第102話 料理も調合くらい簡単だったら……
昨晩はあの後、聖臭花を採取して戻ってきた。
ただ聖臭花の採取部位は小さな花部分だけ。
教会の周囲をぐるっと回ってとれる花全部を採取しても、全部で500gに満たない。
なので帰り際、カリーナちゃんに聞いてみた。
「この花って採取効率は良くない気がする。買い取りはいくらくらいになるんだろう」
「100gあたり100
「だよね。ところで
「小瓶1つで5,000
薬剤としても材料費が高い割りに単価が安いのでもうかりません。結果として作る人も買う人もあまりいない状態です」
こんな処にも需要と供給の法則か。
思いきり納得しながら帰ってきたのだった。
◇◇◇
そして今日は、消臭剤を調合するところからスタートだ。
「やり方は本に書いてあるとおりです。特に難しい過程はないので、私はご飯のストックを作っています。
何かわからない事があったら呼んで下さい」
そんな訳でいつも通り風呂場に錬金釜を置く。
更に小机を釜の横に置いて、カリーナちゃんから借りた錬金術の本を広げた状態で調合開始。
まずは錬金釜に魔法で出した精製水を500ml入れて、次に魔魂草を30g。
ここで一度魔力を注いで魔力強化水を作成。
そこに昨日採取した聖臭花を100g、きっちり測る。
微妙に出た2gの半端分は花の一部をカットしてぴったりにしてから投入。
線香と甘い匂いが混じったような香りが広がる。
ちょっと臭いがきついので魔法で換気して、そして仕上げに鎮魔樹の乾燥葉を25g加えて、魔力をそそぐ。
今までむせかえるように広がっていた香りが一気に消えた。
錬金釜の状態を確認、内部の魔力は落ち着いている。
確認の為に広げていた本に目を走らせる。
『調合が成功した場合、無臭となり紫色に変化。失敗した場合は材料の芳香が残る他、色に緑色が混ざる』
臭いからすると調合は成功している模様。
そこそこの量が出来たので小瓶では無く中瓶へ、漏斗と濾紙で漉しながら入れる。
半透明な紫色の液体が8割くらいまで入った。
色も問題なさそうだ。
最後に蓋、今回はスプレー式になっている別売りの蓋をつけてやる。
これで
① 場所に対して軽くシュポシュポすれば周囲5m
② 人や従魔に対して軽くシュポっとすれば概ね30分間
臭いをほぼ無臭化してくれる筈だ。
そう思いつつ出来た
念のため清浄魔法をかけて、そして風魔法で換気をすれば作業終了だ。
風呂場からリビングへ。
こちらはこちらでいい臭いがしている。
カリーナちゃんがキッチンの上をフルに使って色々調理をしていて、イヤシの犬が作業台の下でおこぼれが落ちてこないか見張っている。
「調合終わった。色と匂いに問題ないから多分完成していると思う。量は500mlちょい位」
「それくらいあれば充分です。新要塞、最短ルートでボス部屋往復なら2時間かからない筈ですから。
私の方は、今日は午前中いっぱいいいですか? 朝食や夕食だけではなく、おやつやラッキーちゃん用のものも一気に作っておきたいですから」
「わかった」
時間を確認。
まだ9時過ぎだ。
ならラッキー君と2人で旧要塞で雑魚狩りして資金と経験値を稼いでおこうか。
「ラッキー、旧要塞に行くとすれば一緒に来る?」
ラッキー君、私とカリーナちゃんを交互に見た後。
さっとカリーナちゃん側、作業台下でお座りモードになった。
つまり外へ行くより貰えるかもしれないおこぼれを期待する方を選んだようだ。
なら経験値稼ぎはいいかな、どうせ新要塞である程度は稼げるし、お金にも困ってはいないから。
でもそれなら……
そうだ! 私1人で行ってやりたい事があったのを思い出した。
念のため時間を確認、現在は9時7分。
アイテムボックスにそこそこお金がある事も確認。
今出たならお昼には間に合うだろう。
「それじゃちょっと1人で街へ行ってくる。お昼までには戻るから」
「わかりました。気をつけて行ってきて下さい」
ラッキー君は作業台下から動かず私の方を見ただけ。
今はおこぼれの方が大事な模様。
さて、私は街へ向かって歩いて行く。
目的地は冒険者ギルドだ。
そう、もう一度講習を受けて満点賞を取り、今度は拳技系統の『槍術奥義皆伝』に当たる本をキープしようと思ったのだ。
最近は冒険者ギルドで知力の講習を受ける人間が多いらしい。
これは間違いなく私達のオブクラリス高速討伐の方法が広まったから。
それでもカリーナちゃんやラッキー君がいないなら、私が最初にそれをやった張本人だと気づく人はそうそういないだろう。
あ、でも念のため衣服は初期装備に戻しておこう。
これで多分大丈夫。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます