第99話 作戦の相談とイヤシ犬

 スケルトンジェネラルに使えそうな方法は思いついている。

 しかし実際に使えるかどうかはわからない。

 だから今のうちにカリーナちゃんに相談しておこう。


 まずは前提条件の確認だ。


「スケルトンジェネラルの体力はオブクラリスの3割以下だし、追い詰めても瞬間移動とか煙に変身とかで逃げないんだよね」


「ええ、そうですけれど」


「なら湿原の雑木林で練習した奥義の天衝斬で倒せないかな。空中に跳ね上げて移動の自由を奪った後、下から連続で刺しまくる技」


「そうですね……」


 カリーナちゃんは少し考えた後に口を開く。


「うまく決まれば倒せるとは思います。

 でもスケルトンジェネラルは今までの敵と違って間合いを調節したり、攻撃を躱したりします。また骨という実体が残っているのでリッチーのように対魔武器で攻撃されている間は動けないという事もありません」


 なるほど、技を決めるのは簡単では無さそうだ。

 しかしそれなら。


アンデット・死霊系魔物忌避剤エラービ等の薬剤で動きを止めるのは?」


「ある程度は効果があります。アンデット・死霊系魔物忌避剤エラービによるダメージも受けます。ただ威力がある攻撃を避ける為ならあえて薬剤のダメージを受けても避けるなんて判断をしたりもします。

 中に人間並のAIが入っていると思った方がいいです」


 うーん、そこまでなのか。


「更にある程度の距離があると遠隔攻撃を使ってきます。エア・スラッシュや蜻蛉切スマッシュ等です。ある程度のモーションはあるので避ける事は出来ますけれど」


 何というか……


「今までと段違いに難しい敵なんだね、スケルトンジェネラル」


「オブクラリスもリッチーも本来は難しくて面倒な敵です。あの本で覚えた技と腕力でミヤさんが突破してしまっただけです」


 えっ?


「そうなの?」


 正直そういう自覚はあまりない。

 でもまあオブクラリスはあれだけ騒ぎになったのだから、やはり特殊な攻略だったのかなと後付け的には思う。

 ただ……


「リッチーは連続技を出しまくれば勝てるってカリーナが言っていたし、実際それで倒せたよね」


「あそこまで途切れず連続攻撃を続けるのって普通は無理です。ですからミヤさんの攻撃が途切れた時に備えていつでも連弾手刀レボ・フィストを出せるようにしていました。


 普通はそうやって交代で連続攻撃をかけまくるか、多少の被害は覚悟で突っ込むかして倒すのが定石なんです。確かに連続攻撃で倒せると言いましたけれど、まさか完全に1人で倒してしまうとは思いませんでした」

 

 うーん、そうだったのか。

 そう言えば思い当たる事がある。


「確かにあれだけ連続攻撃を出しまくるのは大変だったしね。腕がつりそうになったから。初級治療薬ポーション半分使ってやっと回復した感じだし」


「……微妙に認識の違いがある気がします。でもきっとそれがミヤさんなんでしょう」


 微妙に呆れられてしまった気がする。

 私としては特に変わった事をしているつもりはないのだけれど。


「あとスケルトンジェネラルについては、あまり気負わないで戦って大丈夫だと思います。ボスと言っても強さそのものはミヤさんの方が上です。それに私もラッキーちゃんもいます。ですから普通に戦えば負けはありません」


「わかった。それじゃスケルトンジェネラル以外の雑魚が倒れるまではいつもの連続攻撃技を使って、あとはその場にあわせて戦う形でやってみる」


 当初と違う作戦になってしまった。

 相談しておいて良かったと思う。

 技をかけようとして避けられてしまったら悲しいどころか危険だから。


「それではそろそろ行きましょうか」


「そうだね」


 私とカリーナちゃんは立ち上がり、海の塔へ向かって歩き出す。

 しかしこの流れに納得いかない輩が1匹。


 あれ? おやつが出ませんでしたよ? 忘れていませんか?

 お話ばかりの中、此処でいい子して待っていたんですけれど。

 そんな感じでラッキー君、カリーナちゃんを見上げる。


 しかしカリーナちゃん、表情の意味に気づいていない。

 ただラッキー君をなでなでして、そしてそのまま歩いていく。


 えっ? えーっ!!

 ラッキー君、そんな顔をした後立ち上がってたたたっとカリーナちゃんの真横へ。

 カリーナちゃんと速度をあわせて歩きながら上を向いて訴える。

 ここにいますよ、まだおやつもらっていませんよと。

 それでもカリーナちゃん、気づかない。


 これでは駄目だ、ラッキー君はそう判断したようだ。

 さっとダッシュして10m位先で停止。

 くるっとこっちを向いて良い子のポーズでお座り。

 とっておきの可愛い表情でカリーナちゃんを見た。


「ああ、ラッキーちゃん。何かあるんですか?」


 うん、仕方ない。

 通訳してやるとしよう。


「休憩したのにおやつがなかった、そう言っているだけ。無視していいから」

 

「あ、そう言えば今回はおやつ無しでした」


 カリーナちゃんはそう言ってアイテムボックスから何かを取り出した。

 ラッキー君がさっと近づいて良い子のお座りポーズ。

 ただし表情が必死だ。


「はい、今回はジャーキーですよ」


 ラッキー君は手を食べそうな勢いでジャーキーを口で取り、そのまま一気に食べてしまった。

 そして再び良い子のお座りポーズ。


「だめですよ、今食べましたよね」


 柳の下にドジョウは二匹いなかったようだ。

 仕方ない、そんな表情でラッキー君、立ち上がった。

 そのままカリーナちゃんの真横にくっついて、そして歩き出す。


 うん、やっぱり可愛い。

 ラッキー君もカリーナちゃんも。

 今のをビデオに撮っておきたかった。

 そう思いつつ、私も少し早足で歩いてカリーナちゃん&ラッキー君に追いついて、並んで歩いて行く。

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