第97話 謎解きは諦めよう
検索した結果、今の私の需要にぴったりのサイトを発見した。
題して『旧要塞本館5階と海の塔第4階層の謎』。
つまりこの関係専用のまとめサイトだ。
どうやら本館や海の塔の最上階が気になるのは私だけではない模様。
現在、私の全感覚は機械と直結状態。
だからこういった情報、その気になればほぼ瞬時に頭の中に入れられる。
目で文字を追う時間、サイト移動やページめくりの操作時間、そして画面が切り替わる待ち時間なんてものは必要ない。
勿論脳に送り込まれた文字情報を解釈する時間はかかるけれど。
ゲーム内の『本』のようにわざと時間経過を作っているものは例外として。
ひととおり情報を入れた後、内容を確認する。
何かアイテムを手に入れたとか新たなクエストがあったとか、それ以外でも何かあったという情報はない。
つまり事例は失敗ばかりだ。
○ 中に入れた場合の失敗確認事例
● スケルトンを倒して部屋の中へ入る
本館、海の塔ともに中は何もなし。壁や床を全部確認したが何かを隠している状況もなし
● ボスを倒した場合
スケルトンナイトはいなくなる。部屋の中は何もなし。スケルトンを倒して入ったのと同じ
● 薬剤を使ってスケルトンを排除する
スケルトンは逃げない。無理して薬剤を振りかけると戦闘になる。あとはスケルトンを倒した場合と同じ
○ 中に入れなかった事例
● 門番のスケルトンナイトを倒さず部屋の中へ入る
本館、海の塔双方ともに成功せず
・ 下の部屋から天井(床)を壊す
・ 下の部屋から隠し通路
・ 窓から外壁経由
● 横の空間、壁
本館、海の塔双方ともに、隠し通路の探索及び壁を壊せるか確認したが成功せず。
なお探索及び壁破壊についてはレベル72、
● 他の部屋から屋上経由
本館、海の塔ともに現在のところ成功例なし。
○ その他
● 窓経由で中へ連絡
本館、海の塔ともに下の方法を試したが成功せず
・ 矢文 レベル55の弓術士が必中スキルを使用しても届かず
・ 従魔 猿、鳩、鷹、カラスにて確認。窓から3m以内には近づけず
● アイテムを使用する
使用できるようなアイテムは未発見
実際は更に細かい挑戦例まで書かれている。挑戦時のレベルや能力についてまでだ。
それにしても皆さんよくこれだけ方法を考えたなと思う。
私が想像するよりずっと多くの方法が試されていたようだ。
他には攻略に直接関係ないが参考になりそうな情報なんてのもあった。
最近の情報ではこんなのがある。
『本館及び海の塔の窓の外3m地点から特殊従魔(カトゥボドゥア)で内部を可能な限り撮影。人影及び特殊な事物なし』
カトゥボドゥアという種類の特殊従魔には覚えがある。
名前と動画へのリンクを確認。
やっぱり海の塔の下で会ったメアリー・セレストさんだった。
自分のサイトに情報を載せるだけでは無くこういったサイトへ投稿をしているようだ。
これはメアリーさんのサイトへの誘導という意味もあるのだろう。
こういった処は持ちつ持たれつという奴なのだろうか。
またこのまとめサイトにはこんな注釈があった。
『このサイトに掲載していて、結果が出た以外の方法を、
○ 実践して成功した方
○ 実践してうまく行かなかった方
○ 思いついた方
はご一報いただけると幸いです。
思いついたものの条件が揃わず実行に移せない方法でもかまいません。
また攻略に直接結びつかなくても参考になる情報があれば、そちらも教えていただけると幸いです。
情報内容に応じてゲーム内にてお礼(ラウリオン銀1gカード(刻印入り)最大で数枚程度)をお送りいたします』
サイト管理者はアスティナさんという知らない人。
私が
だから知らないのも当然だろう。
ふと思う。
アスティナさんは何故このサイトを運営しているのかと。
自己顕示欲か、PVを増やして広告費を稼ぐ為だろうか。
でもそれならもっと良さそうな題材がいくらでもある気がする。
そもそも旧要塞は新要塞と比べると圧倒的に攻略する人が少ない。
その分興味を持つ人は少ないだろう。
ひょっとして他にも攻略サイトを運営しているのでは?
そう思って『パイアキアン・オンライン アスティナ』で検索してみる。
幾つかヒットするけれど、管理者として運営しているのはこのサイトだけだ。
何か旧要塞のこの謎に思い入れがあるのだろうか。
この世界はゲームだ。
規則に反しなければどんな遊び方をするのも自由。
だからこの謎にこだわりまくるなんてのも当然ありだ。
ただ……
私はここの情報を見て思った。
これは私がちょっとやそっと考えたくらいでは解けないだろうと。
もし本当に謎というかサブシナリオか何かが存在していればの話だけれど。
気になる事はある。
例えば従魔でも外から近づけないとか。
ただ『外から窓の中を見ても何もない』なら、現状では何もないという可能性が高い気がする。
少なくとも私に解けそうな気がしない。
謎が本当にあったとしても。
そう、つまりは綺麗さっぱり諦めた。
此処で時間をかけるより、さっさとレベルを稼ごう。
テスターなら少しでも早く始めた方がいいだろうし。
カリーナちゃんに向け、私は結論を口に出す。
「それじゃボス戦をやろうか。どうも此処の謎、あるとしてもそう簡単に解けないような感じだから。
ごめんねカリーナ、今まで引っ張って」
「わかりました。本館地下2階のリッチーからでいいですか?」
確かこっちは連射の連続で倒せるんだよな。
確実な方でレベルを上げてから難しい方へ向かう。
そんな王道的な方法論がきっと正しいのだろう。
「うん、それで行こう」
行くなら早く行きましょう、そうでなければもっとおやつを下さい。
ラッキー君がそんな顔で私達を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます