第28話

午後4時に起床。

順調に一般的な社会人の生活から逸脱し始めている今日この頃。

軽く食事をした後、さっそくダンジョン探索へと出発した。


「流石にこの時間はまだゴブリンなんだ。 クリーチャーが出てくる夜のダンジョンに切り替わるのは何時ごろからかな? まぁ、頭を狙いやすいゴブリンの方が倒すのは楽でいいんだけど……」


そんなことを考えながら、まだ通っていないルートを選んで進んでいると、本日1つ目の宝箱を発見した。

それも銀色の宝箱だ。

これは幸先がいい気がする。


「なにがでるかな~?……ナイフ?」


出てきたのは小さめのだった。

スキャンしたところ『高価な桃の短刀』というアイテムらしい。


「桃……? あ、確かに刃の部分がうっすらピンク色のような……?」


以前のダンジョンは魔法銃を手に入れ、銃を使えばボスは楽勝だった。

ということは、今回のダンジョンはこの短刀を使って戦えということだろうか?

普通に嫌なのだが……。


「まぁ、とりあえず試してみるか」


というわけでゴブリンを探すのだが、こういう時に限ってゴブリンがなかなか現れない。

しばらく歩くと、本日早くも2つ目の宝箱を発見した。

今度は茶色の宝箱だ。


「今日はやけに順調だな……今のダンジョンは宝箱が奥の方にまとまって置かれていたのかな? まぁいいや。 なにがで~るかな~?」


中から出てきたのは銃だった。

それもハンドガンではなく、たぶんサブマシンガン。

私は銃に詳しいわけではないので、銃の種類までは分からなかった。


ただ大事なのは、今使っている銃に対する『うるさくて耳が悪くなりそう』という私の心配にダンジョンが配慮してくれたのか、なんと銃口にはサプレッサーが付いていることだ。

さらにはドットサイトも取り付けてあって、めちゃくちゃ本格的な感じがする。

マガジンを取り出して確認すると、やはりBB弾を入れるマガジンの様だ。

実銃の弾など手に入らないし、殺傷能力さえちゃんとあるのなら弾を沢山込められるこっちの方がありがたい……何発入るかな?


『スキャン』してみたところ『装弾射出型魔法銃3-50-6+』というアイテム名だった。

銃の名前も教えて欲しい。


「前は銀の箱から銃が出たけど、茶色からも出るのか……。 最初の数字が6から3になってるけど、もしかしてこの数字は銃のスペックを表してるのかな? それにこのプラスって……サプレッサーとかドットサイトを付けたからかな?」


そんなことを考えながら、とりあえずマガジンに弾を込めてみる。

ハンドガンの3倍ほど時間がかかってしまったからか、タイミングよくゴブリンもこちらに来てくれたようだ。


「セーフティは……え!? これセミオートとフルオートだけじゃなくてバースト射撃もあるの!? ヤバいじゃん使ってみよ~」


というわけで、姿を現したゴブリンに対してまずはバースト射撃。

以前サプレッサーについて調べたときに、『本物のサプレッサーをつけても銃声は大きく、映画のように敵に気づかれないほど音が小さくなるわけではない』という内容を見たのだが、このサブマシンガンの発砲音は、強炭酸飲料の入った未開封ペットボトルを開けたときの様な音だった。

つまり、めちゃくちゃ静かだ。

マジで最高。


ただ、今使っているハンドガンと比べると、弾速は少し遅いのかもしれない。

問題なくゴブリンを殺すことはできたのだが、飛んでいく弾の軌道がチラッと見えた気がした。

やはり、音と弾速は切り離すことができない関係なのだろう。


「あ、もうゴブリンいなくなっちゃった……1匹は残して短刀を試すつもりだったのに」


というわけでゴブリンを求めてダンジョンを探索する。

ボス部屋と思われる大きな扉を見つけたが、『マップ』ではまだ探索していない通路があるようなので一旦扉はスルーして探索を続け、やっとモンスターの気配を感じた。

最初の頃はあんなにモンスターがいたのに、もうずいぶんと少なくなってしまった様だ。

4匹いたので3匹は普通に撃ち殺し、最後の1匹は足を撃って動けなくする。


「サブマシンガンはセーフティを入れて……短刀にはどんな効果があるのかな~?」


地面に倒れているゴブリンに近づき、まずは左肩に刺してみた。

ほとんど手ごたえなく、刃は肉へと入ってしまった。

骨さえ簡単に通ってしまうなんて、恐ろしいほどの切れ味だ。


「あれ? なんかピクピクしてる……毒かな? ナイフって毒が塗ってあるイメージだし。 これは短刀だけど」


ゴブリンは全く動けないようなので、首の後ろに短刀を突き刺し止めを刺した。

使った感想としては、十分実用性のある短刀だと思う。


「まぁ、抜身のまま持ち歩く気はないから、鞘を手に入れるまではマジックバッグ行きかな。 銃の方が使いやすいし、自分を刺したら怖いし……」


武器の評価も出来たので、『マップ』を完全に埋めるために探索していると、茶色の宝箱を発見した。

恐らくあの宝箱のある位置が『マップ』の最後の空白地だ。

というわけでマップを埋めて、宝箱を壊し、中身を確認する。


宝箱から出てきたのは、帯が巻かれた1万円の束だった。

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