第5章 社会が変わっても、出来ることは変わらない

第45話

新しい朝が来た。

つまり新年であり、今日から1月だ。

というわけで、いろいろあって徹夜だが、さっそくダンジョンへ降りてきた。

やはりダンジョンは毎月一新されるようで、通路は変わっており、スマホの『マップ』も全く表示されていない。


「それじゃあ、今月も頑張るぞ~! ……そう言えば、あの伝言は何だったんだろう? ダンジョンで待ってるだったっけ? ……流石にいないよね?」


一応念のため周囲を確認してみたが、さすがに誰もいないようなので、とりあえず伝言のことは一旦忘れ、探索を開始。

出発後すぐにモンスターの気配を感じ、そちらへと進んでみる。

確認できたモンスターはゴブリンではなかった。


「あ〜……昼のダンジョンのボス部屋でゴブリンが乗ってたやつだね。 なんというか、犬と猫が混ざったような体で、顔は不細工なやつ。 あの時サブマシンガンで倒せてるし、たぶん問題はないかな?」


『スキャン』で確認したところ、『メウバウ』というモンスターらしい。

ゲームでもアニメでも聞いたことのない名称の生き物だ。

ボス部屋ではゴブリンが騎乗していたが、今いるメウバウにゴブリンは乗っていない。


「ゴブリン、昼のダンジョンをリストラされちゃったのかな? 頭狙いやすいから楽だったのに……」


そんなことを言いながら、サブマシンガンを撃つ。

やはりボス部屋で殺した奴と同じモンスターなのだろう。

弾は問題なくメウバウの頭へとめり込んでいき、普通に即死の致命傷だったようでそのまま消えた。


1匹に1発ずつの3発で倒せたことに少し驚いているが、発射された弾が飛んでいくのを目で追えたことにめちゃくちゃ驚いた。

レベルアップで動体視力も良くなっていたようだ。

もしかすると、リアルのエイム力も良くなっていたりするのかもしれない。


「あれ? なんか落ちてる……100円玉?」


地面に100円硬貨が3枚落ちていた。

拾って確認してみるが、間違いなく本物で、エラーコインでもない。

至って普通の100円玉だ。


「もしかして、モンスターを倒すとお金を落とすようになった? ほぼ毎回ダンジョンで、モンスターがお金を落とさないことを愚痴ってたのをダンジョンが聞いてたとか? ダンジョン最高! 金額アップしてくれたら神のように崇めますぜ!」


地味に弾代が300発700円かかっていたので、モンスターを倒すことによってお金を得られるのなら、落とすのが100円だったとしても収支は確実に黒字になる。

モンスターを全て1発で倒すことが出来れば、最大29,300円の黒字だ。

まぁ、あくまでもそれは理論値なので、実際はもっと少ないだろうし、理論値が出ても時給換算だとたいした儲けにはならないはずだが、マイナスを減らせるというだけでもめちゃくちゃありがたい。


というわけで、ハイテンションでダンジョン探索を再開。

だが1分ちょっと歩いたところで、さっそく1つ目の宝箱を発見することが出来た。


「茶色か~……今月1個目の宝箱だし、幸先よくいいアイテムが出てくれると嬉しいな~。 なにがでるかな~?」


出てきたものは2つの布だった。

それもただの布ではなく、可愛らしいレースが施された布だ。

明らかに女性用下着の形をしており、恐らくは上下セットで装備するアイテムなのだろう。

私は『スキャン』することさえ忘れ、何も言わず、マジックバックへと仕舞った。


「さて……進むか。 モンスターの気配がいっぱいだし、今日は頑張ってお金を稼いじゃうぞ~!」


というわけで、下着なんてなかったことにして探索を続けた。


やはりモンスターの数は多いのか、結構頻繁にモンスターの群れを発見できる。

まぁ、出てくるモンスターは首ではなかった様子のゴブリンがメインで、メウバウはおまけ程度という印象だ。

最初の方でメウバウ3匹の群れと遭遇したのは、『こういうモンスターがでますよ』というダンジョンからのメッセージが込められた、チュートリアル的な例外だったのかもしれない。


探索開始からもう少しで1時間というタイミングで、本日2個目の宝箱を発見。

色は今回も茶色だ。


「なにがでるかな~? なんだ鍵か……。 今日はなんか宝箱の中身があれだな~。 モンスターが100円落とすようになった分、宝箱がしょぼくなったりしてないよね?」


そんなことを思いながらも探索を再開したのだが、しょぼくなるどころか、探せど探せど宝箱そのものが見つからない。

結局、このルートを脇道まですべて確認したが、追加の宝箱は見つからなかったので、一旦入り口へと戻ることに……。

入り口に戻ったときには、探索開始から、約2時間が経っていた。


「う~ん……どうしようかな? 結構探索したけど、なんか今日は体調がいいというか、全く疲れてないんだよな~。 これもレベルアップの影響かな?」


時間的には、いつもなら迷わず探索を切り上げて帰るところだろう。

だが、肉体的な疲れは一切感じず、今日入手した宝箱の中身は、女性用の下着上下セットと、ボス部屋の鍵だけ……。

流石にちょっと少ないというか、かけた時間に対して割に合わない感じだ。


「そういえば、100円玉はどのくらい拾ったかな? ポケットだと邪魔になってきたから、途中から小銭入れに入れてたんだけど……」


というわけで、入り口に腰を下ろして、今日入手した100円玉の枚数を確認してみると、全部で121枚あった。

財布の中に元から入っていた3枚を除けば、今日だけで100円玉を118枚手に入れた計算だ。


「つまり、2時間で11,800円の収入になるのか……普通に働くよりも時給いいじゃん。 まぁ、モンスターの数には限りがあるはずだから、高収入なのは最初だけだろうけど……」


宝箱ではたいした成果を得られなかったが、想像以上に現金収入は多かったようだ。

体力的にはまだまだ余裕だが、新年初日に無理をする必要はないだろう。


というわけで、今日のダンジョン探索はここで切り上げることにした。

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