エピローグ
第136話 現実では14日、仮想では336日後
「OK! ラッキー、後は任せて」
「わーった!」
ラッキー君の動きを確認しつつ私は前方へダッシュ。
巨大な戦斧を振り下ろす。
『斧技最終奥義:神断斬!』
条件と溜め時間が面倒な代わりに効果最強の技が発動。
錬金術で改造を重ねた
更に背後の壁、床まで断ち割って轟音と振動を振りまいた。
決まったが油断は禁物、何せラスボス扱いの旧神だ。
石畳にめり込んだ斧を引っこ抜く隙は避けたい。だから斧から手を放し、代わりにアイテムボックスから
しかし時間神クロノスは倒れたまま動かない。
『旧要塞最終ボス:時間神クロノスを倒した! 経験値65,536を獲得。時間神クロノスの……』
「メッセージ出た! ミヤは?」
ラッキー君に私は頷く。
「こっちも出ている。これで終わりみたい」
ラッキー君、今では15歳位の男の子姿だ。
レベル80を超えると進化して神獣になり人化可能となる。
言葉も喋れるし武器も使うし、その気になれば獣化も可能。
扱いも従魔ではなくNPCとなる。
『時空神クロノスを倒しました。アイテムボックス内にある『時空神の呼び笛』と引き換えに『時空神の砂時計』を入手可能です。入手しますか?』
この時空神の砂時計こそが私の求めていたアイテムだ。
なお『時空神の呼び笛』は時空神カイロスを倒した時に得られたアイテム。
実はついさっきダッシュで倒したばかりだ。
何せどちらの時空神も出現は新月の夜限定。
のんびりしていると1ヶ月後まで出てこない。
だからカイロスを倒した後大急ぎで海の塔から旧要塞本館までダッシュ。
途中で出てきた敵は基本的に無視。
進路上で邪魔な敵だけ走りながら叩きのめすという方法で急行。
結果、両方の時空神あわせて1時間で倒す事に成功した訳である。
『入手の意志を確認しました。それでは呼び寄せたい死者を念じながら、『時空神の呼び笛』を吹いて下さい』
なかなか形式ばった手順が必要なようだ。
でも仕方ない、私は呼び笛をアイテムボックスから出して、口にあてがう。
勿論呼び出すのはカリーナちゃんだ。
父や母も呼び出せるなら呼び出したい。
しかし残念ながら此処は
この中にかつていた者の代行AIしか呼び出せないから。
吹いていた呼び笛が消えた。
代わりに目の前に真鍮っぽい色の砂時計が一瞬出現して、そして私のアイテムボックスに収まる。
『『時空神の砂時計』を手に入れた。この『時空神の砂時計』は新月の夜、午前1時30分から午前2時30分の間のみ使用可能。使用場所は問わないが、両時空神との戦闘に参加した者以外がいると発動しない。
使用可能日時に砂が多い側を上にして安置すると起動する。内部の砂が完全に落ちきるまでの7分間、呼び寄せた死者が出現する。時間が経過し砂が完全に落ちきると呼び寄せた死者とともに砂時計も消滅する』
新月の真夜中のみ使用可能か。
今の時間は午前2時18分。
まだ間に合うけれど、焦って呼び出して充分な話が出来ないと勿体ない。
ここは素直に次の新月を待つべきだろう。
『どうだ、目的のアイテムは手に入ったか?』
カラスのソフィアちゃんを通じてメアリーさんの声が聞こえた。
どうしても動画を撮りたいという事でソフィアちゃんだけここに来ているのだ。
ソフィアちゃんは録画の他、所有者に映像を送信したり所有者の声を送ったりなんて機能がある。
つまりソフィアちゃんを通じてメアリーさんも状況を確認している訳だ。
時空神その他を倒した経験値は手に入らないけれど。
「ええ、無事手にはいりました。でも新月の深夜でないと使えないので、使うのは29日後になります」
『それにしても最強の裏ボスが1時間かからずに2タテか』
確かにクロノスもカイロスもそこまで強くなかった。
というか最初は一晩で両方とも倒せるとは思っていなかった。
戦闘時間を目一杯使うつもりで1時半ちょうどに遭遇出来るように行ったのだ。
ところがカイロス、私の最終奥義一発で倒れてしまった。
ならばダッシュで間に合うかと試した結果がこれである。
「ええ。まさか最終奥義とはいえ一発で倒れるとは思いませんでした。思ったより弱く設定されているようです」
まあ最終奥義は威力がやたら大きい代わりに出すのが面倒かつ困難な技だ。
具体的には、
① 使用する戦斧で一度敵に攻撃を当てた後
② 斧に体力の3割と魔力の3割を20秒間かけて注ぎ込み
③ 大きく振りかぶった後、敵に直撃するよう振り下ろす
なんて手順が必要になる。
だから②の間、ラッキー君に時間稼ぎしてもらった。
人化してもラッキー君、敏捷性は私以上だから。
『私が言ったのはクロノスが弱いという意味じゃなくてミヤの強さが想定外すぎるという事だけれどな。レベル幾つだっけ、今?』
「レベル101です。キリが良いので100を目指したら此処へ戻ってくるまでに1増えてしまって」
「僕はレベル102」
どう頑張ってもラッキー君の方がレベルが先に上がる。
レベル100を超えてようやく差が1つまで縮まった形だ。
『良くもまあそんなにレベル上げたよな、
「
そのあたり、
初心者から超上級者まで、どのレベルでも対応できる敵が用意されているから。
世界全体、全時間帯の範囲で調べればの話ではあるけれど。
「とりあえずこれから家に帰ります。あとは次の新月ですね」
『わかった。また連絡する』
ソフィアちゃんは軽く一礼した後飛び立った。
窓から外に出て、暗い空に溶け込んで見えなくなる。
「それじゃ帰ろうか」
私はラッキー君に声をかける。
「ああ。腹減った」
人化してもラッキー君の食意地は変わらない。
むしろ燃費が悪くなって食費が増えた。
それもラッキー君らしいのだけれど。
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