第6章 認知と理解と感情の時間差

第33話 はじめてのおつかい?

 薬草目一杯に魔熊の死体も追加して、アイテムボックスがもうぎりぎりという状態でお家に無事到着。


 いや、本当にぎりぎり状態だった。

 私のアイテムボックスは限界に達し、薬草の一部をカリーナちゃんのアイテムボックスに移動したくらいだ。


 まずは家の中をひととおり案内した後、カリーナちゃんが使う予定の空き寝室へ。


「ちょうどいい感じのお家ですね。この部屋を使っていいんですか?」


「本当に何も無いけれどね。それじゃ役所と錬金術ギルド、あと買物に行ってくるけれど、何か欲しい物ある?」


 何せアイテムボックスが目一杯状態。

 役所と錬金術ギルドで換金しておかないと、何も仕舞う事が出来なくなる。

 あ、でも、ひょっとして。


「もし今持っている薬草で、調合に使うものがあれば置いていくけれど、どうする?」


「薬草は私が持っている分だけで大丈夫です。ただ買物に行くなら欲しい物をメモしますから、少し待って下さい」


 そういえば今日から料理をするのだった。

 材料、ちゃんと揃うだろうか。

 ここケルキラの市場や食事は日本とは少しばかり趣が異なる。

 だから少しばかり心配だ。


 カリーナちゃんから渡されたメモを持って、ラッキー君用の自作フリスビーと木球をカリーナちゃんに渡して、そして私はお出かけ。


 まずは行き慣れた錬金術ギルドからにしよう。

 アイテムボックス内の荷物を少しでも早く減らしたいから。


 ◇◇◇


 錬金術ギルドと役場でアイテムボックス内の物を換金する。

 これってカリーナちゃんの取り分、どれくらいにすればいいのだろう。

 どう考えても5割よりは多いだろう。

 寄与分+指導料と考えれば9割でもおかしくない。


 とりあえず今回の換金分は出来るだけ使わないようにして買物をしよう。

 そう思いつつ市場街へ。


 実は市場街の中の方、行くのは初めてだったりする。

 テイクアウト系の店は市場街の外周部分か、あるいは市場街から離れたところにあるから。


 市場街の中は基本的に生鮮系統の店中心。

 私の知識の範囲外だ。

 突入前に、買うべきメモをもう一度確認する。


 【肉類】

  ○ 牛肉:赤身が多い部位を2kg以上、出来れば塊で

  ○ ハム:朝食・昼食用。好みのもの塊で500g以上


 【野菜類】

  ○ ナス:米ナスでも長ナスでも可、5本以上

  ○ ジャガイモ:2個以上

  ○ タマネギ:2個以上

  ○ トマト:赤くて固く小さめで尖った形のもの3個以上

       :赤くて大きいもの3個以上

  ○ にんにく:1個以上

  ○ キュウリ:3本以上

  ○ 紫タマネギ:3個以上

  ○ パプリカ:3個以上、色は問わないが肉厚のもの

  ○ レモン:1個以上


 【香辛料・ハーブ類】

  ※ 形状や生・乾燥等はとりあえず気にしないでいい。買える最小単位で購入すること

  ○ シナモンスティック

  ○ オレガノ

  ○ コショウ

  ○ ナツメグ


 【乳製品】

  ○ 牛乳:3ℓ以上

  ○ チーズ:ペコリーノと書いてあるもので、100g20Cカルコス以上のもの、500g以上のもの1塊

  ○ バター:100g10Cカルコス以上のもの、1本

  ○ ヨーグルト:水切りヨーグルト、ヨーグルトチーズ、レブネ等と書かれているもの、1kg以上


 【その他】

  ○ パン:種類は問わないが、いわゆる菓子パンではないもの 3人×6食分

  ○ 塩:500g以上

  ○ 小麦粉:表記があれば薄力粉、1kg以上

  ○ オリーブオイル:ピュアグレードでいい。1ℓ以上

  ○ 赤ワイン:安い奴がいい。1本


 何気にアイテム数が多い。

 うちの台所に何もない事が理由だろうけれど。


 でもまあ、多分問題は無いはずだ。

 店員もほとんどはNPCだろう。

 だからわからなければ聞きまくればいい。


 それに買物方法そのものは他と変わらない筈だ。

 ひととおり見て、値段の傾向を理解してから買えばいい。

 値段がわからなければ見かけがいいものをとりあえず選べばいいだろう。

 それ以外に私にわかる尺度は無いから。


 さあ行くぞ、未体験ゾーン。

 私は市場へ一歩踏み出した。


 ◇◇◇


 何とか全部、買う事が出来た。

 お金はそこそこ使ったけれど、きっとそれは量が多いから。

 何せ牛肉なんて2kg買っているし。


 あとカリーナちゃんのメモの書き方、親切で助かった。

 何処か親切かというと、『○個以上』、『○kg以上』と書いてあるところ。

 何せ売っている単位、結構まちまちなのだ。


 例えば5個とメモにかいてあって、実際は4個単位でしか売っていない場合。

 料理になれていない私は4個買うべきか8個買うべきかわからない。

 でも『以上』と書いてあれば、迷わず8個買う事が出来る訳だ。


 それにしても食材だけで10kg以上入っている。

 主婦の人は毎日これだけ買物をしているのだろうか。


 そんな事はないと信じたい。

 アイテムボックスが無いと持ち歩けない量だろう、これは。

 そんな事を思いながら、無事帰宅。


 門扉を開けるとラッキー君が飛びついてくる。

 これ、へたをすると顎や頭を打つので注意だ。

 既に2回、痛い目に遭っている。


 何とか無事に身体を逸らす。

 歓迎のあまりぐるぐる回っているラッキー君に注意しながら門扉を閉めて、そしてカリーナちゃんに挨拶。


「ただいま」


「おかえりなさい」


 カリーナちゃん、庭でラッキー君と遊んでくれていたようだ。

 あと帰った先に誰か待ってくれているというの、何となくいい。

 勿論ラッキー君も大歓迎してくれるのだけれども。


 そうだ、今のうちに取り分の事について話しておこう。

 

「そういえば話していなかったけれど、お昼にコルナタの森で採った薬草や魔物・魔獣の褒賞金の取り分、どうする? 

 カリーナの案内無しでは出来なかったし、教授料もあるだろうから何なら全部というのでもいいけれど」


「パーティですから半分ずつですね」


 ちょっと待って欲しい。

 それでは私の気が済まない。


「それじゃ申し訳ないよ。実際カリーナ1人でも出来た筈だし」


「それを言ったら本当はラッキーちゃんの分があるから3分の1ずつになります。でも一般的にパーティの取り分は人間の均等割りとなっていますし、それに換金や買物はミヤさんがやってくれているんです。だから半分で」


 議論しても引かなそうだな、そう感じる。

 なら仕方ない、お言葉に甘えさせて貰おう。


「わかった。それじゃ後で領収書を出すから、均等にわけるね」


「わかりました」


 それではお金をわけて、そして買った物を整理しよう。

 アイテムボックス内に入れておかなくてもいい物は結構ある筈だし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る