第78話 思わぬ賞品
建物内へ入ると同時にラッキー君がダッシュした。
前方の薄もやを引っ掻いたり、何かに体当たりをしている。
あれはゴーストだ、そう気がついた時には既に戦いは終わっていた。
「
「それだけではない気がします。ラッキーちゃんのステータスを確認してみて貰えますか」
どれどれ、パスポートを出して見てみる。
なるほど、私はカリーナちゃんが何を言いたいのか理解した。
「対魔スキルがついている。いつの間についたんだろう」
オブクラリス戦の後にステータスを確認した時には、まだこの記載は無かった気がする。
「
念のためにラッキー君の
最高値のまま減っていない。
つまりラッキー君にとってゴーストは五線蛇やスライムと同じように雑魚なのだろう。
このままラッキー君、私より強くなってしまうのだろうか。
それでもいいかという気がする。
ラッキー君が強いと便利だし安心だから。
次の部屋へ。
こちらは窓がある為そこそこ明るい。
ゴーストもいないようだ。
什器類も朽ちてしまったのか残っていない。
「この先の階段で下へ降りてみます。下に無ければ上へ、それでもなければ隣の建物という感じで回っていきます」
「しらみつぶし方式なんだ」
「ええ。何処になるかはわかりませんから」
まあ問題はないだろう。
オブクラリスは倒したし、ゴーストはラッキー君が倒してくれるようだし、スケルトン類は倒し方がわかっているし。
◇◇◇
スケルトンソルジャーやスケルトンイエーガーは私が倒して、それ以外は私が戦う前にラッキー君が倒して。
一通り敵を倒したら部屋を見て回る。
什器類はやはり残っていない。
部屋と、壁や天井等から落ちた石の破片があるだけだ。
左側の建物を探し終え、右側の建物も同じように探して。
何もなかったので建物の間の石段を上へ。
階段を上がっていくと上の神殿は細長い長方形で、3つの高さの床があるというのがわかった。
階段の見えていた部分を登り切る。
登り切った場所が神殿の部屋の一番手前、3段のうち一晩低い床部分。
ここは奥行き20m、幅10mくらいの広さで、床と天井、天井を支えている柱の他には何もない。
その奥は床が50cmくらい高くなっている。
この高さ、仮に中段部分と呼ぶ部分は幅10m、奥行き10mくらいで、やはり屋根と柱しか見えない。
一番奥は更に50m位床が高くなっている。
ここだけ左右に壁がある。
この上段部分の奥行きは二番目の床の半分くらいだから5m程度か。
その上段中央に台らしきものがあるのが見えた。
私の目線より上に台の上面があるので何が上にあるか、はたまた何も無いかはわからない。
台の大きさはベッドくらいに見える。
思わず生け贄用なんて連想をしてしまった。
「えっ!?」
カリーナちゃんが何か驚いたような声をあげる。
「どうしたの?」
「あの台、前に来た時は無かったと思います」
「あの生け贄用の台みたいな奴?」
「そうです。ここはそういったものは一切無かった筈です。
そうなのか。
ただ見た目にはこの神殿の床や柱と同じような石製で、同じ時代のものというように見える。
「新しく追加されたのか、それとも何かの条件で出現するものなのかはわかりません。何か今までとは違う事が起きるかもしれません。何もないとは思いますけれど、念のため注意して行こうと思います」
確かに注意して行った方がいいだろうと思う。
私だって生け贄用なんて不吉な想像をした位だし。
「わかった」
ラッキー君も何かを感じるのだろうか。
こちらが指示するまでもなく真横について一緒に歩く。
風景の揺らぎも魔物による音も感じない。
魔物にあわないまま中くらいの床の手前へ。
「念のため、上に行く前に確認してみます」
カリーナちゃんはアイテムボックスから投槍を取り出し、槍の先で中くらいの床部分を軽くたたいてみる。
反応はないようだ。
「それでは行きましょう」
私とカリーナちゃん、少し遅れてラッキー君が中段の床に上る。
「何もないみたいだね」
「ええ、此処では何も起こらないようです。でもあの台の上、何か置いてあります」
50cm程度視点が上がったので、上段にある台の上面が見えるようになった。
置いてあるのは剣や籠手、槍、弓、杖のようだ。
「何だろう、あの武器」
「少し待って下さい……あ、ありました。大丈夫なようです」
カリーナちゃん、きっとネットを検索したのだろう。
「この遺跡エリアに入った後、一定時間内にオブクラリスを倒すと、神々の武器がアイテムとして出現する様です」
なんと。
「罠とかそういうんじゃない訳か。良かった」
どうも生け贄用の台なんて連想をしてしまった結果、不吉な想像ばかりしていたのだ。
「ええ。武器は1人1つ限定で、2つ取ろうとすると消えるとあります。従魔は武器を使えないので私とミヤさん、あわせて2つだけ取れるようです」
武器か。
「剣と槍どちらがいいだろう。性能的におすすめってある?」
「出てきた情報は運営会社のSNSで出ていたようです。内容はSNSに書かれていた文章2つだけ。
『遺跡に入って出来る限り早くオブクラリスを倒そう! 神々の武器が手に入るかもしれないぞ!』
『取れる武器は1人1つまで。欲張ると無くなってしまうから注意!』
以上です。そして実際の取得報告はまだ無いようです。だから性能はわかりません」
「なら私は槍がいいか。使い慣れているし、技も結構覚えたし」
「そうですね」
中段部分から奥の上段部分へ。
ここも一応カリーナちゃんが槍の先端で大丈夫か確かめていた。
怪しい場所へ入る時はこうやって調べるのがお約束のようだ。
台は遠くから見たとおり石造りで、形はただの直方体。
各面は磨かれていてつやつや状態だ。
上に剣、槍、弓、籠手、杖が1つずつ置いてあり、更に文字が彫ってある。
『宵闇神の使役せし魔物オブクラリスを下した者に対する主神の恩寵』
「カリーナちゃんの情報の通りだ」
「そのようです。それでは取りましょう」
「だね」
私は槍を、カリーナちゃんは籠手を手に取る。
いつもの文字情報が流れてきた。
『主神の神槍:天空神が恩寵として下された槍。現時点でパイアキアン・オンライン世界に18本ほど存在。
光・風属性。装備で
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