第2話 初期設定とチュートリアル開始
ゲームという物には色々とお約束があるらしい。
最初に初期設定として
ここで種族、性別、一括してステータスと呼ばれる能力値、職業、宗教なんてものを決める。
しかしこのステータス関係、
だからネットで情報を集め、攻略サイトなんてものを読んだ。
そして理解した。
結局よくわからないという事と、個人的好みで選んでも問題無いという事を。
ゲームの謎を解くとか強い敵を倒すとかが目的なら、それなりに有利な選択が存在するのだろう。
しかし私はそういった事が目的では無い。
ならば少しでも共感出来そうな自分の分身を作った方がいい。
他にも充分下調べはした。
だから問題は無いと思う。
多分きっと。
さて、私というか
ゲームのオープニングで私は『遠くの世界から船でやってきて港についた』という状況。
これから『入国審査を受ける』という形で、自分の
「おまたせしました。入国審査の準備が調いましたので、自分の種族と性別の窓口へとお進み下さい」
ここでどの窓口を選ぶかによって種族が決定する。
人間男性、人間女性、
ちなみにドワーフとかハーフリングとかは無い。
NPCにはいるらしいけれども。
何を選ぶかは既に決まっている。
このゲーム内の時間は現実の24倍の早さ。
現実の1時間で1日が経過する。
つまり人間を選ぶと現実時間で3年すれば老人になってしまうのだ。
長期没入する予定の私にとっては短すぎる。
しかし
しかも成人したら老衰で死ぬまで外見が変わらない。
その上レベルアップして
だから
性別はまあ自分と同じ女性で、年齢も同じ22歳で。
その方が
さて、能力はどうなるかな。
職業は錬金術師と決めているけれど。
そう思いながら私は
まだ
ゲームに必要無いから設定していないという事は無いだろう。
味覚以外の感覚は感じているし。
周囲の人は男女、身長、種族、年齢バラバラという感じ。
ただこれらはきっとプレイヤーの
顔を見るために鏡がないか見てみたけれど、残念ながらなさそうだ。
手は普通の人間の手という感じで、男女はわからない。
服装は男女どちらともとれる黄土色のパーカーにパンツ、靴は普通の革靴
身長は周囲の人の見え方から推測するに、概ね160cm程度。
顔はわからないけれどきっと男女どっちともとれそうな中性的な外見にしているのだろう。
それにどうせ
だから今の外見を確認する必要性は全くないだろう。
そう判断し、私は再び歩きはじめる。
◇◇◇
入国審査というよりは運転免許申請のような感じで窓口を回りながら
証明写真を撮る場所で外見を選ぶシステムはなるほどなと思った。
まあ初期設定で選べる外見はそれほど選択肢が多くないけれど。
私の場合はとりあえずエルフ女性の標準そのままで。
こういった世界では何が可愛くて何が綺麗なのか、今ひとつよくわからないから。
それに標準そのままという人はほとんどいないだろう。
そこを狙ったというのも実はあったりするけれど。
ただひとつ失敗したのは年齢設定。
どうやらこの世界、
その結果、出来た
本当は設定年齢も外見年齢も自分に近い
訂正しようかと思ったけれど、年齢の訂正は外見の訂正とは違う窓口でやや面倒。
それに10年もすれば大人の外見になる。
現実世界の1ヶ月がVR世界ではほぼ2年。
つまりここでの10年は現実世界なら5ヶ月ちょい。
それに見た目的にも悪くない。
この外見では元の私とはわからないだろう。
だからもう、このままでいいやという事にした。
外見を決めた後は、能力を決める為の窓口を幾つか回る。
これらの窓口、入国審査という名目なのに中身はスロットゲームだのダーツだのサイコロだののミニゲーム風。
入国審査でこれというのは少し違和感を覚えたが、まあこれくらいは仕方ない。
数値を決めるにはこれらの方法がわかりやすいだろうから。
なおこのダーツは妙に狙いやすかった気がした。
回転速度はそこそこ速いけれど文字は読めるし狙える程度。
これはまあ、そういう設定になっているのだろう。
ゲーム熟練者ならある程度狙った能力に出来るように。
だから一応、狙えるところは高い数値を取っておいた。
能力値が高い分には問題無いだろう。
そう深く考えずに進む。
10箇所くらいの窓口やミニゲームを経て、やっと私の
決まった能力や職業その他のステータスが書かれたパスポートと、職業ごとに決まった初期装備を受け取れば
入国審査場を出る前にパスポートを開いて確認してみる。
『ミヤ・アカワ
書いてあるのは名前と、いわゆるステータスとよばれるもの。
名前は現実での本名、
ファーストネームを呼ばれても違和感がなく、かつ全体として異世界っぽい名前にしたつもりだ。
他に書いてあるのは職業、レベル、称号といった関係と、ステータスと呼ばれる能力を示す細かい数値。
ステータスの数値が意味するところは結局よくわからないまま。
しかしどっちにしろ錬金術師になってしまったのだから関係ないだろう。
だから分析はパス。
途中で入国審査の係員に、
『本当にこの能力で錬金術師でいいんですか?』
と念を押されたけれど、きっと間違いを防ぐための措置なのだろう。
入国審査場を出る。
石畳や煉瓦の道、石や煉瓦作りの建物が並んでいる。
ヨーロッパ近世風の港街といった雰囲気だ。
ハウステンボスとかイクスピアリと言われればそんな気がしないでもないけれど。
「ようこそ、パイアキアへ!」
ふと耳元で小さな声が聞こえた。
私は右側を振り向く。
手のひらサイズの女の子が背中に生えた羽根を細かく動かして空中に浮いていた。
「はじめまして。私は平和と冒険の女神パルキアの使い、援助妖精のシルラだよ。
このパイアキアでは放っておくと魔物や魔獣が増えちゃうの。だから討伐してくれる人が多いと助かるんだ。
それでもし良ければ魔物の倒し方について簡単に説明するけれど、どうかな?」
シルラと名乗る妖精に被さるように、半透明な白色文字が視界に表示される。
『選択:チュートリアルへのお誘い
シルラによる魔物討伐のチュートリアルを受けますか?
受ける場合はシルラにそう返答して下さい。受けない場合は無視して立ち去れば、シルラは次の相手を探して飛び去ります』
なるほど、こうやって選択肢が出る訳か。
視界に文字が表示されるなんてのは現実ではありえない。
流石VR世界。
これはゲームのお約束、チュートリアルという奴だ。
もちろん事前情報でこの事は把握している。
このシルラによるチュートリアルは常識的過ぎる内容で面倒なだけ。
攻略サイトにはそう書いてあった。
しかし私にはゲームの常識というものが足りない。
だからここは受けるの一択だ。
「御願いします」
「ありがとう。それじゃまず、魔物や魔獣がいる場所へ案内するから私について来て。危ない場所じゃないし怪我したら回復魔法をかけるから大丈夫だよ」
この先何処へ向かうかはわかっている。
今居る場所からおよそ300mくらい南にある、コルフ平原と呼ばれている場所だ。
ところでこの妖精、やっぱり飛行原理は魔法なのだろうか。
羽ばたいている訳ではないし、ジェット噴射をしたり等もないようだから。
そんな事を思いながら私は、ふわふわと肩の高さくらいを飛ぶシルラの後ろをついていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます