第8章 此処にいること
第43話 ものによっては高価です
「ところであの先へ進むとどういう感じなの?」
話の接ぎ穂に聞いてみた。
「また建物の外へ出て、海の沖側にある『海の塔』か、そこの大きな盛り上がった『要塞本館』かどちらかへ進む形になります。
どちらも明るい所はスケルトン系、暗い室内はそれに加えてゴースト系が出ます。
最後まで進むと旧要塞のボス魔物がいます。海の塔の大広間にはスケルトンジェネラル、本館の地下2階がリッチーです。
どちらもレベル40以上の冒険者が3人以上いるパーティでないと、倒すのは難しいです」
私のレベルではまだまだ無理なようだ。
あ、でもレベル40以上で3人なら。
「カリーナは倒した事があるんだ」
「ええ。攻略パーティにいた頃ですけれど」
なるほど。
ならいずれ、レベルが上がったら挑戦してもいいかもしれない。
でもふと思う。
倒して何かいい事あるのだろうか。
「何かボスを倒せばいい物が貰えるとかあるの?」
「そういう意味での利益は特に無いですね。レベル上げなら大物よりそこそこの魔物を数多く倒していく方が効率がいいですし何より安全です。貰える褒賞金についても同様です。
ただ中ボス以上は倒した際、名前が残るんです。
『ムーサー暦何年何月何日、○○パーティの剣士誰それと魔導士誰それ、治療術士誰それによって○時間○分の戦闘の末に倒された』
そんな感じで
それが重要だ、そういう人もいるんです。私も一時はそう思っていました」
つまり今は違うという事か。
何かそういった記載で上がるステータスみたいなものがあるのかな。
そんな事を思いつつ、私は歩いて行く。
カリーナちゃんの言った通り魔物が出ないまま、橋へと繋がる門の前まで到着。
「それでは今日は帰りましょうか」
確かに一仕事したという感じはする。
薬剤の効果がわかったしゴーストやレイスの倒し方も学んだし。
採取や討伐はこれで終わりにしていいだろう。
でも、それなら。
「ならラッキーとまっすぐ帰ってて。ついでだからギルドや役所に寄って、買い物して帰るから」
カリーナちゃんの感じから、他人が大勢いる市場や役場等へは行きたくないだろう。
でも換金や買物はしておきたい。
そう思って提案してみたのだけれど。
「なら私も一緒に行きます。久しぶりですので市場も見てみたいですから。ミヤさんとラッキーちゃんがいれば大丈夫です」
ならたまには一緒に買物なんてのもいいかなと思う。
ラッキー君も『行くぞ』という顔をしているし。
「なら行こうか。魔石は場所を取らないから明日に回すとして、錬金術ギルドで薬草を換金して、それから市場でいい?」
「それで御願いします。錬金術ギルドにカレンは今、いないんですよね」
「多分。AIならいると思うけれど」
「なら表のお店の方で換金しましょう。ついでに錬金術用の材料も少し見ておきたいですから」
カレンさんに会いたくないのかな、ふとそう思う。
それともカレンさんのAIに会いたくないのだろうか。
わからないけれど、とりあえずそれでいいだろう。
「わかった」
門を通って、橋を渡って、街壁の中へ入ってと歩く事10分弱。
派手で怪しいポスターやポップが並ぶ店に到着。
この
例外は高級料理店と宿くらいのものだ。
だからギルドにラッキー君を連れて入っても問題無い。
「それじゃ薬草を換金してくるね」
「わかりました」
店内にある『買い取りカウンター』の方へ。
いつも通り金額の一部は振り込み、残りは現金で受け取って、そしてカリーナちゃんとラッキー君の元へ。
カリーナちゃん達は錬金術材料のコーナーにいた。
劣化停止魔術がかけられた棚に薬草や薬石、薬砂その他薬品が並んでいる。
「何かあった方がいい材料、ある?」
「上級以上の試験では、スケリア島では採取が難しい素材も必要となってきます。そういった素材が幾らになるか、今の売価を確認していたんです」
私の為だったのか。
何か申し訳ない。
「ありがとう。でもまだ中級も合格していないし」
「中級なら問題無い筈です。明日にでも試験を受けてくればいいと思います。
ただ上級以上の素材となると流石に高価です。どうしてもスケリア島で採れないものだけ買って、あとはレベルを上げながら採取した方がいい気がします」
どれどれ、そう思って棚を見る。
『
『
……確かにこれは厳しい。
「ごめん。無理して高い級をとらなくても大丈夫だから」
「でも
いや、いいというより楽なんでしょうか。目標を達成しようとしている間は、少なくとも何かしているという気分になれますから」
何かしているという気分になれる、か。
カリーナちゃんの年齢らしくない言葉だ。
重症で没入治療槽に浸かりっぱなしという環境からそういう事を考えるようになったのだろうか。
私はカリーナちゃんが現実でどういう状態なのか、一切聞いてはいない。
でも今までの言動から大体想像はついている。
そんなカリーナちゃんの目からはどんな世界が見えているのだろう。
そう思った時だった。
「あっ、はぐれ
私のすぐ後ろからそんな声がした。
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