第2章 行け! 脳筋錬金術師!
第11話 脳筋を自覚しました
ちょっとと言われたけれど、待つ事15分。
戻って来たカレンさんを見て時間がかかった理由が判明。
化粧直しの時間だったようだ。
私の一般常識に侵された美的感覚ではどう見ても美しく見えないあの化粧にも、それなりの美学なり何なりがある模様。
面倒だし聞いても理解不能だろうから余計な事はしないけれど。
一応着替えてもいて、今回は白ドレスにショールという服装だ。
「さて、ちょっと聞くけれど、今までミヤちゃんはノロイグアナやデミスライム以外に何か討伐した事、あるぅ?」
「いいえ、無いです」
どうしてノロイグアナ等を討伐した事を知っているのだろう。
そう思ってすぐ気づいた。
パスポートを見せた時、称号欄にあるノロイグアナハンターの記載を見たのだろうと。
「やっぱりそうよねぇ。錬金術師になるつもりなら最低限の討伐しかしないのが普通だからぁ。
でもミヤちゃんの場合、それじゃあまりに勿体ないわ。という事で、『もっと褒賞金が高い魔物がサクサク狩れた上、今日覚えた薬草も採取できるおっすすめスポット』に案内するわよ」
もっと儲かる場所か、それは助かる。
しかし大丈夫だろうか。
「私はまだレベルが低いですし、武器も錬金術師の初期装備のままですけれど」
「心配いらないわ。対策は考えて来てあるしね。それに今日はワタシがついているからぁ♡」
確かにカレンさん、強そうだ。
でもまだあまり良く知らない人だし、ほいほい信用してついて行っていいものだろうか。
でもギルドの
『ゲーム内で殺人や強盗、暴行等の犯罪行為を犯した場合、検問所のある大きな街に入れなくなったり、役所や各種ギルド等に就職したり等出来なくなります』
そんな注意があったし。
それにカレンさん、見た目と話し方はアレだけれど人間的には悪い人ではない気がする。
だからまあ、今は信じていいだろう。
「それではお願いします」
「まっかせといてぇ~♪ それじゃ東の旧要塞に向かって行くわよぉ」
東の旧要塞?
「どんなところですか?」
「うーんと昔、まだ魔法文明になる前の遺跡よ。大昔の軍隊の本拠地や牢獄があった場所で、スケルトン系の魔物が良く出るの。あと魔魂草が取り放題よぉ」
スケルトン!?
ちょっと待って欲しい。
「スケルトンって、確かレベル10以上の戦士系職業か、聖属性魔法が使える魔導士か治療術士でないと戦わない方がいい。そう攻略サイトで見たんですけれど」
「普通はそうよぉ。でも大丈夫、ミヤちゃんなら余裕で倒せる方法があるからぁ」
本当だろうか。
でもまあ嘘ではないのだろう。
カレンさんがそう言うのなら。
あと出かける前にもう一つ疑問を解消しておこう。
「討伐とか採取に行くのにその格好で大丈夫なんてすか?」
白ドレスにショール姿、そしてやたら大きく感じるハイヒールなんてのは戦闘向きではないように思うのだけれど。
「もちろんよぉ。ドレスは女の戦闘服だから♪」
カレンさんなりの美学がある事はとりあえずわかった。
私に理解出来るかどうかは別として。
◇◇◇
錬金術ギルドがある中心街から東へ歩くこと10分ちょい。
高さ3m以上はある大きな塀と小さな門のある場所に到着した。
門は無人で扉が閉まっている。
そして横にこんな注意書きが。
『この先コルフ旧要塞。魔物が出ます』
「この門で魔物が街に入ってくるのを防いでいるのよ。まあ死霊系や骨は潮風が嫌いだからここまで来る事は希だけれどね。
それじゃ、この先に行く前にこれをどーぞっ♡」
カレンさんが出したのは斧だ。
それも柄が片手杖くらいの長さで、斧本体の刃渡り40cm位ある両刃のでっかい斧。
「私が前に使っていた『
一応対魔属性がついているから当たればスケルトンなんて一発よおっ♡」
ちょっと待って欲しい。
これをどうぞということは、私がこれを使うという事?
確かにカレンさんなら似合うと思う。
まさに『
しかし外見年齢14歳の金髪エルフに似合うかというと……
というか、そもそも持ち上げられるだろうか、私に。
無茶苦茶重そうに見えるのだけれど。
「騙されたと思って持って、振り回してみて頂戴っ♡」
やはり私の為に出したようだ。
仕方ない、そう思って手を出す。
あれっ? 予想以上に軽い。
いや、軽いというのは言い過ぎかもしれない。
高校の授業でやった剣道の竹刀くらいの重さはある感じだから。
でもこれなら振り回せるかも。
試しに振りかぶったり振り下ろしたり、横なぎ一閃! なんてやってみたりする。
問題無い。
むしろ竹刀以上に自由に使えそうだ。
「これ、使いやすいですね。何か特殊な魔法がかかっているんですか?」
「うふっ♡ 確かに対魔属性はかかっているわよ。でも重量軽減とか腕力増加といった魔法は一切かかっていないわ。
つまりこの位の武器を余裕で振り回せる、それがミヤちゃんの実力ってわけ。O・WA・KA・RI?」
えっ、と、いう事は、つまり……。
そう言えば私のステータスと呼ばれる数値、確か……
何と言うか、改めて理解させていただいた。
つまり私は薬草を1回では8種類以上数覚える事が出来ない可哀想な
そのかわり腕力があって、こんな重そうな斧を自由自在に振り回せる。
そう、まごうこと無い脳筋。
ああ、まさか私が脳筋なんて……
いや、今までとはまるで違って面白いかも。
「どうかしら? 納得出来たぁ?」
カレンさんの言葉に頷いて、そしてちょっと思った事を付け加える。
「でもこれって、私の見た目とあっていませんよね、きっと」
「でも有効よぉ。ミヤちゃんは小柄で軽いから、普通の武器で切るとかじゃあんまり威力が出ないの。体重を乗せた突きでやっと人並みの威力が出せるくらい。
でもこの
なるほど、物理的に正しい意見だ。
「確かにそうですね」
「そゆこと♡ それじゃ行くわよ。この時間なら橋の上は魔物がいないと思うけれど、一応気をつけてねっ♡」
カレンさんはそう言って門扉を開いた。
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