第42話 レイス討伐見学
私が全力全速力で扉を開けた直後。
カリーナちゃんは灯火魔法を起動して中へと飛び込んだ。
私は入口からカリーナちゃんの背中越しに中を見る。
天井も壁も床も石造りの暗く細長い空間。
鉄格子がついた檻が左側に並んでいるのが見える。
そして白いもやのような魔物数体と、鈍い光を放つ起動前の魔法。
ゴーストが接近する時のノイズっぽい低い音。
もう少し高いやはりノイズっぽい音。
少し毛色が違うブーンという扇風機のような音。
高いノイズ音がレイスで、扇風機っぽいのが攻撃魔法が近づく音だな。
私は音の位置からそんな見当をつける。
ちなみにレイスはゴーストと似ているけれど、よりはっきりくっきりしている感じ。
カリーナちゃんは左前に構えて拳技を発動。
先程よりストロークが短く素早く連射する感じの技だ。
白いもやのようなゴースト、起動前の攻撃魔法らしい小さな光が拳技で消えていく。
もし私が同じ方法を使うなら、1秒で10連射出来る新しい技が必要だ。
早急に練習する事にしよう。
他に使える剣技や槍技が無いか調べてみてもいい。
お金はそこそこあるからそういった技用の武器を買い足してもいいかもしれない。
さて、レイスはゴーストより打たれ強いようだ。
何発か拳技を受けている筈なのにまだ消えていない。
しかも攻撃魔法を撃ってくる。
ただゴーストを倒した結果、対処すべき目標が大分減った。
拳技が魔法を全部打ち消した瞬間、カリーナちゃんは拳を今まで以上に大きく後ろへ持っていった。
次の瞬間、今までよりずっと速く長いストロークで、そして拳を握った状態で大きく前へと繰り出す。
ブワン! 今まで無かった効果音。
レイスの胴にあたる部分に大穴が開く。
少しだけ間を置いた後、レイスの白い姿が消え失せた。
カリーナちゃんは私の方を振り返る。
「こんな感じです。最初は
レイスだけになったところで
レイスは
なるほど。
「でも今のを真似するには連射可能な剣技を練習しないと無理だよね。そういう技は何処で調べればわかるの? 図書館とかの本で調べるとか?」
「冒険者ギルドで相談するのが一番簡単で手っ取り早いです。技の教本を扱っていますしステータスにあわせて使用可能な技を教えてくれますから。
技を覚える為の講習もやっています。講習は3時間で2,000
何だろう。
「何か問題があるの?」
「私は冒険者ギルド、あまり得意じゃないです。あそこは好きではないタイプの人が多いですから」
どういう事だろう。
「何で?」
「歩きながら話しましょうか」
長い話になるという事だろうか。
それとも単に立ち止まって話す程の内容ではないという事だろうか。
いずれにせよ妥当な提案だろう。
「わかった」
「それと薬剤の効果はこれで試したという事で、此処から帰る形でいいですか?
この先はスケルトンナイトやスケルトンソルジャー、レイスにリッチーといった更に強い魔物が出るので、もう少し準備してからの方がいいと思いますから」
強い魔物を倒すという事に挑戦なんて趣味は無い。
むしろ安全第一でのんびり暮らす方がいい。
だから私は頷く。
「うん、ラッキーもいるからあまり無理しない方がいいしね」
「わかりました。それでは戻りましょう」
階段を上がり、来た道を戻る。
「もうラッキーちゃんは自由にしていいと思います。来る途中にひととおり魔物は退治したと思いますから。この程度の時間なら
「わかった。それじゃラッキー、いいよ」
ラッキー君、いいの!? という表情で私の方を見る。
「いいよ、ただ目の届く範囲でね」
ラッキー君はにこっと笑顔になって、そしていきなりダッシュ。
勢い余ってぐるぐる回っている。
「それじゃさっきの続き、私が冒険者ギルドを苦手としている理由です」
カリーナちゃんはそう言って歩きはじめた。
私は彼女の横をついていく。
「冒険者ギルド、特にケルキラの冒険者ギルドには攻略ギルドのスカウトが多いんです。初心者でも没入型の筐体使用者ならかなりの戦力になりますから。
ただこのスカウトの人達、あとは攻略メインの人達の中には人間性に問題がある人が多いんです。
現実社会でもそういった駄目駄目人間は結構いるな。
叔母夫婦だの怪しいNPOだのに居場所を奪われた身としては、ついそう思ってしまう。
勿論理性的な人、話が通じる人の方がきっと多いのだろう。
ただ人間としての社会性とか思考回路にバグがある人なんてのは一定割合で必ず存在する。
そして良識だとか法律だとかを守る人よりそんな事を気にしない人の方が出来る事は多い。
そして法の保護だの何だのは概して侵害のあった後からの事なのだ。
しかも色々な権利との関係で充分とはいいがたい。
結果、悪貨は良貨を駆逐する訳だ。
「なるほど、此処も同じって事だね。駄目駄目な奴のおかげで快適な場所が少なくなるの」
これはかなりオブラートに包んだ表現だ。
一定以上の馬鹿は抹殺していい法案が本気で欲しい、そう何度も思った私としては。
「
「まあ場所にもよるとは思うけれどね」
とりあえずそう返答してそして気付く。
今のカリーナちゃんの言葉に、注意した方がいい何かがあるような気がしたなと。
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