第55話

「明らかにショットガンだよな〜。 それもポンプアクションか……結構デカいな。 撃つたびにポンプをシコシコするイメージだけど、エアガンもそうなのかな? というか、これはどこから弾を入れるの? ゲームだと、パカッと折れて弾を詰めたり、下からシェルを入れたりしてたけど……ないな」


何度確認しても、このショットガンには、弾を詰めるところが見つからなかった。

恐らく本来は、銃の下側、トリガーの少し先のところに、下から弾が入ったシェルを押し込み入れるのだと思う。

だが、元がエアガンだからか既にカートリッジの様な物がガッチリと入っており、どうやっても外せそうな感じではなかった。


とりあえず『スキャン』をしてみる……。


「『魔力射出型魔法銃4-30-1-10-17』……? なんか数字がいっぱいだな。 ショットガンだからかな? 1発で出る弾の数とか大きさが違うだろうし……。 でも元がエアガンなら、どうせ1発ずつしか撃てないような……? なんで数字が増えたんだろう?」


そんなことを言いながら、なんとなくポンプをシコシコしてみる。

シコシコ音が少し大きいので、今やっている様な遠くから暗殺を狙うような用途には向いていないだろう。

まぁそもそも、ショットガンで暗殺をするイメージはないのだが……。

とりあえず、最近は少し火力不足に悩んでいたのだ。

きっとこのショットガンには、ダンジョンからの『火力不足はこれで解決!』というメッセージが込められているのだろう。


「でもこれ、結構楽しいな……。 そりゃ利便性を考えれば、サブマシンガンみたいに装填すればトリガーを引くだけっていう方が絶対的にいいけど……ハンドガンみたいに、撃つたびにいちいちコッキングするのも、それはそれで味があっていいと思うんだよね~」


そう呟きながら、トリガーを引いた。

ポンプを何度もシコシコしたので、弾は入っていなくても、トリガーはいつでも発射できる状態になっていると思ったからだ。

問題は、反動はほとんど感じなかったが、結構大きな音と共に、なにかが凄い速度で発射されたこと……。

弾は入っていないと思っていたので、流石に少しびっくりしてしまった。


「あっぶねぇな〜。 弾入ってたのか……うん、コッキングしないと当然でないね。 コッキングすれば……うん、出たわ。 弾……たま?」


もう一度、このショットガンを『スキャン』する。

当然、先程と同じ『魔力射出型魔法銃4-30-1-10-17』という表示が出た。


「魔力射出型……ハンドガンとサブマシンガンは装弾射出型だったよね? 魔力射出ってことは、魔力を弾として発射してるってことなんじゃ……?」


数字の多さに着目して見逃してしまっていたが、そもそも違う種類の銃だったようだ。

弾を入れるところがなかったのも、魔力を弾にするので入れる必要がないからだろう。


「……流石金の宝箱から出た銃だわ。 ちょっと音が大きいから普段使いはしたくないけど、コッキングする手間があるとしても、リロードなしで撃ち続けられる銃なんて強いに決まってるじゃん……」


というわけで、さっそく試し撃ちをするために、『マップ』の埋まっていないルートを探索して、モンスターを探すことにした。

そして、ボス部屋を出てからそれほど時間はかからずに、モンスターの群れを発見する。

ゴブリンが5匹、メウバウが4匹の群れだ。

1匹だけメウバウに跨っておらず、仲間外れな感じがして少し可哀想……。

徒歩の1匹は最後に倒すことにして、いつも通りまずはメウバウの処理から行うことにした。


『魔力射出型魔法銃4-30-1-10-17』ということは、たぶん弾速が4で射程は30のはず。

そして、一番近いモンスターまでの距離は、20メートルちょっと。

問題は、ショットガンの場合、遠くへ行くほど弾が拡散してしまうはずだ。

リアルのショットガンは結構射程が長いと聞いたことはあるけど、遠くの的を実際に撃ったことがない銃で、ぶっつけ本番で使うのはリスクが高いだろう。


ということで、最初はいつも通りサブマシンガンで数を減らす。

今回はちゃんと、撃つ前にメウバウの頭に防具的なものが装備されていないことを確認し、しっかりと狙ってトリガーを引く。

攻撃されたことに気づいたメウバウがどんな動きをしようと、1発も外さずに次々と頭に弾を撃ちこんで、3秒でメウバウの殲滅は完了した。


ゴブリンの短い足なら、走って近づいてきたところでたいして恐怖を感じないので、サブマシンガンからショットガンに持ち替え、先頭を走っていたゴブリンを狙ってトリガーを引く。

撃たれたゴブリンは一瞬で消滅し、その後ろにいたゴブリンの腹にも大きな穴が空いた。

当然、お腹に穴が開いたゴブリンも、少し間をおいて消滅する。

穴の大きさ的に、そこまで弾が拡散しないタイプのショットガンだったみたいだ。


「威力は最高だね。 まぁ、所詮はゴブリンだから、参考程度にしかならないけど……。 でも複数匹まとめて処理できるなら、使いどころは結構多いんじゃないのかな? むしろもう少し拡散してくれた方が、複数匹をまとめて処理できそうな気が……それだと単体火力が下がっちゃうか。 ダンジョン様が火力不足解消のためにこれをプレゼントしてくれたのなら、このショットガンはきっと、強いモンスターに対して使う専用の武器ってことのはず……。 隠密性はないんだし、今まで通り探索はサブマシンガンがメインでいいか」


というわけで、ゴブリンの殲滅も終わり、ショットガンの威力も確認できたので、『マップ』を全て埋めるため、ダンジョン探索を続けるのだった。




昼のダンジョン探索が全て終わり、家へと帰還。

あの後ダンジョンでは、茶色の宝箱と銀の宝箱を1つずつ発見できた。


茶色の宝箱から出てきたアイテムは『肌のコイン』で、これはその場で使用して、いつも通り特に効果は感じなかったのでどうでもいい。

ヤバいのは、銀色の宝箱から出てきたアイテム……。

『マジックバッグ4-5-5』という、リュックサック型のマジックバッグだった。


今まで使っていた小銭入れ型の『マジックバッグ1-1-1』は、1立方メートルの容量しかなかったのに対し、『マジックバッグ4-5-5』は4メートル5メートル5メートルの、100立方メートルの容量があるのだ。

これなら3Dプリンターをゲットした時のように、デカすぎるアイテムを入手したため探索を中断する様な事態は、ほとんど起こらないだろう。


「今月の昼のダンジョン、お金はモンスターを倒したときの100円玉しかなかったけど、3Dプリンターとかショットガンとかマジックバッグみたいな、お金以上に価値がヤバいアイテムがいっぱいで最高だったな〜。 お金は動画投稿を頑張ればいいし、今後もダンジョンは便利なアイテムをいっぱい出して欲しいね」


そんなことを言いながら、パソコンを開いて動画に対して書かれたコメントや、溜まっていたSNSのDMを確認していくと、例の買収されたドゲザーの運営元からDMが来ていた。


「新作の先行体験……? マジ? しかも動画を出して宣伝すれば最低100万。 再生数が多ければ追加報酬が出て最大500万……? やべぇ……普通に興味あるんだけど……」


今朝は収益化申請が通り、ダンジョンではショットガンや大容量のマジックバッグを入手でき、そして新作ゲームのお誘いと初案件のご依頼……。

社会は非常に大きな転換期なのかもしれないが、私にとっては最高の1年が始まりそうだった。

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