第5章 そして、もう1人追加
第26話 外の世界では週末終了
朝食後、ラッキー君と一緒に南西のコソンキョーリの森へ行って薬草を採りつつ魔物・魔獣討伐。
コソンキョーリの森の2時間程度で入れる場所にはそこまで怖い敵は出ない。
スライムの他にはゴブリンや角兎が出る程度。
ゴブリンはスケルトンよりは強い。
それでもたいした敵ではない。
剣技であっさり倒せるし、ラッキー君だけでも2匹なら余裕で勝てる程度だ。
角兎も近づいてくれば音でわかる。
動きが速いのが少々厄介だけれど、こちらに向かって飛びかかってきたところを狙って斧を出せば一発。
落ち着いて対処すれば全く問題ない。
他には魔鹿や魔猪なんてのが出る事もあるらしい。
私はまだ出会っていないけれど。
でもまあカレンさんが『ミヤちゃんなら魔鹿でも魔猪でも問題ないでしょ』と言っているので大丈夫だろうと思っている。
採取出来る薬草は治覚草と育療草が中心。
その気になれば2時間で合計10kgは固い。
もっと珍しい薬草も採れるらしいけれど、今のところ見つけた事はない。
私が気付かないだけかもしれないけれど。
3時間くらい採取と討伐をしたら、一度家へ戻ってきて昼食。
食べ終わったら今度はラッキー君を家に置いて旧要塞へ。
ここでスケルトンを倒して魔魂草を採取。
あとは役場で魔物や魔獣の褒賞金を貰い、錬金術ギルドで薬草を換金し、カレンさんと雑談。
帰りに市場によってテイクアウトの食べ物やデリ系の出来上がっているおかず、あとパン等を買って帰宅。
帰ったらラッキー君が出迎えてくれるので、まだ明るかったら庭でフリスビーやボール投げをして遊ぶ。
暗くなったら夕食を食べて風呂へ入って就寝。
これがラッキー君と住み始めて以来の私の日課だ。
まだ雨の日はないけれど、降ったら休みにするつもり。
濡れるのが嫌だし、魔物も面倒なのが出るらしいから。
おわかりと思うが私、錬金術師のくせに調合だの錬金術だのを全然やっていない。
これは需要と供給の関係だ。
調合メインの錬金術師はNPCメインだけれどそこそこいる。
初級錬金術師が出来る程度の事はこの辺の皆さんも当然可能だ。
ただ魔物がいる場所へ行って薬草を採取してくる人ってあまりいないらしい。
討伐メインの冒険者は薬草には詳しくないし、薬草に詳しい錬金術師は魔物のいる場所へ行かないから。
癒療草と聖療草、魔療草なら街中のチャペル付近でも生えている。
街の海岸沿いには治害草もある。
だからこの辺りの薬草は必要量を概ね確保可能だ。
街の子供が小遣い稼ぎで採取してきたりするし、それでも足りなければ錬金術師が自分で採ってくればいいから。
しかし魔魂草、治覚草、育療草といったある程度魔物がいる場所に生えている薬草は概して不足気味。
今まではカレンさんが仕事の合間に旧要塞や近くの森へ行ったりして確保していたそうだ。
なので今は私がその代わりに採取担当を引き受けた形となる。
私は確かに錬金術師だ。
でも錬金術に執着とかこだわりとかがある訳では無い。
ラッキー君と一緒にのんびり暮らせればそれで充分。
そんな訳でこういう生活に落ち着いた。
ところで外の時間的では私、そろそろ眠くなっている頃だ。
もうすぐ此処へ来てから2週間、つまり外の世界では14時間経っている。
外の時間はそろそろ午前1時。
しかし特に眠気を感じるなんて事はない。
DGJ-2411B12のマニュアルにはこう書いてあった。
『睡眠等については、使用者が眠気を感じた際に取っていただければ問題ありません。オンラインゲーム等でゲーム内に睡眠時間が存在する場合は、その時間だけで睡眠が採れている場合があります』
だから眠くなった時に考えればいいだろう。
今はそう思っている。
◇◇◇
翌日夕方。
「そろそろ私も休日終わり。しばらくはAI代行になるわ。あとこの中の時間で5ヶ月くらいは此処に戻ってこれる機会も少なくなると思うの」
いつものように薬草換金で立ち寄った錬金術ギルドでカレンさんにそう言われた。
視界に日本での日時を表示させると、月曜日の午前2時過ぎ。
確かに社会人ならお仕事に備えて寝なければならない時間だ。
「わかりました。確かに社会人ならそろそろ限界ですよね」
「そうなのよぉ。そこで、もしミヤちゃんが私より長くこの世界にいられるなら、御願いしたい事があるんだけれどぉ」
何だろう。
カレンさんにはお世話になっているし、出来る事なら引き受けてもいいとは思うけれど。
「何でしょうか?」
「私が以前いたパーティの仲間の子が、南にあるメリティイースの森の中に住んでいるの。ここから20kmちょいの場所なんだけれどね。その子に手紙を届けてくれないかなあというのが御願いの内容。
これはゲームのイベントとかじゃなくて、あくまで私の個人的な御願い。だから行く機会がなければ行かなくてもいいわ」
手紙を渡す?
でもそれならわざわざ行かなくてもいい気がする。
「知り合いならグループチャットやメールを使えばすぐに連絡できますよね」
それくらいはゲーム初心者の私でも知っている。
「そうなんだけれどね。あの子に対してはそういった連絡手段を使いたくないのよぉ。ゲームでは無くこの世界としての方法、つまり直接会うか、手紙という形で連絡したいわけぇ」
それなら冒険者に依頼するのが確実だろう。
「ただ冒険者に依頼するというのは無しなのよぉ。あの子、人見知りするし、ある程度薬草が判別出来る子じゃないとあの子の家に辿り着けないのよね」
冒険者に頼まない理由はわかった。
しかし薬草が判別できないと辿り着けないというのがわからない。
「何か薬草が目印になっているんですか」
「そーゆーこと。不自然に生えている薬草を採取しないで辿って行けば家まで辿り着けるようになっているの。
ただ薬草をそうやって生やせるという事は、それなりの魔物がいるという事でしょ。だから調合が中心で戦闘経験が少ない普通の錬金術師には御願いしにくい
そこで
なるほど理解した。
ただ一応、確認はしておこう。
「魔物の強さは私で大丈夫ですか?」
「問題は無いわよ。出る魔物や魔獣ははミヤちゃんがいつも行っているコソンキョーリと同じ程度。だからラッキーちゃんと2人なら全然問題無いわ。
あと彼女は錬金術を極めているの。だから行けば勉強になると思うわよぉ」
なるほど。
でももし行くとしたら、聞いておきたい事がある。
「平日に行っても大丈夫ですか? AIによる対応でも大丈夫なら問題ないですけれど」
「あの子の場合はいつ行っても問題ないわ。あ、もちろんNPCじゃなくてプレイヤーよ。その辺はちょっと特殊事情があってね。ただそれについてはあの子に直接聞かないで」
「わかりました」
私も自分の事情を聞かれたくない。
だからお互い様だ。
ゲーム外の事を聞かない、というのもマナーみたいなものなのかもしれないな。
そんな事をふと思う。
「それじゃこの封筒の中に手紙と地図、あと参考事項のメモが入っているわ。行けたらでいいからお願いね」
「わかりました」
私はカレンさんから角4くらいの大きさの封筒を受け取った。
「それじゃ、私がAI代行の間も錬金術ギルドをよろしくぅ♡」
「ええ、もちろん」
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