第21章 新マップの場所
第117話 私らしい戦い方
旧要塞から市場街方面を通って帰ってきた。
途中、市場で私は鶏むね肉とハーブ類を購入。
勿論ジャーキー用だ。
カリーナちゃんも小麦粉とかドライフルーツ類とかチーズ類等、あれこれと購入。
「今度行く場所がどんな所かわからないですので、念の為に買っておきます」
そしてお家に帰ったらいよいよ契約書作成だ。
「これに名前を書けば、明日のお昼に移動開始なんだよね」
「その筈です。ケルキラからなので、おそらく船で出る事になります。あと出るのは明日お昼ですけれど、到着までにはそれなりの日数がかかると思います」
船で日数がかかるか。
そうなると不安が幾つかある。
「船って揺れるのかな。酔わなければいいけれど。あと退屈だよね、船が海の上にいる間は。ラッキー君も運度不足になりそうだし」
「時間経過はあると思いますけれど、おそらく体感する事はないと思います。読書の時と同じです。こっちは一瞬だと感じているのに時間経過だけはしているという状態なのではないかと。
テストプレイではないですけれど、船でクレーテー島へ行った時がそうでした。出港した後港内を動いて、すぐに景色が変化して目的地の港内の景色になるという感じです」
なるほど。
「船旅を楽しむなんて事は出来ないけれど、船酔いとか退屈とかの苦労は無いんだ」
「ええ。外洋の魔物を倒す為に出る船とかは別ですけれど」
風情がないけれど便利でいい。
何ヶ月も船の中で時間つぶしというのは退屈だし。
「便利だね。それじゃ契約書にサイン、しちゃおうか」
カリーナちゃん、私、そして私の代筆でラッキー君の名前を記載する。
記載し終わってもう一度書類を確認しているとメッセージが入った。
運営からだ。
「運営からメッセージが入りました。ミヤさんはどうですか?」
「私の方も入った。契約書に名前を書いたからかな」
「そうだと思います」
メッセージを開いて確認する。
やはりこの関係だった。
新マップ行きの船は3月9日、つまり明日ケルキラ新港から出港予定。
3番埠頭に停泊中のリーフデ号という船なので、明日の11時から正午までの間に乗船して欲しい。
船の渡り板前に係員が立っていて、契約書を見せれば乗船できる。
そんな内容だ。
「何というか、監視されていますって感じだね。実際は監視というより契約書に署名したという条件で反応するんだろうけれど」
「確かにそうですよね。あ、もう一通メッセージがきました。今度はメアリーさんからです」
私のほうにも来た。
やはりメアリーさんからだ。
開いて内容を確認。
「こっちも来た。新要塞のボス戦の動画が出来たから確認お願いって。私も見るけれど、カリーナも一応確認して貰っていい?」
「わかりました」
メッセージに書いてあるアドレスを辿り、動画を確認してみる。
私の右斜め後ろから敵全体を俯瞰する形で映像ははじまった。
私の姿はモザイクを入れた後、更にボケさせた状態に加工してあった。
両手に斧を持っている以外は人型をしている事くらいしかわからない状態だ。
全体攻撃をかけ、移動して倒し、また全体攻撃をかけ……
こうやって客観的に見ると私、果敢というか凶暴だ。
ひたすら力と技で押しまくるというか押し潰すという感じに見える。
確かに脳筋スタイルと自覚はしていたし自称もしていた。
それでもこうやって客観的視点から見ると、我ながらなかなか凶悪な戦い方だなと感じる。
私ってこんな感じだっただろうか……
もちろん
当たり前だが警察沙汰になる。
しかし戦うというのは腕力による戦闘だけではない。
例えば入学試験なんてのも、人と競うという意味ではきっと同じだ。
もっと言えば入社試験とか学校での試験等も、戦いだ。
気がついた。
絡め手等を一切使わず、正面から力で叩き潰すという私の
これってきっと
試験範囲は山などかけず全部覚える。
範囲内は教科書、副読本、問題集の全ての例題を解けるようにしておく。
英語なら単語とイディオムは全暗記。
国語の古文と漢文に至ってはある程度有名で問題等で出そうな文章はほぼ全部、解説を含めて読み潰す。
そうだ、知識と学力で正面から力押しする。
少なくとも各種試験では私、そんな方法で戦ってきた。
叔母一家相手も今考えてみたら似たような感じだ。
勿論腕力で叩き潰すなんて法に触れるような事はしていない。
それでも警察へ相談、弁護士へ相談、監視カメラでの記録と電話録音、更には今までの叔母一家のうちや祖父母へ書いた借用書等を使い、法律その他でもって叩き潰したのだった。
力押しで正面から押して押して押し潰す脳筋プレイ。
実はこれって私らしい戦い方なのかもしれない。
ただ、もし、違うとすれば……
しかし
あとは最初にチュートリアルでお世話になった援助妖精のシルラちゃんもそうか。
だから私は何も考えず、心置きなく脳筋プレイを楽しんだ。
それが今の状態だ。
別にそれが悪いわけではない。
そしてゲームはきっと楽しむ為にあるもの。
そういう意味では間違いなく私は
ただ、何かがひっかかる気がする。
カレンさんやカリーナちゃんに対する感謝というのとはまた別に。
ただそれが何か、わからない。
掴めそうだけれど掴めない……
「ミヤさん、何か動画に問題点ありましたか?」
カリーナちゃんの言葉で我に返る。
そうだ、今は動画の確認をしていたのだった。
「問題はないと思うけれど、カリーナの判断はどう?」
「ええ。これなら映っているのが誰かは特定出来ないと思います」
「わかった。それじゃメアリーさんにOKって返信しておく」
掴めないものが何かは今の私にはわからない。
でもとりあえずカリーナちゃん、ありがとう。
突如そう言うのも変かもしれないから、また別の機会に言うけれど。
それではメアリーさんに返信するメッセージの文面を考えよう。
まずはお約束の定型文からかな。
拝啓、ケルキラも日増しに春めいてまいりました……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます