第76話 はじめての中ボス戦
思い切り走ってオブクラリスの横に回り込む。
オブクラリスの中心から見てほぼ真横で一時停止。
手足や噛みつき攻撃が危険と聞いたので10mくらいは間合いをとる。
それでもオブクラリスが大きすぎて近すぎると感じてしまう。
1本1本がナイフくらいある足爪がとにかく危険そうだ。
『槍技:
的が大きいので当てるのは簡単だ。
しかし当たってもリアクションは感じないし、見た目が変わる感じも無い。
これは効いているのだろうか。
わからないので次の攻撃は……
『槍技:
一瞬確かに斬れた気はした。
しかし皮膚が分厚いせいか血が出たりという反応はない。
傷口も皮膚の皺に紛れて見えなくなる。
甲羅の中から頭部を出し、辺りを睥睨する。
一瞬目があったような気がして思わず身体が下がりそうになる。
いやしっかりしろ私! ここはむしろチャンスだろう。
『槍技:
出てきた頭に向けて攻撃。
やはり斬れた気はするが外見の変化は無い。
なるほど、これがカリーナちゃん言うところの面倒なのか。
効果がまったくわからない中、とにかく攻撃し続けなければ倒せないという。
ずずっ。
こちらに背を向けカリーナちゃんの方を向く。
どうやらカリーナちゃんを先に倒すべき敵と認めたようだ。
『槍技:
『槍技:
変化は見えない。
もっと強力な技をかけないと。
ならばこれではどうだ。
私は
ナイフのような爪の足が空でもがく。
地面と爪の間に近づいて連続で突きを入れる。
スケルトンで試して覚えた筈の奥義、跳上連突狙いだ。
まずい、足が落ちてきた。
ダッシュで後方へ逃れる。
残念ながら奥義は発動しなかった。
下からの突き上げが弱かったのだろうか。
それでも確かに手応えがあった。
カリーナちゃんに向けて突進しかけていた
「無理はしないで下さい!」
カリーナちゃんの声。
「わかった」
でも今のはかなり効果があった気がする。
現に足から血が出ている。
今までに無い変化だ。
周囲を確認する。
ラッキー君は私のずっと後方、雑木林に近い方へ逃げている。
カリーナちゃんは先ほどの位置で連続技を出しているようだ。
そして前進を止めた
今度は私を狙おうとしているようだ。
この位置から今の攻撃をもう一度かけるのは危険だろう。
しかし頭がこっちを向くのはチャンスだ。
前足より動くけれど、前足よりは皮も硬くなさそうに見えるし。
ただ
でも今の発動しなかった跳上連突もどきは結構効いた。
それに近い使える技は。
『槍技:
やはりあまり効いていない感じだ。
やはり奥義かそれに近い技でなければ効果が薄そう。
そう思ったところで、ふと私はある方法を思いついた。
ならばこの方法が使えるかもしれない。
ならカリーナちゃんに言っておこう。
「ちょっと思いついた事があるので試してみる。さっきよりは安全な筈」
「わかりました。気をつけて下さい」
カリーナちゃんにOKを貰って、そして私はダッシュする。
この作戦をかける最適位置は真横、前足も後ろ足も届かないぎりぎりの位置だ。
私は最適位置に走り込むんで戦斧を構え、そして全力で甲羅と地面の間を狙う。
『槍技:跳上!』
ここで戦斧を止めない。
甲羅の手前側端を意識して、更に戦斧に力を込める。
『槍技:跳上!』
ここからだ。私は手前側の甲羅下側から跳ね上げるように全力で戦斧を振るう。
次は跳上ではなく横方向だ。
『槍技:彗星突!』
攻撃は甲羅に当たっている。
だから攻撃そのもののダメージはない。
それはわかっている。
私が狙っているのは攻撃を通す事では無い。
そして
ダメ押しだ。
『槍技:彗星突!』
そう、亀だからひっくり返してしまえ、そういう作戦なのだ。
こうやって見ると足を動かせない方向や範囲がよくわかる。
仕掛けるなら今だ。
『槍技:彗星進撃!』
攻撃しながら一気に近づく。
それでは仕上げだ。
奥義以上に信頼している大技を放つ。
『斧技・大地裂断!』
決まった!
若干浴びてしまって気持ち悪いが、清浄魔法は後だ。
『槍技・
切断面から体内方向へ貫通攻撃をしかける。
甲羅も分厚い皮もないので攻撃がガシガシ通る。
それでも右前足を失い出血している今、ひっくり返った姿勢から元に戻る事は出来なそうだ。
それでも
なら右後ろ足、届かない方向からぎりぎり近づいて信頼の大技。
『斧技・大地裂断!』
◇◇◇
『コリション干潟のボス:オブクラリスを倒した! 経験値2530を獲得。オブクラリスの……』
『『ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが……』
『コリション干潟のボス:オブクラリスを倒した2534組目のパーティとなりました。所要時間15分23秒。現時点における最高タイムです。
コリション干潟の
『コリション干潟・魔物討伐クエストの終了条件を満たしました。コリシアの冒険者ギルドへ報告に行きましょう』
今まで敵を倒した時以上に連続でメッセージが出てきた。
私は清浄魔法を自分にかけてさっぱりさせつつ文字を目で追う。
どうやらこの『報告に行きましょう』で終わりのようだ。
「さて、どうしようか?」
カリーナちゃんに聞いてみる。
「こんな短時間で倒せるとは思っていませんでした」
直接の返答では無くそんな言葉が返ってきた。
「あの槍の本のおかげ。あれで特殊技を覚えなければ浮かしてひっくり返すなんて出来なかったし」
「どんな技だったんですか?」
カリーナちゃんも知らなかった技のようだ。
「槍の特殊技に跳上というのがあって。本来は敵を空中に跳ね上げて動きを封じる技なんだけれど、上手く使えばひっくり返すのに使えるかなと思って。亀だからひっくり返せばなかなか起き上がれないだろうと思って試してみた」
「そうですか」
カリーナちゃんはそこで一度言葉をとめ一呼吸。
そしてまた話し始める。
「あの本についてはネット上に情報がありませんでした。ですから入手した人はいてもごく少数だと思います。
だからこの方法でオブクラリスを倒したのは、ミヤさんが初めてでしょう。何せ今までの最速タイムの3割以下ですから」
最速タイムか。
短時間で倒せてめでたしめでたしだ。
さて、それはそれとして。
「どこかでお昼ご飯にして、それから遺跡をもう少し探ってみる? まだまだ時間は残っているし」
「ミヤさん、今のがこの
そうなのだろうか。
確かにその辺の感覚、私にはよくわからないけれど。
「でもまあそうですね。少し早いですけれどきりがいいので、そこの小屋でお昼にしましょう」
「そうだね」
お昼という言葉で期待に満ちた表情になったわんこが一緒についてくる。
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