第21話

ゴブリンに遭遇した際、何度か『スキャン』をしてみたところ、『ゴブリン』と表示された……それだけだった。

まぁ種類が分かるという機能は、ゆくゆくは戦闘前の必須事項になるのかもしれないので、今はそこまで重要でなくとも、できるだけ使用する癖を身に着けた方がいいだろう。


ただ、パッシブ機能のフォーカスとハイライトは、結構ヤバめな機能だった。

フォーカスは恐らく目のピントを補正する機能なのだが、結構離れた距離にいるゴブリンをじっくりと観察した際に、肌の産毛までハッキリと見えてしまうレベルで補正されたので非常に驚いた。

ハイライトは敵の輪郭が赤く光っている様に見える機能で、遠く暗い場所にいる敵をハッキリと見えるようになったので、ダンジョンではマジで神機能だと思う。

そして両方を同時に使えば、ゴブリンの集団が近寄る前に殲滅出来てしまった。

結構ヤバい。


そんな感じで眼鏡の性能を確認しつつ、ゴブリンを撃ちながら探索を続けていると、案外早く次の宝箱を発見できた。

今度は茶色の箱だ。

壊すと出てきたのは、見覚えのあるアンティークな鍵。


「とりあえず『スキャン』使うか……あ、『扉の鍵』って表示された。 『カメラ』と同じ感じだけど、ダンジョン内だとこっちの方が楽でいいな。 普通に便利だわ」


『スキャン』がモンスターとアイテムに対して使えることが分かったし、既に結構な時間ダンジョン内を探索している。

プチバズりをした今、できるだけ動画投稿にも力を入れたいので、ダンジョン探索はここで切り上げて、戻ることにした。




「さて……バズったのはフレンドさんと遊んだときのドゲザーの動画だし、あの時の動画はまだ他にも残ってる。 つまりドゲザーなら編集するだけで投稿できるんだけど……初期の頃からチャンネル登録してくれていた人には、ドゲザーのバズりに味を占めたって思われるだろうな〜」


そんなことを考えながらドゲザーの動画を編集し始める。

バズったコンテンツは味がしなくなるギリギリまで擦るのがたぶん大事なのだ。

それにもしかするとドゲザー人気が高まって、プレイ人口が増えるかもしれないし……。


そんなことを考えながらしばらく編集しているとスマホが鳴る。

確認すると、動画サイトから収益化の申請をするための条件を達成したという通知だった。

あとは累計視聴時間だけだと思っていたが、案外早く達成できたようだ。

バズるって凄い。

私のはプチバズりだったけど。


とりあえず動画の編集がもう少しで終わるところだったので先に終わらせて、動画の公開予約をしてから申請手続きを行った。

利用規約の確認。

お金を受け取るアカウントとチャンネルの連携。

これで後は審査を受けて、合否を待つだけ。


「ここまで長……くはないか、投稿を始めてからまだ2か月とちょっとだし。 むしろめっちゃ早い方じゃないかな? バズったのはもちろん大きいけど、元々全く見て貰えていないわけではなかったし。 でも先月の終わりまで結構後がない状況だったからな〜。 2か月がめちゃくちゃ長かったように感じるわ」


そんなことを思いながら、収益化の申請を行ったことをSNSで発信するためスマホのSNSアプリを開くと、通知の数が上限なのかプラス表記になっており、ショート動画の再生数が100万再生を超えていた。

ショート動画へのコメントも100件以上となっており、日本語だけでなく英語のコメントも数多く見受けられる。


「なんで英語のコメントがこんなに多いの? あ、ドゲザーの公式が反応してくれたとか? 通知がいっぱいで分からないけど……」


という訳で、来ていた通知を流し読みで確認していくと、予想通りドゲザーの運営元が反応し、拡散して頂いたようだ。

ドゲザーは今までやってきたゲームの中でも2番目にやり込んでいたゲームなので、公式が反応を返してくれたことは素直にうれしい。


「今夜は蕎麦を食べるつもりだったけど、これはもう焼き肉を食べるしかないな! 牛のステーキを食べちゃうぞ~!」


貰ったお肉はブランドが付いているようなお肉だ。

ただし、人気があって、価値も非常に高い部位のお肉は、在庫になるはずがない。

これは脂が少なめで、赤みの強い部位のお肉だ。

……まぁ、詳しくはないので、これが牛のどの部位なのかは知らないが……。


とりあえずなにが言いたいのかというと、いつも通り塩胡椒で普通に焼くよりも、薄切りにしたり、塊のまま煮込んだ方がおいしいので、食べ方に迷うということ。

それはもうめちゃくちゃ迷い、ここ数ヶ月で1番と言ってもいいくらい悩んだ結果、ステーキではなく、肉大盛りのすき焼き風牛丼にすることが決まった。

牛丼、美味しいよね。

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