第93話 脳筋エルフの性
「ところでもう少し、13時くらいになったらしたら旧要塞に行きませんか。その頃には旧要塞の更新作業も終わっていると思いますから」
確かにレベルアップの為には行った方がいいだろう。
ラッキー君もまだ暴れ足りなそうだし。
「でも更新作業、その程度の時間で終わる?」
「大丈夫な筈です。旧要塞程度の範囲ならこちらの時間で2~3時間あれば。念のため確認してから行きますけれど……
あ、大丈夫です。旧要塞入口付近、地下牢、本館、海の塔、病院跡、ひととおり新たな魔物の配置を確認したそうです」
そんな情報が出ているのか。
「何処の情報?」
「先ほど会ったマリーさんです。魔物の種類もUPされています。
今までと主な違いは
○ 核心部のほぼ全ての場所ににゲンエイグアナが出るようになった事
○ スケルトンカサドールというスケルトンイエーガーとほぼ同格の敵が出るようになった事
○ ゴースト系でスピリットというレイスよりはやや弱い敵が出るようになった事
とあります。ボスは両方とも変わらないそうです」
えっと思って時間を確認する。
今は12時35分、マリーさんと出会ってからまだ3時間経っていない。
「早いね。全部回ってボスを倒して記事をUPしてこの時間なんて」
「メアリーさんはレベル70以上ですから。その上でミヤさんと同じ槍の本を読んでいるようですし」
私の上位互換でしかも魔犬のサラちゃん連れか。
なら確かに多少の敵は瞬殺攻撃が出来るだろう。
ボス相手の場合はわからないけれど。
「ボスはどれくらいの強さなんだっけ?」
「今のミヤさんならそれほど苦労しないと思います。接近や魔法連射も槍の連続技で防げますから。耐久力があるので10分くらいはかかると思いますけれど。
心配なのはラッキーちゃんです。魔法に対する抵抗力がそれなり程度なので、万が一という事を考えると。
ただ魔犬はレベル10ごとにステータスが強化されます。ですからボス戦はラッキーちゃんがレベル40になってからの方がいいです」
ラッキー君のレベルは38。
あと2上げればいいから1日1レベルとして2日か。
もちろんそう計算通りにいくとは思えないけれど。
あと、こんなのはどうだろう。
「ラッキーのレベルを上げやすい方法って何かある?」
「今のままで問題ないと思います。ただスピリットがレイスとそう変わらない強さなら危険かもしれないので、屋外か屋内でも地上の明るい場所中心に戦った方がいい、という程度です」
「わかった」
ラッキー君のレベルが40になるまで戦って、そして中ボス戦を2回やれば私のレベルも40近くになるだろう。
あ、ボスといえば今回はクエストではないのだよな。
なら……
「旧要塞の中ボスって、倒したらもう出てこないの?」
「旧要塞の場合、倒した時のパーティメンバーはボスのいる場所に行っても1週間程度はボスに遭遇できなくなります。海の塔のスケルトンジェネラルも本館のリッチーも同じです」
なるほど、ならボスと何度も戦ってレベル上げというのは無理か。
出来れば早いなと思ったのだけれど。
なら後はこつこつとレベルを上げるだけだ。
「それじゃ13時に出るように準備するから」
気が早いわんこが玄関へたたたっと歩いて行って、『行かないんですか』という顔をする。
まあいつもの事だけれど。
◇◇◇
カリーナちゃんと別行動で家を出て、旧要塞入口で合流。
雑魚はラッキー君が先に倒すので、私達は何もしないでそのまま旧要塞本館へ。
朝一番で来た時と同じように1階から順番に倒していく。
確かにスケルトンソルジャーがスケルトンカサドールになっているし、室内にもゲンエイグアナがいたりする。
それでも全く問題は無い。
スケルトン類は見つけ次第
ゲンエイグアナは私達が近づく前にラッキー君が倒してしまう。
つまりはまあ、楽勝だ。
「魔物が変わったけれど、難易度は変わっていない気がする」
「ラッキーちゃんのおかげだと思います。イグアナ類は見つけるのが難しいですから。歩きながら見つけるのはほぼ不可能ですし」
確かに私も立ち止まらないと見つけにくい。
今のように何も考えずに歩いても問題ないのはラッキー君のおかげだ。
まあその分経験値や討伐褒賞金が減るけれど。
5階はやはりスケルトンナイト3体が扉を守るように立っていた。
「これは地下2階のボスを倒した後、もう一度来てみると変わるという感じかな」
「かもしれません。そういう隠しシナリオ、往々にしてありますから。ここではまだ確認されていませんけれど」
「ならボスを倒すまで後回しにしておこう」
朝一番時と同様、倒さずそのままにして階段を下へ戻る。
「あと地下1階はスピリットが出るかもしれません。ラッキーちゃんがレベル40になるまで後回しにした方がいいと思います」
「わかった」
そう思ってふと気づく。
ラッキー君、数的には誰よりも敵を倒している。
だからそろそろレベルが上がっていてもおかしくないよなと。
パスポートを出して確認、おお、やっぱり。
「ラッキー、レベル39になっている」
「ゲンエイグアナが配置されたのがプラスになっている感じです」
ラッキー君の獲物が増えたおかげという事か。
この調子なら明日にでもラッキー君、レベル40に到達しそうだ。
私はまだレベル36。
でもラッキー君がレベル40になる頃にはもう少しレベルが上がって、更にボス2体を相手にすればレベル40になれるだろうか。
まあ焦る事は何もないのだけれど、ラッキー君が順調なのでどうにも……
うん、こういう時は気分を変えよう。
そもそも同じ技で作業のように敵を倒すのにはもう飽きた。
敵の強さは概ねわかったし、もう少し私らしく行こう。
私は主神の神槍を収納して
「ミヤさん、武器をそっちに変えるんですか」
「うん、ここからは外だしね。少し気分を変えようと思って」
確かに取り回しは悪いし性能的に神槍より下らしい。
それでも重さとごつさが安心感を感じさせる。
取り回しの悪さだってここから先なら外だから問題ない。
何よりこっちの方が爽快だし強さがわかりやすい。
「神槍の方が扱いやすいし強いらしいけれど、やっぱりこの戦斧の方が安心だししっくりくる。オブクラリスもこれで倒したし」
大きくごつい方が安心、か。
我ながら脳筋になっているとは感じるけれど仕方ない。
「確かにミヤさんのステータスならその戦斧で問題ないですよね。対魔属性もありますし。エルフ的では無いかもしれませんけれど」
いいのだ、私は世にも珍しい脳筋エルフだから。
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