第81話 危険から逃げる為です
ラッキー君と30分くらい木球やフリスビーで遊んだ後。
証拠隠滅を兼ねたキッチン清掃と整理、ついでに部屋の片付けを実施。
その後は庭でまだ覚えていない大車輪あたりの槍技の練習。
時々ラッキー君と遊びながら。
途中12時の鐘が鳴ったのでストックしてあったギロスで軽く昼食。
ラッキー君をなでながら
開いたサイトは『パイアキアン・オンライン最新情報』。
「ファンサイトで公式ではありません。ですが一番情報が多くて早くそこそこ正確なので、全般的な情報を知るにはおすすめです」
カリーナちゃんがそう言っていたのでURLを聞いてショートカットに入れておいたものだ。
このサイトには分野別に情報が載っている。
項目はヘッドラインニュース、攻略情報、アップデート、初心者ガイド、魔物・魔獣図鑑といったところだ。
こういうサイトがあるところが現実ではなくゲームだよな。
でも
そんな事を思いつつ上から斜め読み。
身に覚えのある記事があった。
ヘッドラインニュースの3番目だ。
『オブクラリス・15分台で倒される!』
私達が倒したのは昨日の午前中、
しかし
こんなに早く情報が上げられているのか。
若干驚きつつ内容を見てみる。
『ムーサ暦132年3月4日午前、コリション干潟の中ボス、オブクラリスが15分23秒で倒された事が
当該パーティは
記事そのものの内容はこれだけで、その後にコメントと関連記事が入っている。
コメントの方をちらっと見ると頭悪そうで参考にならない感じだったので無視。
関連記事は以下の2つ
○ コリション干潟に未発見タスクか? 公式SNSコメント
○ パイアキアン紀行 コリション干潟の泥魚料理
カリーナちゃんはこの記事を見て泥魚料理を作ったのだろうか。
気になってリンクを踏んでみる。
『コリション干潟の第一ステージはコリシアの集落西に広がる干潟部分。ここは元は湖で砂州で海と隔たっていたが、ムーサ歴前200年頃に巨大魔亀ザラタンの来襲によって砂州の半分を崩され干潟化したとされている。
さて、この干潟を攻略した冒険者は泥の中から不意に出てくる泥魚に……』
料理紹介と言うより紀行文という感じだ。
まあタイトルからして『パイアキアン紀行』だし当然か。
ただ今回読みたいのは料理部分。
ささっと読み飛ばしつつ本題の料理部分を探す。
『さて泥魚だ。この泥魚はトビハゼ類が魔獣化したものとされており、日本のムツゴロウをデジタイズした上で巨大化、能力強化等したものと公表されている。
故にムツゴロウ料理と同じ方法で調理が可能ではないか。そういった一部有志の手で調理方法が模索されてきた。その結果現在ではコリシアの他、モライティカの高級料理店等でも食されている』
なかなか料理そのものにたどり着かない。
この後著者はコリシアではなくモライティカの街へ行き、料理店に入り、ようやく料理についての記述となる。
『本物のムツゴロウと違うのはその大きさ。故にムツゴロウ料理とは名前こそ同じだが調理法がやや違う料理が多い。
例えばこの蒲焼き、ムツゴロウでは丸のまま素焼きにするところ、半身に捌いてから外側のみ黒くなるまき焼き、内側は身が絞まる程度に熱を加えるのみの状態で煮汁入りの鍋に入れ、時折汁をかけながら煮汁が無くなるまで煮る……』
魔法で熱を通すのではなく、実際に焼いたり煮たりしているようだ。
カリーナちゃんもそうやって作ったのだろうか。
だとしたらとんでもない手間がかかっているだろうと思う。
気になってまた別のWebページを開く。
こちらはパイアキアン・オンライン内の料理レシピのページだ。
実は今日、卵焼きが出来たら次のステップという事で調べておいた。
ゆで玉子すら出来なかったのでここまで辿り着かなったけれど。
見ると『泥魚の蒲焼き』なんてメニューがちゃんと載っていた。
どれどれ、早速読んでみる。
『① 泥魚はまとめて清浄魔法をかける
② 3枚におろす。なお頭と中骨部分は捨てずに残しておく
③ 全体に乾燥魔法をかける。1割程度の水分を飛ばす
④ 皮がついた表面部分のみを意識して300℃を30秒間かける
⑤ ②で出た中骨部分に乾燥魔法をかける。水分を9割以上飛ばした後、粉砕魔法を使うと顆粒状になり使いやすくなる
⑥ 醤油大さじ2、砂糖大さじ3、日本酒120mℓ、水大さじ100mℓ、⑤で作った……』
うん、結構面倒臭そうだ。
やはり私には料理はまだ早い。
この世界から出なければ問題はない、多分。
ただやっぱり悲しいので、念のために調べてみる。
玉子焼きの作り方を。
おお、なんと卵の割り方なんて初歩のページがある。
なるほど、
① 卵の端では無く平たい部分、上下方向の中心部分を
② 角では無く平たい場所に軽くうちつけて
③ 割れ目に両手の親指を入れてゆっくり開く
のか。
なるほど、卵の割り方ひとつにもそれなりの方法論があるようだ。
ならこの辺をもう少し調べて、そして料理に再挑戦しよう。
今日ではなくこの次の機会に。
今日やらない理由は簡単。
まもなく13時になるし、そろそろカリーナちゃんが帰ってくるだろうから。
せめてハーブティくらいはいれて迎えよう。
私はキッチンへ行き、ポットに99℃のお湯を出して、ハーブティのパックを2個入れる。
ふと見るとラッキー君が部屋の反対側、窓から庭へと出て行った。
カリーナちゃんがキッチンにいるときはキッチン付近でおこぼれを狙っているのだけれど。
ラッキー君、私の場合は料理出来ないからおこぼれを貰えない。
そんな判断をしているのだろうか。
だとしてもわざわざ部屋の反対側へ行く事はないと思う。
何故だろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます