第70話 やっぱり便利な脳筋解決
この雑木林エリア、コリション干潟に入ってからは一番楽で、かつ経験値を稼ぎやすい場所と感じる。
私にとっては、だけれども。
まず出てくる敵のほとんどがスケルトン系。
スライムや五線ヘビも出てくるけれど、私が対処する前にラッキー君が片付けるので実質ゼロ。
そしてスケルトン系、動きが遅い上に打撃に弱く、斧技一発で仕留められる。
これはスケルトンイエーガーもスケルトンソルジャーも同じ。
強いて言えば数体同時に出てきて、かつ直線距離がそれほど取れない場合が面倒だ。
遠距離攻撃が出来る技で倒さなければならないから。
勿論そういった場合でもそれなりの対処方法はある。
しかし私はついやってしまった。
この世界に来てからすっかり身についてしまった脳筋的な解決法を。
◇◇◇
ラッキー君が正面5m程度先のT字路で立ち止まった。
一瞬左右を見た後、ダッシュで戻ってきて私の後ろへと隠れる。
この雑木林に来てから何度も見た反応だ。
「スケルトンイエーガー? 金属音がしないし」
「そうですね。ここで待って、出てきてから対処しましょう」
戦斧を持って待ち構える。
5ほど数えた後、予想通りスケルトンイエーガーが現れる。
ただし予想外だったのはその数。
左右それぞれから3体ずつ、合計6体も出てきてしまったのだ。
まずい、いつもは数が多い場合は
しかしスケルトンイエーガーは刺突無効だ。
一瞬迷ったが身体が使い慣れたモーションで動く。
『剣技:エア・スラッシュ(強)!』
戦斧で無理矢理出した剣技で、スケルトンイエーガーの革鎧が鈍い音を立てる。
革鎧が頑丈なのか剣技なのに切れていない。
それでもスケルトンイエーガーの動きが1秒程度止まった。
それなら効果があったのだろう。
ならもう一度。
『剣技:エア・スラッシュ(強)!』
『剣技:エア・スラッシュ(強)!』
3発目で敵の動きが完全に止まった。
しかし倒したメッセージはまだ出ない。
だから更に追い打ちをかける。
『剣技:エア・スラッシュ(強)!』
『剣技:エア・スラッシュ(強)!』
5発目、やっとスケルトンイエーガーが横へと倒れた。
6体ともだ。
『スケルトンイエーガー6体を倒した。経験値……』
流石に剣技5発連続は腕が疲れる。
そう思って、ふとある可能性に気づいた。
早速カリーナちゃんに聞いてみる。
「ひょっとして剣技だから、戦斧のままじゃなくて
「剣技のエア・スラッシュを使うなら、本来はそうです。ただミヤさんの
ただし……」
ただし何だろう。
「ミヤさんの戦斧は対魔属性がついています。ですから戦斧での攻撃を届かせれば本来は効果が無い刺突でもそこそこのダメージは与えられる筈なんです」
えっ、それって、つまりは……
「なら普通に
重たい戦斧で無理矢理エア・スラッシュを出すのと比べると、
なら私のこの腕の疲労は一体……
カリーナちゃんは頷いた。
「スケルトンイエーガーやスケルトンソルジャー程度なら。スケルトンナイトやスケルトンコマンド、デュラハン辺りになると対魔属性だけでは倒しにくくなります。
悲しいかな、私は理解してしまった。
でも念のためにカリーナちゃんに確認する。
「ならこの干潟で出てくる程度の敵なら、この戦斧の対魔属性を使った
「ええ。そもそも
普通は出来ません、そう言われてしまった。
確かに脳筋な方法論だった気がする。
でもしかしだ。
「脳筋でも解決できたからまあいいよね。
あと今後機会があったら
カリーナちゃん、なんとも言えない表情になる。
「一応そういった講習やクエストはあります。けれど……エルフで錬金術師で
確かに見た目的に間違っている気はする。
しかし生き抜くために便利なら、多少は見た目に目をつむってもいいだろう。
「そうかもしれないけれど、
カレンさんがこの
おかげで立派に成長してレベルも30近くなった。
「……確かにまあ、カレンのせいでしょう、きっと。ミヤさんの能力的には妥当だったとしても」
◇◇◇
以降はスケルトンイエーガーやスケルトンソルジャーが大挙して出てきても
迷路もそこまで難しくない。
何度か袋小路に入ってしまったけれど、右手を壁に沿わせて進むよりは短いルートを歩けていると思う。
それでもそこそこ距離が長く敵も多かった為、結構時間がかかる。
14時半を過ぎた辺りからラッキー君が時々立ち止まって私とカリーナちゃんの方を見るようになった。
わざとらしく前足でトントンと路面をたたいたりもする。
何を言わんとしているかは明白だ。
「この雑木林、あとどれくらいなんだろ」
「もうすぐだと思います。景色は似たような感じですし周囲を見通せないのでわかりにくいですけれど。
どうせなら落ち着ける場所で休憩したいので、せめて15時までは進みましょう」
あ、ラッキー君、明らかに今のカリーナちゃんの言葉を理解した。
ラッキー君が諦めて前進しはじめたからではない。
その逆だ。
ラッキー君、今のカリーナちゃんの言葉がまったく聞こえないそぶりでおやつの請求をしている。
普通は何かを言えば少しは反応するのだ。
全く反応しないというのは逆におかしい。
つまりこれ、理解しているが故に聞こえないふりをしているという事なのだろう。
「ラッキー、諦めて。15時まではこのまま進むよ」
それでもラッキー君、聞こえないそぶりを続けている。
しかし私とカリーナちゃんが歩き始めたのを見てようやく諦めたようだ。
後ろからまた先頭へと位置を変えて歩き始めた。
「ラッキー、やっぱり言葉がわかっていますよね」
カリーナちゃんも今のラッキー君の動きを理解していた模様。
「だよね。私もそう思う」
ラッキー君が振り向く。
その表情が不本意そうに見えたのは私の気のせいだろうか。
そんな事を考えながら先へ、音に注意しながら歩いて行く。
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