第1章 錬金術師の第一歩
第7話 目指せ錬金術ギルド
翌日もノロイグアナの討伐をやって同じ宿に宿泊。
そして3日目の朝。
ベッドに寝転がったまま、今日はどうしようか考える。
そろそろノロイグアナ討伐以外の事を試してみよう。
もちろんそれはデミスライム討伐ではない。
デミスライム、場所さえわかれば探すのは簡単だし、倒すのもノロイグアナよりずっと簡単。
そのかわり貰える褒賞金が激安で、1体あたり20
ノロイグアナなら褒賞金と死骸あわせて150
だったらノロイグアナ討伐のほうがよっぽど稼げる。
試してみるのは錬金術だ。
何せ私の本来の職業は錬金術師。
ノロイグアナハンターは称号であって職業ではない。
ただ狩りが楽しいとは正直予想していなかった。
私は職業を決めた時の事を思い出す。
この『パイアキアン・オンライン』で選べる職業は大雑把にわけると3種類。
戦士系統か魔術師系統、そしてそれ以外だ。
戦士系統だと剣士、槍術士、弓射士、格闘家。
魔術師系統だと魔導士、治療術士、錬金術師、鍛冶師。
それ以外だと吟遊詩人、踊り子、奇術師、農家、商人という感じ。
このうち鍛冶師が魔術師系統に入っているのは、この世界の鍛冶は魔法を使って行うのが普通だから。
薬師が錬金術師になっているのと同じようなものだと思う。
ちなみに人気は槍術士、魔道士、剣士の3つ。
次点グループが格闘家、治療術士、弓射士。
つまりは戦闘する系統が圧倒的に人気で、製作系統や一般人系統は不人気という訳だ。
なおゲームの攻略で一番有利なのは槍術士らしい。
戦う際にリーチが長く、低いレベルの時から強力な攻撃を出せるから。
次点が高価だけれど強力な武器が多い剣士で、その次が格闘家と魔道士だそうだ。
しかし私は正直どんくさい。
運動神経が思い切り駄目駄目だ。
戦う系統の職業はきっと駄目だろう。
だから戦士系統は全パスで、魔術師系統でも戦闘機会が多い魔道士はやめておこうと思った。
そして『それ以外の職業』でやりたいと思えるものがなかった。
結果残ったのが治療術士、錬金術師、鍛冶師。
しかし種族がエルフの場合、最初から鍛冶師になる事は出来ない。
なれない事はないけれど、その場合は一度他の職業である程度のレベルに達してからだそうだ。
残ったのは治療術師と錬金術師。
比較した結果、何となく錬金術師の方が面白そうだと思って選んだ。
しかし今となっては戦士系統でも良かったかななんて思ったりする。
ノロイグアナハンターになれる程度には適性があったようだし、討伐も案外楽しかったし。
まあどうしても戦闘系の職業がいいと感じたら、その時は転職の儀式なり何なりすればいいだけだ。
装備を変更した後に教会で神に祈れば転職出来るようだから。
さて、さしあたっては錬金術。
これをやるには素材と道具が必要。
そして道具として絶対的に必要な錬金釜、これがかなりお高い代物だったりする。
素材的に一番安い
純
昨日討伐の帰りに道具屋を見て確認したから間違いない。
ちなみに昨日の収入は8千
ノロイグアナ相手に討伐を繰り返し、役場と平原を5往復したのだけれど。
つまり自分で買うなんて事は当分無理。
ただ錬金術ギルドに会費を払って所属すれば、各地のギルドにある調合室を借りる事が出来るらしい。
勿論調合室には錬金釜をはじめとして必要な道具は揃っている。
公式の情報サイトに書いてあったから間違いない。
ただ料金がいくらか、そして会費がいくらかについては書いていなかった。
他の職業なら非公式の攻略サイトに何かしら情報があるのだけれど、錬金術師はこのゲームではマイナーな存在。
なので攻略掲示板にも情報がなかった。
でもまあ、行って聞いてみればわかるだろう。
今日は様子見で、もし安ければ明日か明後日あたり材料の薬草を集めて挑戦という事で。
よし、それでは身支度をして朝食を食べに行くとしよう。
私はベッドの上で身を起こす。
◇◇◇
朝食は黄色いパンとオムレツ、ヨーグルト、コーヒーというメニュー。
オムレツは卵にチーズ、オリーブの実、タマネギが入ったもの。
包んである訳ではなく、卵に混ぜ込んで焼いている形。
何か健全かつ正しい朝ご飯という感じでいい。
実は昨日も朝食は同じメニューだったのだけれど、それでもいいかなという感じ。
荷物を全部収納してフード付きマントを着て、宿を出る前にカウンターのお姉さんに尋ねる。
「これから錬金術ギルドに行きたいのですけれど、どの辺でしょうか?」
「役場の隣のブロックになります。此処を出て右へ歩いて行って、役場のある交差点を左に行けば、次の角の先の建物が錬金術ギルドです。看板があるのですぐわかると思います」
役場の交差点を左か、よし覚えたぞ。
「ありがとうございます」
「またのお越しをお待ちしています」
宿を出て右、朝の太陽に近い方向へ。
朝9時過ぎ、街は既に動き出している。
テイクアウト屋は既に商品見本をケース内に並べて営業中。
食堂も朝食営業中の看板を出している。
これらの人達のほとんどがAIなのだろう。
私には中身が人間かどうか区別できない。
話しても本人がばらさない限り気付かない気がする。
掲示板でも『○○○の街の○○○さんはプレイヤーかNPCか?』なんて話題があったりしたし。
何度も通った役場の建物が見えた。
言われた通り左に曲がる。
なるほど、確かに大きな看板があった。
2匹のヘビが絡む翼ある杖の紋章、いわゆるヘルメスの杖と呼ばれるデザイン。
どう見ても間違いない。
近づくと入口が2箇所あるのがわかった。
私が向かうのは右側のようだ。
何故なら左側の扉の前にこんな看板があるから。
『錬金術ギルド直売店 営業時間:早朝から日没まで。各種薬品及び錬金術用品をアウトレット価格で提供中!』
更にちまちました広告ポップ的なものも見える。
『錬成失敗
『
何と言うか商売っ気のあるギルドだ。
これで本当に大丈夫なのだろうかと心配になる位に。
しかし案外客がいそうな感じだ。
私が歩いている間にも1人、店の方へ入っていった。
きっとこの世界ではこういった薬は食品並みに一般的なのだろう。
パンとかスイーツのアウトレットと同じ感覚で売れる位に。
そう自分を納得させながら、店ではない方の入口へと向かう。
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