第26話

いつの間にか動画のエンコードも終わっていたので、動画がカクついたりしていないか確認して、問題はないようなので予約投稿を済ませた。

その後は少し早いがお風呂に入り、夕食は蕎麦を食べて、食後は少しのんびりと過ごす。


「この後はどうしようかな……やっぱりチョビ丸って普通の実況動画向けって感じじゃないし、他のFPSにした方がいいかな? RPGも悪くはないんだけど……最近の登録者さんはドゲザーをみて登録してくれた人がほとんどだろうし、やっぱりもう少しFPSを続けた方がいいかな?」


そんなことを思いながらSNSを確認すると、少しペースは落ちつつも未だに動画の再生数は伸びている様だ。

今のところ、あくまでも動画サイトに投稿している長めの動画がメインで、ショート動画はSNSでの宣伝用みたいな感じで作っているのだが、再生数だけで考えるとショート動画の方が需要があるのだろうか?

それとも私の編集に問題があって、動画のテンポが悪いとか?

次はもう少し詰め込むことを意識して編集してみようかな。


そんなことを考えていると、恐らく半年ぶりくらいにスマホの着信音が鳴った。

画面には『奥阿賀 累』と表示されている。

明日なにか頼みたいことでもあるのだろうか?

とりあえず通話に出る。


「はい」


「もしもし? 私。 今時間あったりする?」


(今? 明日のためにゲームの録画をして少し編集作業するつもりだったけど、一応今日はもう寝ても問題ない感じだから暇と言えるかな?)


「まぁ、今日はもう特にやるべきことはないね」


「そう。 それなら、今からうちに来ない? ちょっとお酒を飲むのに付き合って欲しんだよね」


「お酒? ……悪いけど酒は飲まないんだよね」


「そうなんだ……私もまだ飲んだことないんだけど、最近お酒を勧められることが多いから、飲む練習をしておきたいの。 悪いけど付き合って」


……1人で飲めばいいのにと思ったが、飲み慣れていない場合急性アルコール中毒が怖いかもしれない。

正直お酒は好きではないが、なんだかんだお世話になっているし、少しくらい付き合うべきだとも思う。


「分かった。 じゃあ、今から行くよ」


「うん、ありがとう。 待ってるね。 あ、夕飯はもう食べた?」


「この前貰った蕎麦を食べたよ。 美味しかった」


「そうなんだ。 じゃあおつまみの用意しておくね」


というわけで、累さんのお宅へと訪問。

以前はなかったが、駐車スペースには軽自動車が駐まっていた。

まぁ、年齢的に考えて、車を持っていても不思議ではないだろう。

この辺りは交通の便が少し悪い地域だし……。

私も免許は持っているが、移動は基本歩きか自転車だ。

理由はもちろんお分かりですね。


「いらっしゃい。 入って」


「お邪魔します」


というわけでお酒だ。

めちゃくちゃ失礼なことを言ってしまうと、お酒は馬鹿がもっと馬鹿になりたくて飲む飲み物だと思っている。

アルコールの力で、一時の幸福感を得るために飲んでいるものだと……。

まぁ、超お金持ちは宝石や貴金属を身に着ける様に高いお酒を飲むことで、その財力を周囲にアピールしているのかもしれないが……。


とりあえず私は、これ以上馬鹿になったら大変なので、お酒を飲むことを出来るだけ避けてきた。

一応20歳の誕生日にお試しで、小さな紙パックで売られているお酒を飲みはしたのだが、純粋に味もアルコールの感覚も嫌いだった。

何のうま味も感じないということは、きっとまだ舌が子供なのだろう。

好き嫌いを言っている余裕はないからちゃんと食べてるけど、野菜のあの苦味はマジで嫌いだし……。


「はいこれ、お父さんの知り合いから貰ったお酒なんだけど……」


「『破滅への道』……凄いお酒の名前だね。 これ焼酎なんだ。 水とかお湯で割るの?」


「さぁ? お父さんは氷入れてそのまま飲んでたけど……」


というわけで、グラスに氷を入れてお酒を注ぎ、累と乾杯して飲んでみる。

……以前飲んだものと比べると甘みを感じるが、やっぱりお酒はお酒、苦手な感じだ。

ひっそりと水を入れて、お酒を薄めておく。


累は気に入ったようだ。

最初の1杯目だったので、お酒はグラスに半分ほどしか入れなかったのだが、最初の一口の後、一息で飲んでしまった。

すかさず累のグラスに2杯目を注ぐ。


(……これ後で飲み過ぎて吐くんじゃないのかな~?)


そんなことを思いながら、私は水でどんどん薄めながら少しづつゆっくりとお酒を飲み、累はおつまみを摘まみながらお酒を飲み進める。


「ネクラ……1人暮らしって、少し寂しくない?」


唐突に累が質問してきた。

この短時間で既に少し酔いが回ってきたのだろうか?


「寂しいか〜……元々親が生きていたころも1人の時間の方が多かったし、特に感じたことないかな~」


「そうなんだ……1人暮らししてみたいって思ってたけど、思っていたよりも大変だし、なんか少し寂しい感じだし……お酒飲める歳になったのにまだまだ子供なのかな……?」


……飲みっぷりは十分大人だと思うよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る