第40話
ボス部屋の中に、モンスターは1体しか確認できなかった。
問題は、そのモンスターのサイズが結構大きく、見た目的にも結構ヤバそうな雰囲気だったことだ。
『スキャン』の結果は『クリーチャー』と表示されたのだが、明らかに通路で倒していたクリーチャーとは別の生き物にしか見えない。
まず、通路で倒していたクリーチャーは前足が2本、後ろ足も2本の4足歩行だった。
しかし、目の前のクリーチャーは2本足で立っているし、2足歩行が当たり前の体つきをしているように見える。
そして、目の前のクリーチャーには腕の様なものが4本生えていた。
つまり、手足を合わせれば6本だ。
共通点としては、顔だけは似ている様な気がする。
「手足が6本って、たしか昆虫の特徴だったかな? 2足歩行で人型に近い昆虫なんて、ちょっと気味が悪いね」
気味が悪いので素早くサブマシンガンで1発、頭を狙って撃つ。
甲高い金属音が鳴り、頭に火花が飛んだ。
どうやら頭には問題なく命中したみたいだが、あのクリーチャーの顔面は非常に硬く、命中したのが顔の中心ではなかったこともあり、弾が弾かれてしまったのだろう。
つまり殺せていない。
私の先制攻撃に怒ったのか、クリーチャーが結構なスピードでこちらへと近づいてくる。
近づかせないようにサブマシンガンをセミオートからバーストに切り替え弾を撃ちこむが、頭に当たる弾は弾かれるし、体に当たっても全く意に介さないので止められない。
普通のクリーチャー相手でも少し思ったが、どんなに弾速が速くても、弾の直径が6ミリと小さいからか、ストッピングパワーが足りていない様だ。
今までは頭にさえ当たればモンスターが死んでいたので問題なかったが、頭に当たった弾が弾かれるとなると、この銃では相性が悪いのかもしれない。
以外と冷静にそんなことを考えながらも、とりあえず近づかれたくないので、膝や足首を狙って銃を撃つ。
痛覚の鈍い昆虫だとしても、関節部分に攻撃が当たれば、多少は動きが鈍くなるはずだと考えたのだ。
クリーチャーは私まで残り5メートルほどの距離でバランスを崩し、地面を転がった。
突進に勢いがあったため、止まったのはつい先程まで私が立っていた位置だ。
まぁ、私は普通に横に逃げて距離を取っていたが……。
倒れてもまだ、4本もある腕の力でこちらに近づいて来ようとしているので、ホルスターからハンドガンを抜き、眉間をしっかりと狙って引き金を引く。
……どうやら今回は弾かれることなく、ちゃんと頭に弾が入ったようだ。
だがまだ死なないようで、消えずにピクピク動いていたので、追加で頭に弾を撃ちこむと、いつも通り何も残さずモンスターは消滅した。
そして、部屋の中心に金色の宝箱が出現する。
「なんというか……予想はしてたけど、予想よりも早く銃で簡単に殺せないモンスターが出ちゃったな……。 1匹しかいないボスだったから落ち着いて対処できたけど、通路を普通に歩いてるモンスターに対して銃が効かなくなったら……ダンジョン探索そのものが大変になるだろうな~」
そんなことを考えながら、金の宝箱を確認する。
出てきたのは金色に光を放つ小さな球体だった。
「……また魔法を覚える玉かな? 金の箱から出たし、めっちゃ光ってるし、なんか凄そう」
というわけで『スキャン』を使用し確認する。
どうやら『金の位飴』というアイテム名らしい。
「……なんて読むんだこれ? い飴? くらい飴? というか飴なの?」
飴ということは舐めればいいのだろうか?
地面に落ちていたわけではないけど、包装されてなかったものをそのまま口に入れるのは衛生的にちょっと……。
水で洗っても大丈夫かな?
少しの間迷ったが、飴ということは水に溶けてしまう可能性も十分に考えられたので、汚れていたりゴミが付いていないことを祈りながら、とりあえずそのまま口に入れてみる。
今まで味わったことのない風味と、圧倒的なまでの甘さが舌の上に広がり、飴はチョコレートのようにすぐに口の中で溶けて消えてしまった。
「流石金の宝箱からでた飴。 あと3つ舐めたら胸やけして舌が馬鹿になりそうなくらい甘さがすごいわ。 ……で、どんな効果があったのかな?」
スマホを取り出し、『体調管理』でステータスを確認する。
______________
Lv125
身長:170㎝
体重:65㎏
健康状態:良好
特技
・治癒魔法Lv2
・付与魔法Lv1
______________
Lvの横の数字が、24から125へと上がっていた。
「あ〜……位ってレベルのことだったのね。 で、それが101も上がっていると……。 1はボスを倒して上がってたのかも? だとしたらあの飴は、レベルを100上げるアイテムだったのかな? ……上がり過ぎやろ!!」
とりあえず、ダンジョンはクリアしたので、帰ることにした。
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