スキル取得
名前 佐島 靖
Lv 1
職業 なし
スキル 『鑑定Lv1』
固有スキル『反復試行』
「やっぱあるよなぁ」
子供の頃の習慣か、それとも設定したスヌーズが鳴らなかったからか。いつもの起床時間より二時間遅い午前6時。
両親が未だ眠りに就いている中、試しにジーッと自分の掌を見つめてみるとやはり子供の小さい手で、やはりゲームにあるステータスウィンドウのよなものが映っている。
昨晩は眠かったのもあってスルーしたが、これが見えるのは恐らくスキル欄にある『鑑定』の影響なのだろう。
Lv1はまぁ、Lv1ってことなのだろう。
他に気になることと言えば、固有スキルの『反復試行』って奴だが……。
これに関しては、前の人生での俺がキャベツの千切りやテキストを打ち込み続けるみたいな単純な作業を反復して繰り返すようなことが得意だった。
だから得たのか、前世でも持っていたけど見えなかっただけなのかは解らないが、なんとなくしっくりくるスキルだと思った。
こうしてスキルに対して考察する自分は、まだ現実のものとは思えない。
それでも、俺が六歳に戻ってスキルが見えるようになったのはきっとリアルだ。
いや、俺は元々六歳で二十六歳まで淡々とした人生を送って死んだあれがある種予知夢みたいなものだった説もあるし、戻ったなんて表現が正しいのかは解らないが。
なんであれ、この状態が夢だとしても、俺が遡行したのだとしても結果的には同じようなことだろう。
鶏が先か卵が先かの水掛け論にしかならない。
そもそも二十六歳の俺は恋人も居なかったし、それに過労で倒れるような人生だ。途中で、何度「人生をやり直せたら」と後悔したくらいだし、未練もない。
寧ろこれは、神様が俺に与えてくれたやり直しのチャンスだとさえ思えてくる。
それにまぁ、起きてしまったことは深く考えて状況が変わるでもない。
なにより俺はあんまり深く考え込むのは性に合わないのだ。
だから、考え方を変えてみる。
例えばそう。今日は土曜日だ。2020年の12月16日なら普通に水曜日なので会社に行かないと行けないが、二十年前は土曜日なのだ。
本来会社に行かなければならない日が休日になったというのはラッキーだ。
いや、まぁ六歳に戻ったから曜日が何であれ会社に行く必要はないのだが。
それでも若返ったのが平日ではなく休日って言うのは、六歳の時幼稚園に通っていたわけだし、俺としてはかなり都合が良かった。
流石に戻っていきなり幼稚園に行くのは色々と辛い。
それに、この唐突に出現したステータスウィンドウについても色々と気になっているのだ。
と言うわけで、
「お母さん、ちょっとお外で遊んでくるね!」
「え? まだ、朝でしょ!? ……朝ご飯までには帰ってきなさいよ」
「解った! 行ってきます!!!」
まぁ、このスキルやら何やらについて色々調べてみようと思う。
◇
『川』『木』『木』『アスファルト』『芝生』『木』『木』『川』『橋』
「ほっほっほっほっ」
俺は今、『鑑定』スキルが発動するまで色んなものをよく見ながら走っていた。
景色が流れていく。鑑定を調べるだけなら、家の中でも出来る。例えば冷蔵庫の中に入っている食品を一個一個見つめていった方が効率も良いかもしれない。
それでも俺が走って観察するのは、夢の中か前の人生かで中学三年間陸上部に入っていたくらいには、走るのが好きだからだ。
持久走は良い。走る度に呼気が上がり、心臓がバクバク鳴る。その度に頭の中が真っ白になっていく。
嫌なことも辛いことも哀しいことも、真っ白になっていく。
走っているときは走るのに精一杯でなにも考えなくて良い。走ることだけに熱中していれば良い。
俺は黙々と、ただ黙々と何かに集中する時間が嫌いじゃなかった。
『川』『ヤマモモ』『ヤマモモ』『アスファルト』『芝生』『イヌマキ』
走っていると、木の名前にバリエーションが出てきた。
確かにこの緑地公園は六月くらいになるとヤマモモの実がやたらと落ちていたし、イヌマキと表示された木は確かにイヌマキだ。
川は小さすぎてそもそも名前がないのかもしれない。
まぁ、所詮は緑地公園の運動スペースである。
ただ、木の名前がわかったってことはもしかして……
名前 佐島 靖 ▼
Lv 1
職業 なし
スキル 『鑑定 Lv2』『敏捷補正Lv3』『体力補正Lv3』
固有スキル『反復試行』
「レベルが上がってる!! それに、スキルも増えてる!!」
ランニング中のお兄さんが俺を微笑ましい目で見てくる。……いや、まぁ。突然レベルアップとか言い出す子供居たよね。
自分が若返ったことをしみじみと思い出しながら、軽くスキルを観察する。
鑑定Lv2は、まぁ今上がったとして『敏捷補正』『体力補正』って?
恐らく走ったことで手に入れたのかもしれないけど、いきなりLv3なんて!! ……もしかしてレベルが高いのは、俺が前の人生で陸上部だったことが関係してる?
確かに、前世陸上部だった俺は走るときのフォームや足の運び、呼吸が陸上部じゃなかった人より綺麗な自信がある。
効率的に、なるべく体力を使わずなるべく速く走る訓練をしてきた成果が、Lv3と言う高めのレベルとしてのスキル取得に繋がったんじゃないか、と俺は考察した。
そこで解ることは二つ。
まず一つ目は、前世で何かしら努力したものはスキルとして、経験として、記憶として、この人生でも引き継がれていると言うこと。
そして二つ目は、
「頑張れば、スキルのレベルとして数字が出る!!!!!」
そう。頑張ったら頑張った分だけ報われるかは解んないけど、少なくともスキルのレベルとして成果が出るのだ。
自分の努力の成果が数字として表れる。
それほどまでにモチベーションが上がることがあるだろうか?
これもまたスキルの補正なのか、ゲームみたいにレベルが上がって、テンションも上がってアドレナリンがドバドバ分泌されているからなのかは解らないが。
先ほどまでよりも軽く、素早い足取りで。
俺は、酸欠でぶっ倒れるまで『鑑定』しながら、公園を走った。
勿論朝食には間に合わなかったし。心配して俺を探しに来た親父には頭をひっぱたかれた。
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