第48話 世界の広さ
「そして
もうミヤさんはわかりますよね。
私は頷く。
そこまでは理解出来ていると思うから。
しかしこの話はどういう所に着地するのだろう。
まだ見えないままだ。
「ただの
それはわかる。
だから私は頷く。
「そして私達にはとって死は普通の人より近い存在です。
でも何かを残すなんて事はそう簡単には出来ません。
もちろん
ただそんな駄目な私達でも名前を残せて、なおかつある程度の達成感をおぼえることが可能な場所があります。
ゲーム中での攻略業績です。パイアキアンオンラインの場合は中ボス以上の敵を倒した
そう言えばと私は思い出す。
旧要塞でそんな事を聞いたなと。
『中ボス以上は倒した際、名前が残るんです。
『ムーサー暦何年何月何日、○○パーティの剣士誰それと魔導士誰それ、治療術士誰それによって○時間○分の戦闘の末に倒された』
そんな感じで
それが重要だ、そういう人もいるんです。私も一時はそう思っていました』
あれはそういう意味だった訳なのか。
今頃になってやっと理解した。
「そうやって他に何もせず、ただゲームの攻略に勤しむ。レベルが高くなるとレベルが低いプレイヤーを見下すようになる。レベルの高さと攻略実績だけが価値だというような感覚になる。
更には自分達は
それがさっきの2人であり、かつての私です」
なるほど、そう話が繋がる訳か。
概ね状況はわかったし、私としては充分話を聞いたと思っている。
でもこのまま終わらせたらカリーナちゃんが不十分だと感じるかもしれない。
だからあえて質問をしてみる。
「さっきの2人は攻略時代の知り合い?」
「ええ。
パーティは違います。しかし最先端の攻略場所は大体決まっています。だから攻略専門パーティなら大体行く場所は同じです。結果、よく顔をあわせる訳です」
ふと2人の言動を思い出す。
「はぐれ
「現在の攻略最前線はクレーテー島の古代遺跡あたりなんです。攻略に当たるべき
でもそれは少しおかしい気がする。
「ならなんであの2人は攻略最前線ではなく此処にいたの?」
「無茶な攻略をやって死んだんだと思います。このゲームに生き返りはありません。ですからまた新たな
なるほど。
これでひととおり話は繋がった。
ただ気になる事は残っている。
何故カリーナちゃんが私にこの話をしたのかだ。
そこがまだ語られていない。
「私もかつて似たような考えでした。私の場合は此処で一応大学4年まで終わらせています。それでも年齢的に就職は無理ですし、かといって続けたい研究なんてのもない。
だから結局此処でイベント最前線の攻略なんて事をしていたんです。
ここでカリーナちゃん自身の話になるようだ。
となると次に繋げるにはこういう質問になるのだろうか。
「そのパーティをやめたのは何で?」
「パーティのリーダーを自認していた人に問題があって。もうついていけないと感じたからです。
パーティを抜けた時は大分揉めました。その時のリーダーの言い分が何と言うか論理が無茶苦茶で、ああこんな馬鹿と同類だったんだと思うと一気に熱が冷めましたね。
それでしばらくは攻略をやめてふらふらしていたんです。それでも此処で攻略以外していなかったので何をすればいいかわからない。
だから結局もう一度攻略でもしよう。そう思って冒険者ギルドの掲示板に貼ってあるパーティメンバー募集を見に行ったんです。
その中で一番
カリーナちゃんはそこで一呼吸おいて、そして続ける。
「私と一緒にいるとああいうのと絡まれる事が多くなるかもしれないです。
それがいやでせめて顔が隠れるフードをかぶっているんです。ただそれでも動きのクロックで没入型筐体を使っている事は気付かれる。そうしたらIDを確認して私だとわかってしまう。
ひょっとしたらこれからもこういう事があるかもしれません。ミヤさんにご迷惑をおかけしてしまって、本当に申し訳ないです」
その『申しわけない』が此処までの理由だったのだろうか。
なら私が言うべき事は簡単だ。
「あの2人の件は気にしなくていいよ。最悪何かあったとしても今日と同じように運営を呼べばそれまでだから。
此処は
「
カリーナちゃん、その辺ぴんとこなかったようだ。
なら解説しておこう。
「
それに来ても此処みたいにすぱっと解決なんて事は望めない。此処みたいに言動が全て記録に残っていて証拠になるなんて事はないから。
それに本当に頭のおかしい人の場合、人権だの何だのでうやむやになる事が多いし」
「
カリーナちゃん、少し予想外の反応だ。
私は『あの2人の事なんて大した事はない』つもりで言った台詞だった。
でもカリーナちゃんには『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます