第73話 読書の結果
靴の中敷きは舌平目という場所によっては高級食材で、バター焼きでは無くムニエルという料理だったらしい。
そういう理屈は知らなかったけれど美味しくいただいて、勿論他の料理も全部平らげ、勿体ないけれど塩辛も全部いただいて、そして読書の時間。
「受付カウンターの奥の椅子を借りていい? あそこなら万が一遅くなっても照明つけっぱなしに出来るし」
「わかりました。迂回魔術を起動してあるので、誰かがここに来るという事はないと思います」
カリーナちゃんの家があるのはメリティイースの森のかなり奥。
短絡魔方陣を幾つか使って森の入り口から出入りできるようにしているけれど、今はその短絡魔方陣のこちら側の入り口を塞いでいる状態。
だからお客さんが来るという事はまずありえない。
それでも一応玄関の内鍵は閉めて、そしてカウンターの椅子に腰掛けて『槍術奥義皆伝』をアイテムボックスから出す。
『攻撃技全書』だけでもあれだけ槍技を覚えられたのだから、こちらではどうなるのだろう。
案外スケルトンの上位種には使用できない刺突技ばかり、って事はないよな。
そんな事を思いつつ、本を開く。
◇◇◇
『ミヤは『槍術奥義皆伝』を読んだ。読了に4時間を消費した』
本の厚さが同じ位のせいか、必要な時間は『攻撃技全書』と同じ4時間だった。
『槍技全般について使用に必要なステータスが緩和されました。また使用後の疲労が軽減されました』
これはなかなか嬉しい。
つまり技を出しやすくなり、かつ疲れなくなるという事だから。
『更に槍技の特級及び特殊技について、名称、効果範囲、威力、使用条件を記憶しました。
以下の槍技について、発動方法を理解しました。一定の訓練の後、発動が可能となります。
○ 特級技(奥義)
大車輪、旋風撃、天衝突、天衝斬、地衝刺、活殺刺、必中投槍
○ 特殊技
刺突移動(横、壁、森)、石突連打、石突連突、跳上
○ 連続技(奥義)
流星進撃、彗星進撃、面制圧突、面制圧刺、跳上連斬、跳上連突』
今回は怪しい読み方をするものは無いようだ。
そして特級技は発動方法がわかっても習得が難しそうなものが多い。
例えば天衝突や天衝斬は、
① 突いて跳ね上げる攻撃を
② 相手を自分の身長以上に浮かした上で、下から連続で突きまたは斬撃を入れる
という技。
普通の敵なら①の段階で倒せてしまう。
つまり②まで練習する事は不可能だ。
きっとこれは2~3撃程度では倒せない強敵相手に使用するものなのだろう。
つまり
① そういった強敵を余裕で倒せるようになった状態で、
② 一撃で倒せない敵を利用して練習する
なんて方法が必要になる訳だ。
あ、でも刺突無効なんて敵がいたな。
その辺を使えば練習は出来る気がする。
勿論普通に練習できる技もそこそこある。
石突を使用する系統は槍でも刺突無効にかからないので便利そうだ。
一撃で倒せない敵がわらわら出てきた時は流星進撃や彗星進撃なんてのも使えるだろう。
レイスとゴーストが一緒に出てくる場合なんかに便利かもしれない。
よし、とりあえず一通りやるべき事はやったので寝るとしよう。
そう思って椅子から立ち上がると、だだだだっと足音が近づいてきた。
もちろんラッキー君だ。
これは前に本を読んだときと同じだな。
『夜でカリーナちゃんが寝ていて暇なんです。起きているなら遊んで下さい』
今の時間は22時30分。
この小屋の周りには魔除けが仕掛けてあるから、畑ではない平らな部分を選べば問題は無い。
ついでにいうと木球もフリスビーもアイテムボックスに入れてある
「ちょっとだけだよ」
◇◇◇
翌朝。
パン、ヨーグルト&生野菜のサラダ、チーズ、卵焼き、ハムという健全な食事をいただきながら、昨晩読んだ本の話をする。
「一番の効果は使用条件の緩和と疲労の減少だと思う。これだけで今までの技も使いやすくなるから」
「それってかなり大きいですよね。あと覚えた技の方はどうですか?」
「今の段階でも使えそうな技はあるけれど、強敵相手に一対一で戦う時に便利そうな技が多かった感じ」
「確かに一般的な技は前の本でほとんど網羅されている感じですよね。今度の本は奥義皆伝という名前ですし」
確かに言われてみればそうだなと思う。
前の本でも槍関係の上級までの技についてひととおりの知識を得ることは出来たのだ。
その上、奥義皆伝となるとこんな感じが正しいのだろう。
でもそうなると……
「ならもう一度『攻撃技全書』を読んだら、今度はどんな特典があるんだろ? 槍技のほとんどは練習方法までわかっているし」
「……読んでみないとわからないです。自分が使っていない技の練習方法がわかるのかもしれないですし、練習しなくても簡単な技なら使えるようになるのかもしれませんし。
ただ悪い影響はないと思います」
なるほど。
どちらにせよ悪い効果がないのなら、試してみるのが一番か。
でもそれならばだ。
「何ならカリーナ、今晩読んでみる?」
「いいえ。今の私が読んでも効果は無いと思います。この前読んだ後、レベルも熟練度も変わっていませんから」
そう言えばまだこの辺、カリーナちゃんにはレベル上げにならない場所だった。
それに私やラッキー君のレベル上げのため、カリーナちゃんはほとんど敵を相手にしていないし。
「ごめんね、私たちのレベル上げの面倒見て貰うばっかりで」
「いいえ。これはこれで楽しいんです。来たことがある筈の場所なのに新しい発見が結構ありますし、ラッキーちゃんもかわいいですから」
それならいいのだけれど。
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