第54話
いつもよりも結構ウキウキになりながら、ダンジョン内を移動する。
まだ収益化の審査が通っただけで、実際に収益が入ったわけではないのだが、やはり嬉しいものは嬉しいのだ。
とりあえず前回は、クソデカ3Dプリンターを拾ったため途中で引き返したので、同じルートのまだ行っていない通路を探索するのだが、残念なことに宝箱はなく、6匹から10匹のモンスターの群れと、6回遭遇しただけだった。
「相変わらず宝箱少ないな〜……。 100円玉は確かに嬉しいけど、もうちょっと宝箱ガチャがあってもいいんじゃないかな~?」
そんなことを呟きながら、来た道を少し戻って新しいルートへと進む。
やはりモンスターの数が多いので、マガジンの弾がすぐになくなってしまい、結構困る。
「……あぁ! 弾も3Dプリンターで作れば買わなくていいじゃん!! そんなことにも気づかないってこのお馬鹿。 体の前に脳みそ鍛えた方がいいんじゃないの~?」
3Dプリンターで唯一の問題は、作ったものを消せないことだと思う。
付与魔法は、付与を消して別の付与を施すことが出来るので、結構気楽に色々なものを試せるのだが、物体として残る3Dプリンターは、使うかわからないアイテムを気楽に作ることは避けるべきだと考えたのだ。
実際、試しに作ったただの『短刀』は、『修復』という、魔力を流せば切れ味元通りの神付与を施して、今はキッチンで包丁として活用している。
だが今後、今まで買っていた物や、新しく欲しくなった物に関しては、まず最初に3Dプリンターで作ることが出来ないかと考えるべきなのかもしれない。
「そういえば、最近結構1回の探索で撃ちまくってるけど、魔力が減った感覚というか、魔力が減ったときの疲れを感じなくなったな……。 やっぱりレベルアップで魔力量も増えてるのかな?」
そんなことも考えながら、マガジンに弾を詰めたので、探索を再開する。
次々と遭遇するモンスターの群れを殲滅し、すぐにワンマガジンを撃ち尽くし、宝箱も見つからないまま進み続けること1時間……。
運が良いのか悪いのか、ボス部屋の前へと到着してしまった。
「今回は後半、ほぼ寄り道しないでボス部屋に到着しちゃったな〜……どうしよう? これがメインルートになるはずだから、残ってるルートはあと3つか。 ……先にボスを倒してから、まだ行ってないルートの探索に行こうかな?」
というわけで、再びサブマシンガンのマガジンに弾を込め、水を飲み、体調に問題がないことを確認してから、扉の鍵を使用して、ボス部屋へと入る。
まず目に入ったのは、前回と同じ様にメウバウに乗ったゴブリンの姿。
それぞれ6匹ずつなので、先月よりも1組増えただけ。
既にこちらへダッシュで近づいて来ているので、流石に接近を許してしまうかもしれないが、ゴブリンもメウバウも倒すだけならそこまで問題はないはずだ。
問題があるとすれば……他にも3匹、体の大きい二足歩行のモンスターがいることだろう。
恐らく新種のモンスターか、クリーチャーのようにゴブリンの上位個体の可能性が高い。
出来れば先にそちらを『スキャン』で確認したいのだが、メウバウをどうにかしないと近づかれて困るので、まずはいつも通りにメウバウを撃っていく。
セミオートで発射したサブマシンガンの弾は、特に問題なくメウバウの頭へと命中し……金属音と共に弾かれ、逸れてしまった。
「はぁ〜!? ……よく見たらメウバウが頭に防具付けてるじゃん! クソがよ〜……ボス部屋くらい部屋を明るくしろ!」
探索中『マップ』をチラ見することと『スキャン』での活躍が多いスマートグラスだが、なんだかんだ暗い中でも、敵のシルエットが強調される機能は本当に便利な神機能だ。
だからこそ最近では、シルエットさえ見えていればモンスターの姿を観察せずに撃つことがほとんどだったので、今回弾が弾かれるまで、メウバウの頭なんてしっかりと確認していなかった。
(これは流石に近づかれたな……ナイフで応戦も考えつつ、とりあえず足を撃って時間を稼ぐか)
というわけで、先にゴブリンの頭を撃って処理しつつ、メウバウの足を狙って銃を撃つ。
ゴブリンの頭に当てるのは普通だと思うが、メウバウの足を狙って当てられるなんて、私のエイム力は相当凄いのではないだろうか?
そんなことを思いつつもゴブリンを全滅させ、素早くホルスターからハンドガンを抜き、転倒し転がってきたメウバウに、急いで止めを刺していく。
急ぐ理由は単純で、奥にいたデカい3体もこちらへダッシュで向かってきているからだ。
(速いなクソがっ! ……メウバウの処理はギリギリ間に合いそうだけど、デカいのが突進してくるまで秒も余裕なさそう。 ナイフ……じゃあの質量は無理だな。 避けながらワンチャン狙いで頭を狙うか?)
最後のメウバウの頭に弾を撃ちこむと同時に、突進を回避できるように動き出し、コッキングしながらデカぶつの位置を確認する。
やはり1発撃つのがギリギリというか、無理して撃たずに全力で回避した方がいい状況だった。
なので、全力回避を行いながら、とりあえず『スキャン』だけはやっておく。
『スキャン』の結果、このデカいモンスターは『ヒュージゴブリン』というらしい……。
「ヒュージね〜……顔がもうゴブリンじゃないだろ。 トロルって言われても納得する顔面だったぞ。 まぁ豚面ではないからオークではないんだろうけど……」
そんなことを言いながら体勢を立て直し、距離を取りながら振り向いたヒュージゴブリンの頭を狙ってハンドガンを撃つ。
弾は吸い込まれるように目に当たり、ヒュージゴブリンAは足に力が入らなくなったような感じで膝をつき、倒れた。
肉体が消滅していないのでまだ生きているはずだが、脳を損傷しても死なないくらい、生命力が高いのかもしれない。
そんなことを考えながら、一旦ハンドガンはホルスターに仕舞って、今度はサブマシンガンで頭に弾を撃ちこむことにした。
まずはセミオートで1発。
額に命中したが、少し出血して怯んだだけで、全く効いている様には見えない。
念のためバーストに切り替えて、もう一度しっかりと頭を狙い、撃つ。
少しはダメージがあるのか、血を吹き出しながら顔が跳ね上がったが、すぐに再突進してき始めた。
クリーチャーの時と同じく、サブマシンガンでは、貫通力もヒットストップ性能も足りていないのだろう。
(というより、弾の大きさに問題があるのかもな……。 どんなに弾速が早くなったとしても、所詮は6ミリの鉄球なんだし……)
既にヒュージゴブリンBとCがこちらへ再突進しているこの状況で、再びハンドガンに持ち替えるのもあれなので、最後に心臓を狙ってから、回避することにした。
恐らく肋骨の骨すら貫通しないはずなので、体の中心から少し横、見えないあばらの隙間をイメージしながら狙い、引き金を引く。
弾は普通に命中したが、何の効果も無いようだった……。
とりあえず、素早く横へと移動して、突進からのダイブを回避する。
再びホルスターからハンドガンを抜いて、立ち上がり再び突進しようとしているヒュージゴブリンBの頭に1発。
そして、すぐに立ち上がり、再びダイブしてきたヒュージゴブリンCをバックステップで躱し、倒れたところを狙ってもう1発。
当たり所が良かったようで、ヒュージゴブリンCは、すぐに肉体が消滅し始めた。
「ギリギリ火力が足りてない感じなんだな~。 一応当たり所さえ良ければワンショットキルは出来るのか。 夜のダンジョンを探索する前に、武器についてもう少し考えないといけないな~……」
そんなことを考えながら、ヒュージゴブリンBとAに止めを刺す。
ゴブリンやメウバウを倒したときにも少し思ったが、ボス部屋のモンスターは100円玉を落とさない様だ。
ヒュージゴブリンも、ボス部屋以外で倒したときは、100円しか落とさないのだろうか?
せめて500円は落として欲しい強さなのだが……。
とりあえず、いつも通り部屋の中心に金の宝箱が現れたので、中身を確認する。
金の宝箱から出てきたものは、ショットガンの様な銃の形をしていたのだった。
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