第7章 中級薬剤の威力確認
第37話 雨上がりの旧要塞
雨は1時過ぎに止んだ。
カリーナちゃんが言ったとおりだ。
なので私達は予定通り旧要塞へ向け出発。
私の服装は厚手の長袖シャツとやはり厚手のパンツ、その上にフード付マント。
つまりは初期装備そのまま。
特に怖い場所に行くつもりがないから鎧とかは必要ないし、清浄魔法で綺麗に出来るから洗い替え用の服を買う必要もない。
まだこの世界に来てから服屋へ行っていないというのもある。
家にラッキー君が待っているから買物も最小限でまっすぐ帰るようにしているし。
一方カリーナちゃんもケルキラへ来た時と同じ服装だ。
つまり小学校の体操服っぽいスタイルの上に大きいコート。
前と同じで顔が見えないのがちょっと残念。
雨が止んだばかりだからか街を出歩いている人が少ない。
店もまだ戸口を閉めているし外看板も仕舞った状態。
そんな街を2人と1匹で東へ向かって歩いて行く。
「雨の日、私は嫌いじゃないです。人がほとんどいなくて楽ですから」
確かに人見知りするならそういう視点もありだろう。
しかし雨の場合、確か……
「スライムとか大変じゃない? カリーナの家なんて街壁の外だから特に」
「家のまわりは魔物避けの魔法陣を敷設しています。それに水スライムを倒すのは簡単です。倒した後に忌避剤をまいておけば3時間は出ないですからその辺を歩く時も問題ありません」
どこぞの小説の主人公が言っていた台詞を思い出してしまった。
『魔物は倒せばいい。人は倒すとまずい』
あれは対人恐怖症の主人公だったけれど、人見知りでも同じ理屈は成り立つのだろう。
特に問題無く旧要塞入口の扉に到着。
念の為に片手剣を出して、そして扉を開ける。
おお、流石雨の直後!
橋の上にうじゃっとゼリー状塊が出来ていた。
これはきっと全部、水スライムだ。
仕方ない、ここは毎度お馴染みエア・スラッシュで片付けるか。
そう思った直後、足下から白い塊が飛び出した。
「あ、ラッキー……」
ラッキー君、猛烈な勢いでダッシュ。
前脚の爪や牙でガンガンと水スライムを倒しながら大爆走している。
「ラッキーちゃん、嬉しそうですね」
そう言えばスライム系はラッキー君の好物だった。
正確にはスライムやデミスライムの魔石が好物。
どうやら水スライムも同様に好物らしい。
「確かにそうだね。尻尾が上に曲がっているし」
絶好調で走り回っているわんこはそういう尻尾をしているのだ。
私が知っている限りはだけれども。
「ラッキーちゃんに任せておいた方がいいかもしれないです」
カリーナちゃんはそう言うけれど大丈夫だろうか。
まだ雨の後1時間経っていないから、水たまり等は結構残っている。
水が豊富だからかラッキー君が倒した水スライムも5割くらいはその場で復活している様子。
それでもラッキー君、楽しそうに水スライムを倒している。
動きが何と言うか、ただ走っているだけでなく跳ねている感じ。
これなら大丈夫かな、そう思い直す。
「確かにラッキーの気が済むまで、このままの方がいいかもね。それにしてもなんで水スライム、こんなに簡単に復活するんだろ」
「魔物は身体になる材料と、魔石や活動源になる
水スライムの材料はほとんど水ですし、人が多く暮らしている街の周辺は
ですので乾いて水が無くなるか
なるほど、でも待てよ。
「人からも
「
他に聖堂や神像から発生する
どうやらゲーム世界にも色々と理屈はあるようだ。
5分くらいで橋の上の水スライムはほとんど無くなった。
ラッキー君が満足そうな顔をして尻尾を振っている。
「それじゃ行こうか。
「もうすぐ下が乾くと思うのでいらないと思います。それにラッキーちゃんも嫌がると思いますから」
確かにラッキー君も一応魔獣ではあるんだよな。
ついつい忘れがちになるけれど。
「わかった」
それじゃこのまま行くとしよう。
私達が歩きはじめるとラッキー君がだだっと戻ってきた。
そのまま私とカリーナちゃんの間で一緒に歩き出す。
「まずはあそこの門の手前で
あとラッキーちゃんの首筋にも
デュラハン?
知らない魔物の名前が出てきた。
「此処はどんな魔物が出るの?」
「スケルトン系の魔物がほとんどです。スケルトン、スケルトンソルジャー、デュラハン、スケルトンナイト。あと室内や地下道、
デュラハンとはどうやらスケルトン系でもっと強い魔物のようだ。
しかしそれ以外に聞き逃せない名前が聞こえた気がする。
「レイスって確か魔法で攻撃してくる魔物だよね」
カリーナちゃんは頷いた。
「ええ。ですがほとんどの魔法は剣技で相殺する事が出来るから怖くないです。
ですので
カリーナちゃんはそう言うけれど、本当にそんなに簡単なのだろうか。
そう思って、でもこれはゲームだと考え直す。
ならば正しい解法で望めば攻略できるようになっていてもおかしくない。
そしてカリーナちゃんはこのゲームの上級者。
だからきっと大丈夫だろう。
門が大分近づいてきた。
そろそろかな。
「それじゃ薬を使うね」
私は立ち止まる。
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