第63話
第1チェックポイントへ向かう途中までペイロードを進められたが、初戦は問題なく勝利することが出来た。
リザルトとしては、27キル3デス7アシストだ。
嬉しいことに、リザルトのスコアはぶっちぎりのトップ。
ドゲザー民の実力を存分に発揮できた試合と言ってもいいだろう。
初戦を終えた感想としては、ドゲザー要素が強い別ゲーといった感じだ。
武器・移動スキル・スキルを使わないキャラコンなどは、ドゲザーからそのまま移植したかのように同じ感覚で使えるのだが、1つしか移動スキルが使えないこと、ドゲザーにはなかったロールスキル、そして試合のルールが違い過ぎるので、似ているが全くの別ゲーとしか言いようがない。
敵が全員脳死でFPSらしい撃ち合い殺し合いを仕掛けてくれれば、ドゲザー民の私としてはめちゃくちゃ対応しやすいのだが、ロールスキルをフルに活用して、試合に勝つための動きをされてしまうと、こういう協力系のFPSが下手な私は、どう動けばいいのか分からなくなってしまう。
それでも今回活躍して勝てたのは、元プロさんの手厚いサポートがあったからだ。
流石元プロゲーマーと言うか、初めたばかりのゲームのはずなのに、個人技・連携・支援の全てが高水準で、私が脳死で敵を倒そうと動いてしまった際には、『そこカバーできない』と言って、正気に戻してくれていた。
その証拠に、この3デスは全て、先に元プロさんがやられた後、敵チームに囲まれてフルボッコにされた結果のデスだ。
恐らく相当元プロさんに頭脳的な負担をかけていたのではないかと思い、今は少し反省している。
「でも結構面白いな〜。 同じルールのFPSは他にも結構あるけど、ドゲザーの操作感になるだけでここまで印象変わるのか。 ただこれ……初心者にめちゃくちゃ厳しくない? エイム力がめちゃくちゃ必要だし、ある程度敵味方全員の状況把握ができないといけないし、ゲームそのものへの理解が結構必要な感じだし……。 なにか初心者向けのスキルとかあるのかな?」
2戦目がマッチングしたので少し確認してみたところ、ロールスキルには、初心者でも使い方が分かりやすいスキルや、気軽に使いやすいスキルがあるのだが、初心者が活躍できそうなスキルは正直なかった。
武器は……強いて言うのなら、フルオートショットガンか、グレネードランチャーだろう。
フルオートショットガンは、私は使わないが近距離が雑に強いと思うし、グレネードランチャーは、ドゲザーでは、雑に撃っていてもたまにキルが取れる武器という感じだった。
タンスの場合、マップやルールにもよるが、ある程度敵の動きが限られているはずなので、グレネードランチャーなら、敵に効果的な圧をかけることが出来そうな気がする。
「よろしくお願いしま~す」
のんびりと武器やスキルを確認していたが、そういえば試合が始まるところだった。
武器とスキルを選んでから敵味方の名前を確認したところ、敵にさっきの元プロさんの名前がある。
これは結構厳しい戦いになりそうだ。
私もコミュニケーションを取って、しっかりと協力しなければ……。
「よろしくお願いします」
……ところで、この試合のルールってどこで確認できるんだろう?
完全に見逃してしまったので、とりあえず味方さんについていくことにした。
トイレ休憩は2回ほどあったが、タンスを遊び始めてから6時間ほど経過した。
全ての武器とスキルを使い、マップによって有利な武器やスキルについてだいぶ理解が出来たと思う。
……理解が出来ただけで、勝てる動きができているとは、とても言えないが……。
まぁ、勝ち負けはそこまで気にしなくてもいいだろう。
今大事なのは、ゲームの紹介・解説の動画を作ること。
動画素材として使えそうな試合をいくつも録画出来たので、個人的には大満足だ。
「それにいろんな人と一緒に遊べたしね。 ……まぁ、フレンドは1人も増えなかったし、パーティに誘われることもなかったけど……」
6時間も遊んだので、結構な試合数をこなして、沢山の人とマッチングしたはずなのだが、友好関係は全く増えていなかった。
試合中に話したり声掛けし合って協力し、良好でいい雰囲気のまま、楽しくゲームが出来ていると私は思っていたのだが、1人のフレンド申請もなく、パーティへの招待がないということは、自覚がないだけで私のコミュニケーションには、なにか問題があるのだろうか?
基本的に話しかけられた内容に返事をしていただけだし、他は挨拶と報告と『ナイス』とか『天才』って言ってただけのはずなのだが……。
人付き合いって難しいな……。
悲しい現実に目を背けて、とりあえず動画作成に入る。
最初はやはり、ゲームそのものの紹介動画からだろう。
5対5、様々な試合ルール、キャラクターデザイン、実装されている武器、このゲームで一番大事なスキル……。
それらを実際の試合映像を混ぜながら、次々と紹介していく。
武器やスキルの具体的な使用感や強弱のバランスは、別で解説動画を出すので割愛。
とにかく『ゲームを魅せる動画』というものを意識して編集を行う。
「それにしても、こうして見直してみると、やっぱり相当介護してもらってるな〜。 こことか2人からヒール貰ってるし、さっき死にそうな場面で目の前にシールド張ってもらってたし……味方のサポート上手すぎるでしょ。 敵は結構見えてると思うけど、味方を見る意識が足りてないのかな?」
恐らく、味方と協力しなければ勝てないゲームが苦手な理由はそれだろう。
私もタンクやヒーラーのスキルを使ってみたが、声をかけてもらわなければ味方のピンチに気づけず、気づいた時には私以外の味方が死んでいることがほとんどだった。
流石に敵がいない状況や、味方が目の前でピンチになっていればスキルを使うのだが、良くも悪くも私の場合、敵を倒すことに脳のリソースの大半を割り振っているのだと思う。
それが勝利に繋がっているのなら、多少は大目に見てくれるのかもしれないが、負けたら味方はブチギレ案件なのではないだろうか?
……だからフレンド申請もパーティ招待もなかったのかな?
そんなことを考えながらも動画編集は進み、いつもよりもだいぶ時間がかかったが、個人的に結構満足できる動画が完成した。
動画サイトに投稿し、動画はとりあえず、URLを知っていないと見ることができない『限定公開』に設定しておく。
そして、案件をくださった運営様にDMで、動画を投稿し限定公開にしていることと、動画のURLを送り、このまま公開しても大丈夫なのか、確認の連絡をしておく。
恐らく私以外にも沢山の人が同じような動画を投稿すると思うので、そこまで詳しいチェックがされるとは思わないが、一応確認を取ることは大事だろう。
時間的には朝なので、朝食を作って食べていると、運営様から返信が来た。
長い文章を端的に言えば、このまま公開しても問題ないそうだ。
お世辞や社交辞令なのかもしれないが、長い文章の大半は、動画の内容を褒める文章だった。
大人になっても、他人から褒めて貰えるのは嬉しいね。
とりあえず体力的にまだまだ全然元気だし、興奮しているのか眠気もまったく感じておらず、集中力が落ちている感覚もない。
朝食を食べ終えてから、動画の設定を『限定公開』から『公開』へ変更し、次は重要なロールスキルについて解説するため、再びタンスのマッチングを開始するのだった。
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