必要なんですね~」
いつも通り電池切れだったので、ポケットに入れてモンスターを探す。
気配はなんとなく感じるのだけど……あ、いた。
普通のクリーチャーが4匹と、デカいクリーチャーが1匹だけど、見えない位置にもう何匹かいそうだな。
それにしても、今月の夜ダンジョンはやっぱりデカいクリーチャーが出るのか……。
アサルトライフル持ってるときにショットガン持つのは流石に邪魔だし、やっぱハンドガンで対応しないと駄目だよな~……。
そんなことを考えながらも、とりあえず普通のクリーチャーを狙って、アサルトライフルの試し撃ちを行う。
クリーチャーとの距離はだいたい30メートルくらいなので、射程は問題ない。
ただ、考えていなかったがこれが初射撃なので、照準通りに弾が飛ぶとは限らないと思い、結構感覚的に狙って撃ってみる。
幸いにも、弾は狙ったクリーチャーに命中し、命中したクリーチャーはそのまま消滅してしまった。
結構近い距離なので精度は心配だが、照準に大きなズレはないみたいだ。
そして肝心の音も、ほとんど聞こえなかった。
トリガーを引いた時のカチッという音もほとんどしなかったし、弾が発射される音も、内部が動いて次弾を装填する音も聞こえない。
もう1回、トリガーを引いてみる。
コッキング以前にスライドするパーツすらなかったのだが、問題なく2発目も発射され、狙ったクリーチャーの頭に命中。
残っているクリーチャーたちは、なにが起こっているのか理解できていないようで、右往左往している様子が見て取れる。
一応向こうから見れば体半分隠れた状態で撃っているはずなので、見つけられなかったとしても仕方がないだろう。
続けてそのまま2発撃ち、見える範囲にいる普通のクリーチャーは全て消滅したので、お次はデッカいクリーチャーで試すことにする。
サブマシンガンでは、頭に弾が当たっても弾かれたり逸れたりしたが、同じ弾速と思われるこの銃だと、どうなるのだろうか?
装填射出型とは違い『貫徹』という設定項目はなかったので、予想としてはサブマシンガンと同じように弾かれるのではないかと考えている。
いざ実践……しっかりと頭を狙い、動きが止まった瞬間に引き金を引く。
「……え、爆発した? なんで? 頭半分吹っ飛んでるじゃん……え~……?」
思わず出てしまった言葉通り、デカいクリーチャーの頭は上半分が吹き飛んで、そのまま消滅してしまった。
数値的にも体感的にも、飛んでいく弾の速さは同じだと思うのだが、この違いは一体なんなのだろう?
「……魔力の弾だからかな? 貫通性能は低いけど、弾が潰れたときにエネルギーが集まって破裂するとか?」
一切確証はないが、デカいクリーチャーの頭の吹き飛び方から考えると、そうとしか思えなかった。
「でもマジか……デカいクリーチャーも問題なく倒せるなら、夜ダンジョンはサクサク進めそうだな。 今夜から頑張るか~」
銃の試し撃ちは最高の結果だったので、100円玉をちゃんと拾ってからルンルン気分で家へと戻る。
落ちていた100円玉は5枚だったので、デカいクリーチャーも1匹100円ということなのだろう。
……ちょっと割に合わなくね?
そんなことを思いながらも、さっそく宝箱から入手したスマートウォッチを充電しようとしたのだが……充電ケーブルを挿す穴などなく、充電するための磁気充電器を持っていなかったのだ。
一応前のスマホを買った際、付属の充電器が置くだけで充電できるワイヤレス充電器だったのだが、すぐに壊れて有線で充電していたし、スマホを売った時一緒の箱に入れていたので手元にない。
今のスマホも有線で充電しているし、腕時計は普通のソーラー電波時計なので充電要らず。
イヤホンやマウスも全て有線の物を使っているので、このスマートウォッチを充電するのなら、充電器を買いに行かなければならないだろう。
「めんどくさいなぁ……。 確かまだ少し通販サイトにお金残ってるはずだし、それで足りないかな?」
そういうわけで通販サイトを見てみると、一応残金でもギリギリ買える値段の物はあったのだが、それ単体で買うと送料が発生して残金では足りなくなるし、当然送料がかからない分だけの買い物が出来る残金もない。
諦めて後日買いに行くことにした……。
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