第4話 称号『ノロイグアナハンター』
「すごいね。普通はこんなに簡単にノロイグアナを見つけられないんだよ」
シルラにそう褒められても微妙に嬉しくない。
確かにノロイグアナは7匹倒した。
体感として1時間も経っていないから、確かにこれはいいペースなのだろう。
しかしデミスライムはまだ未発見。
小さいからか、どうにも見つけられない。
「でも私、ノロイグアナしか見つけてないですよね」
「ノロイグアナの方が見つけにくいんだよ。地面と同化しているからね。すぐ近くにいても見つけられない人だって結構いるんだから。
普通はそれで諦めて、草が茂っているところを探ってデミスライムを見つけるんだけれどね。ただ見るだけでノロイグアナを見つけられるのって、何か才能があるんじゃないかな」
才能か。
パスポートに書いてあるだろうか。
収納から出して見てみるが、それらしい記載は……
なんと称号欄に『ノロイグアナハンター』との記載があった。
「この『ノロイグアナハンター』という称号がその才能なんですか?」
「その称号はチュートリアル中に5匹以上ノロイグアナを見つけた人に、パルキア様から贈られた称号だよ。確かに称号をうけると魔獣や魔物を見つけやすくなるけれど、称号を貰うまでは条件は同じ筈だよ。
チュートリアルは最大2時間だけれど、それでも称号を貰える人は10人に1人いるかいないか。まだ1時間も経っていないのに7匹倒すなんてめったにいないよ」
他にそれっぽい才能を貰えそうな項目は見当たらない。
ならステータスの数値か何かが関係しているのだろうか。
だったとしたらお手上げだ。
この辺の数値の読み方、今ひとつわからないから。
さて、それはそれとして、デミスライムの探し方がわかった。
草が茂っているところを探ればいいらしい。
確かにこの真っ平らな平原で変化があるのは草が生えている部分だけ。
見つからなければ調べたくなるのは道理だ。
でもその前に、また地面に違和感を覚える場所があった。
よく見ると、やはりノロイグアナ。
お金の為にも倒しておくべきだろう。
いいかげん慣れた手順でさっくり倒しておく。
『ノロイグアナを倒した。経験値5を獲得。
ミヤ・アカワはレベルが上がった! HPが10、MPが……』
さっきまでと違う文字列が表示された。
「おめでとう! レベルアップしたね。これで討伐がもっと楽にできるようになるよ」
これがいわゆるレベルアップという奴か。
パスポートを開いて確認してみる。
確かにレベル2になっていた。
他に私でもわかる部分では、収納可能重量が1割ちょい増えて50kgになっている。
あとHPとかMPとかが増えているけれど、それ以上はよくわからない。
とりあえずノロイグアナの死体を収納する。
収納の空きは大分減ってきた。
今のレベルアップのおかげで少し空きが増えたけれど、それでもあと2~3匹が限度。
「結構狩ったね。時間的にはまだ余裕があるけれど、一度街へ戻ってお金に換えておく?」
確かにその方がいいだろう。
今いる位置は平原の中程、街への入口から1kmくらい入った場所。
帰る際にもノロイグアナを見つける可能性があるし。
出来ればデミスライムも倒しておきたかったけれど、それは後でも出来る。
それにノロイグアナの方が褒賞金が高いのだ。
だから贅沢は言うまい。
「わかりました。そうします」
「それじゃ街に戻るよ。ただ戻る際も注意して、周囲に魔物や魔獣がいないかを確認してね。ここに出るデミスライムはよほど近づかなければ攻撃してこないし、ノロイグアナも頭のすぐ近くに行かなければ大丈夫だけれど」
それでは注意しながら今まで来た方へ戻るとしよう。
帰る方向をじっと見る。
回数をこなしたおかげでノロイグアナの見つけ方はだいたいわかった。
確かに土と同化していて色では区別がつかない。
下手すれば起伏というか、単なる平らな地面くらいに見えてしまう。
しかしノロイグアナが動くと、その部分に何となく違和感を覚えるのだ。
スマホの画面の一部が一瞬ちらついたような感じで。
帰る方向を3秒程凝視する。
3箇所ほど違和感がある場所があった。
今後の為にもこれは討伐しておこう。
「せっかくですから右前にいるノロイグアナを倒します」
「よく見つけられるね。この方向だと影で見つける事も難しいと思うけれど」
どうやら私にはノロイグアナハンターとしての才能があるようだ。
現実では全く役に立たないだろうけれど、この世界なら割と便利な気がする。
何せもう2日分相当の宿代と食費を稼げているから。
まあノロイグアナは最弱級の魔獣。
だからこの才能もこの先で出会う魔物や魔獣には役に立たないだろう。
でもそれなら、此処でのんびりノロイグアナハンターとして生きていくのもいい。
錬金術師という職業とは関係ないけれど、これはこれで結構楽しいし。
元々私はあまり身体を動かす方面に才能は無かった。
才能が無いというか、マイナスの才能があるというか。
だからこうやってイグアナ狩りを上手く出来るのって、新鮮で、そして何か楽しい。
魔獣だしゲーム世界の事だから、生命を絶ったという罪悪感を持たなくていいし。
こうして人はゲームにはまっていくのだろうか。
長居するつもりだから、楽しくやれれば万々歳なのだけれど。
そんな事を思いつつ、まずは30mくらい先の獲物をめがけ、足音をたてないよう注意して近づいていく……
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※ ミヤさんが人よりイグアナを見つける事が上手いのは、才能でも何でもなく、それなりの理由があったりします。
何故そうなのか、実は既に理由が何処かに書いてあったりしますけれど……ミヤさん自身が気付くのはもう少し先の話となる予定です。
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