第22話
「あ〜……駄目だわ、寝れそうにない。 ゲームでもするか、ダンジョンにでも行こうかな……ダンジョンだな。 結局申請が通るまでの間は収入がないわけだし、ダンジョンで稼いでおかないと」
というわけで、今日は初めて夜のダンジョンへとやってきた。
まぁ、そもそも地下だし昼間でも暗いので、昼も夜も大差ないような感じなのだが……。
変わるのは私の生活リズムだけ。
明日から数日間は、時差ボケみたいな感じになるかもしれない。
そんなことを考えていると、まだ距離はあるがモンスターが歩いているようで、暗闇に赤いシルエットが見えた。
「モンスター発見! この距離でモンスターを見つけられるって、やっぱこの眼鏡ヤバいな……あれ? ゴブリンじゃない?」
発見したモンスターはどう見ても四足歩行しているように見える。
ゴブリンは普通に二足歩行だ。
『スキャン』してみたが、まだ距離があるからか反応しなかった。
とりあえずモンスターは1匹しか確認できない。
知らないモンスターが複数体いるのなら、戦闘は避けた方がいいのかもしれないが、1匹しかいないのなら絶好のチャンスだろう。
というわけで、あのモンスターを倒そうと思うのだが、獣は危険というか、なかなか即死しないイメージなので、『スキャン』は一旦諦めて、この距離から撃つことにした。
モンスターとの距離は30メートル以上、40メートル未満といったところ。
普通のハンドガンならもう少し近い距離が適正距離なのかもしれないが、私が使っているのは魔法の銃なので、距離は気にせずしっかりと狙って撃つ。
引き金を引く際に少し指が力んだせいか、撃った弾は命中したみたいだが当たったのは後ろ足のようだ。
素早く銃をコッキングし、近づきながら落ち着いて2発目を撃つと、今度は横腹に命中。
再度コッキングし、だいぶ近づいたので『スキャン』をしてみると、敵モンスターの上に『クリーチャー』という表示が現れた。
表示が現れたということは生きているということなので、きっちりと頭に弾を撃ち込み止めを刺す。
モンスターはゴブリンが死んだ際と同様に、何も残さず消滅した。
「クリーチャーか……なんて意味だったかな? 日常的に使う言葉じゃないから全く覚えてないわ。 とりあえず、昼と夜では現れるモンスターが変わるのかな? あの1体がレアだったって話なら別にいいけど。 モンスターを倒しても何のアイテムも残さないのがな〜……。 少しでいいから現金を落としてくれればいいのに」
ダンジョンに文句を言いつつ先へ進むと、銀色の宝箱を発見した。
だがこの場所は何度も通ったことのあるルートのすぐ近くで、午前中に行きと帰りで通ったときには宝箱はなかった。
「『マップ』を見た感じ、ダンジョンの通路自体は変化していない。 つまり、モンスターと宝箱が、昼と夜では別枠扱いってことでいいのかな? まぁいいや。 なにがでるかな~?」
箱の中に入っていたのは1枚のコイン。
スキャンしたところ、『警戒のコイン』という表示がでた。
恐らく『目のコイン』と似たようなものだろう。
一瞬だけ(銀の箱から出た割にしょぼいな)と思ったのだが、逆に(銀の箱から出たのだからきっと凄いアイテムのはず)と思いなおし、さっそく使用する。
コインが消えると同時に、背中がぞくぞくざわざわする感じの、妙な違和感を感じた。
『警戒のコイン』というアイテムの名前を考えると、もしかすると索敵能力が上がったのかもしれない。
つまり近くに敵がいるかもしれないということだ。
集中して耳を澄ますと、確かにほんの少し、足音のような音が聞こえるような気もする。
ホルスターに仕舞っていた銃を抜き、音が聞こえた方へ通路を進み、慎重に曲がり角を覗き込んでみると、確かにクリーチャーらしきモンスターが近づいて来ているのが見えた。
問題はクリーチャーが3体いること。
2体までは問題なく倒せると思うのだが、1体と真正面から戦うことになるかもしれないことを考えると、クリーチャー3体を同時に相手取るのは、もう少し素早く確実に仕留められるようになってからにした方がいいだろう。
というわけでひっそりと来た道を引き返し、宝箱を探して夜のダンジョンを探索するのだった。
そろそろ戻って寝ようかと思い始めたタイミングで、今回2つ目の宝箱を発見した。
まぁ、それほど時間をかけずに2つ目を発見できたのは、この辺りは既に一度通ったことがあるのでマップを見ながら探索できていたおかげだろう。
とりあえず、見つけた茶色の宝箱を壊す。
中から出てきたのは、ハイカットのスニーカーだった。
「わ〜い、靴だ~。 つい最近、普段使い用の靴を買ったばかりなんだよね〜……え〜っと、『幸運の靴』ね。 まぁ、今ダンジョン用で履いてるこれを、汚れ作業用にでもすればいいか。 たぶんパーカーみたいに付与がついてると思うし……。 今日はもう戻って、ノートPCで調べて寝るか」
というわけで通った通路を引き返し、無事に家へと帰り着くことが出来た。
『警戒のコイン』を使ったおかげか、見えない敵の気配がなんとなく分かるようになったので、戦闘を事前に避けたり、先制攻撃しやすくなっている感じなのだ。
それに伴って、少しだけ移動速度を上げることが出来ていると思う。
とりあえずまずは、ファンタジーなノートパソコンを開いて『データ』で『幸運の靴』の付与を調べる。
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『幸運の靴』
付与が籠められた靴。
付与
『隠密』少し周囲に存在を感じ取られにくくなる。
『消臭』着ている人の臭いを消す。
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「なるほどなるほど。 『隠密』と『消臭』ね……『隠密』はありがたいけど、『消臭』はダンジョンに足が臭いとでも言われているのかな?」
正直そのまま寝るつもりだったが、シャワーを浴びてから寝ることにした。
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