第31話

特に問題なくコンビニで通販サイトのプリペイドカードを買い、やってきたのはリサイクルショップ。

何時から開店するのか分からなかったが、11時過ぎにはちゃんとオープンしていた。


「あ、いらっしゃい」


そしてさっそく店員のお兄さんに見つかった。

だってほかにお客さんがいないんだもの……。


「どうも。 少しいいですか? ちょっとした伝手で新しいエアガンが手に入ったんですけど、これと同じマガジンあります?」


ちょっとした伝手=ダンジョン。

嘘は言っていない。

というわけで、持ってきたマガジンを取り出し、手渡した。


「これは……形状的にMP5用のマガジンかな? 色は違うみたいだけど……ちょっと確認してみるよ」


そういって店員さんは銃が箱から出された状態で並んでいるショーケースの方へと向かい、私の持っているサブマシンガンとそっくりの銃と、袋に入ったおそらく新品のマガジンを持って戻ってきた。

あの銃はMP5だったのか。

MP7ならリアル系FPSで使ったことあるから知っているけど……名前が似ているし、同じメーカーの銃なのかな?


「やっぱり電動のMP5用マガジンと同じものみたいだね。 本体があると確実なんだけど……まぁ、今時バッグにも入れずに持ち歩けないよね」


そう……私は今日あえて、サブマシンガンは絶対に入らない大きさのバッグを持って買い物に来ていた。


「そうなんですよね。 最近物騒で警察もちょっとピリピリしてるみたいですし、職質されてエアガン持ってるのを知られたらめんどくさそうで……」


嘘は言っていない。

私は脱税をする正直者でいたいのだ。


「そうだよね〜。 ところでこのマガジンの色、君が塗装したの?」


「いえ、最初見たときからこの色でした……写真ありますよ」


エアガン好きはオタクがきっと多い。

そしてオタクは自分のこだわりを自慢するために写真を見せることが多い。

そう考えて、このときのために写真を撮っておいたのだ!

……まぁ、だいぶ偏見が入っていると思うけど。


そんな訳でスマホに画像を表示して、店員さんに見せた。


「へ〜。 サイレンサー付きのMP5に……これはどこのドットサイトだろう。 めちゃくちゃかっこいいね」


「そうなんですよ。 本当は銃だけのつもりだったんですけど、向こうがサービスでサプレッサーとサイトも付けてくれて……めっちゃ気に入ってます」


ダンジョンさんありがとう!

1万円札束事件のことは水に流すよ!

モアマネー!


「でも予備のマガジンを買うってことは、飾りではないんだよね? うちはスリングも結構いろんなのを仕入れてるけど、見て見ない?」


「見ます」


スリングが何かは知らないけど!


案内された場所に行くと、並んでいたのは銃に着けるベルトの様なものだった。

確かにネットニュースで外国の兵士が、このベルトを銃に付けて体から離れないように持ち運んでいる映像を見た記憶があるし、新しいサブマシンガンにはこのベルトを取り付けるためのパーツが付いている。

これスリングっていうのか……。


とりあえず、色が合いそうなものを真剣に探すことにした。

ここで『どれでもいいや、安いやつ安いやつ』と投げやりに選ぶと、間違いなく私の銃に対する関心の低さに違和感を感じられてしまうだろう。

ダンジョン産の銃は見た目の質感が明らかにいいのだ。

それに見合うスリングを選ばなくては……。


「う~ん……色的にはこれが合うと思うんですけど、今までハンドガンしか触ってこなかったんで、実際の使いやすさが分からないんですよね」


「君の持っているそれは2ポイントスリングって言って、体を締め付けずに持ち運べるからすごく使いやすいよ。 デメリットとしては、左右のスイッチングが少しやりづらいかな。 初心者にお勧めしやすいし、初めてならそのタイプでいいと思うよ……それはちょっと値段が高いんだけどね」


お値段なんと9千円。

しゅごいね!

昨日100万円ゲットしてなきゃ買わなかったよ!


というわけで、予備のマガジンを2つ。

この2ポイントスリングに、BBローダーも今回は大きなサイズのものを購入。

ついでに0.25gのバイオBB弾が4,000発入った袋も購入してみた。

私の持つ魔法銃で使えるのかどうかは試してみないと分からない。


「君、凄く銃にこだわりがあるみたいだし、うちの銃も見て行かない? 結構珍しい銃も揃えてるし、簡単なカスタムも受け付けてるよ」


……それはもうリサイクルショップではなく専門店のサービスなのでは?

まぁ、私が気にすることではないか。


「え、そうなんですね。 今日はちょっと……この後仕事しないといけないんで、また今度、1日暇なときに見に来ます」


ということで店を出て帰路に就いた。

どこか不自然なところはなかっただろうか?

自転車をこぎながら、店に入ってからの店員さんの動きと話した内容を思い出し、考える。


「少なくとも……生活に余裕があるくらいには、お金を持っていると思われたかも? 4,000円のマガジン2つに、9,000円のスリングに、4,000円のBBローダーと、2,000円のBB弾。 躊躇なくお金を支払っちゃったから、この若さで金持ってるんだな~って、私なら思うし……。 他はたぶん……エアガンが好きなんだな~って思われたくらいかな? あ、この後仕事するって言ったから、何の仕事してるんだろうって思われたよね。 まぁこれは『動画投稿者してお金稼いでます』って言えばいいか……」


そんなことを考えているとふと気づいた。

自転車の重いギアから変えることなく、結構な速度でこの急な坂道を上っていることに……。

『剛力な金のブレスレット』の効果の強さを改めて実感した。

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