第24話
15分程射撃訓練場で遊んだのだが、カクつくこともないし、ラグも感じないし、エラーも起こらなかったので、特に問題はないと判断した。
問題とは言えない部分で、ちょっと画面が小さいことに違和感は感じるが、これはまぁ使っているうちに慣れるだろう。
動画のエンコードはもう少し時間がかかるようなので、とりあえず1戦遊んでみることにした。
この『Choice Between Money and Life』……適当に付けた略称『チョビ丸』というゲームを、出来るだけ簡単に説明すると、超リアル志向の探索FPSだ。
内容としては、お金になるものを得るために超危険地帯に入り、襲い来る敵をなんとかしながら物資を集め、無事に脱出し、入手した物資を売却することで資産をどんどん増やしていく感じ。
最初は無料で入れるマップに行き、チマチマ小銭を稼ぐ感じなのだが、そのうち装備を持参してガッツリ参加費を取られるマップに参加するようになり、参加費分を稼ぐために無理をして死に、持っていたものを全て失ったり、参加費なんてはした金になるほどの価値がある物資を手に入れて脱出し、ハイになったりするようなゲームだ。
つまりハッキリとした勝ち負けを付けるゲームではない。
ゲームの流れとしては、まず8人がマッチングする。
そしてランダムに選ばれたマップに8人がそれぞれ配置されたところから始まり、あとは他のプレイヤーを殲滅してからゆっくりと物資を集めるもよし、他が争っている間にひっそりと物資を回収して逃げるもよし、他の人と協力して仲良く物資を集めて、脱出直前に裏切って物資を総取りするもよしといった感じで、遊びの幅が凄く広い。
私としては、お金を増やすゲームなので脱出した後に黒字になっていればいいと思ってゲームをしているのだが、赤字を出そうともNPCやプレイヤーを倒してレベルを上げたい人だとか、とにかく銃を撃ちまくってスッキリしたい人なんかもいるそうだ。
注意点としては、30分以内に脱出しないとどれだけ物資を集めていたとしても、脱出に失敗して取り残された扱いになるので、持ち込んだものも含めて全てを失うこと。
そして難易度が非常に高いことだ。
超リアル志向のため、UIは地図と方向と時間しか表示されないし、マガジンに弾があと何発入っているのか確かめるためにいちいちマガジンを抜いて残弾を確認しないといけないし、腰撃ちでは弾がバラけてまともに当たらないし、銃を構えた程度では初弾でも狙った位置と着弾点が普通にズレるし、照準器を使いしっかりと正確に狙おうとすると視界が狭まってしまうなど、とにかくリアルを参考にした不親切設計。
大金に変わる物資が配置されている建物やその周辺には、物資を守る様にNPCが巡回しており、このNPCが対人並みに強いことも、このゲームの難易度が高いと言われる要因の1つだ。
「お、マッチングした......ここどこ? 新マップ?」
最近は比較的新しい無料のゲームばかりやっていたので、このゲームで遊ぶのは数か月ぶりになる。
なんで今日このゲームを選んだのかというと、私の持っているゲームの中で一番重たいゲームがチョビ丸だったからだ。
……さすがに4Kでフレームレートがゲーム側の上限に張り付くとは思っていなかったが……。
「グラフィックがヤバいな……フルHDとは比べ物にならないくらい綺麗だし、カクツキも一切ないから本当にゲーム内のキャラになった気分だわ。 とりあえずどうしよう? まぁマップが分からないから適当に歩くしかないんだけど……銃声が聞こえた方へ向かうか。 おっ!?……今の音、対物スナイパーライフル? 随分物騒な武器を持ち込んだやつがいるなぁ~。 この辺は木が多いけど、結構視界が開けたスナマップなのかな?」
そんなことを思いながら、とりあえず銃声の聞こえた方向へと移動を開始した。
このゲームはあらかじめ武器を買っておくことで、マッチングに武器を持ち込むことが出来る。
超絶上手い人は、一番安い近接武器であるクリケットのバット1本を持ち込んで無双するらしいが、私は敵に近づきたくないので、一番安いハンドガンと手榴弾を主に持ち込んでいる。
初心者やこのゲームをやったことがない人は『そんな装備で大丈夫か?』と思うらしいが、普通にゲームに慣れてくると孤立したNPCを暗殺し、そいつが持っていた武器を使って戦うようになるので問題ない。
「まぁ、知らないマップだと、どこにNPCがいて、どんなルートで巡回しているのかが分からないからだいぶ困るんだけどね」
というわけで今回、序盤は居場所の分からないNPCではなく、対物スナイパーライフルを持ち込んだプレイヤー狙いで動こうと思う。
知らないマップなので、NPCが対物スナイパーライフルを持っている可能性はもちろんあるが、今までの知っているマップではどのNPCも使っていなかったので、さっきのスナイパーライフルの銃声はプレイヤーの銃声である可能性が高いだろう。
対物スナイパーライフルの特徴は、なんと言ってもその破壊力。
コンクリートの壁などは当然のように貫通するので、壁の裏にいる敵の位置を把握できるのならめちゃくちゃ強力な武器だと言える。
デメリットは、1発撃つごとにリロードが必要な点と、銃が重くてデカい設定なので装備している間他の銃を装備できないうえに持てるバッグの数に制限が付くことと、消耗品である銃の弾がめちゃくちゃ高いので物資を持って帰っても利益が少なくなる点だ。
まぁ強いことにロマンを感じる人は多いようで、一部の愛好家たちがよく使っている銃だったりもする。
このゲームはリアルマネーでゲーム内マネーを公式から買えるので、利益度外視でゲームを楽しむブルジョアな人たちが一定数いるのだ。
そんなこんなで移動し、木々が生い茂るエリアを抜けると、少し離れたところに工場の様な大きな建物が建っているのが見えた。
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