第二の厄災
俺が思うに、前の人生で生きた世界とこの世界は限りなく似ていて、微妙に違う。
変わったことと言えば三年前の中越のダンジョンと、生まれ変わった瞬間に見えた鑑定スキル。それと、前の人生の記憶がある俺といちかちゃん。
この世界は間違いなく、パラレルワールドである。
しかし、ダンジョンの出現に関してもスキルに関しても生返りに関しても、前の人生でなかった確証はない。俺が知らなかっただけかもしれない。
そしてダンジョンに関しては、俺が鍛えすぎて。県一つ丸ごと飲み込むほどの魔力量をアイテムボックスとかにしまうことなくダダ漏れで展開していた。
このことと関係があるのかないのか解らない。
しかし、2001年の9.11テロや2004年の中越地震のように大まかな歴史はそんなに変わっていない。
ただ、生まれ変わった日以降で年号日付単位で覚えている主な事件があんまりないので、参考データがそんなにないのが遺憾であるが。
テレビの報道や中学校の合格祝いも兼ねて買って貰ったパソコンで軽く調べてみた限りでは中越地震以外でダンジョンなどのイレギュラーがあった様子はない。
だからこそ、俺は自らの魔力の影響が多少なりともあるんじゃないか、と考えているのだが……。
まぁ、実はその辺りの考察は割とどうでも良くて。
「――今年の夏休み前くらいにまたダンジョンが発生する可能性が高いから、一緒に攻略しない?」
「なんで?」
「2007年の夏休み前くらいに、新潟で地震が起った記憶がある」
その時は、お爺ちゃんの家に行っていたわけじゃないけど「また地震!? 大変だね」みたいな会話をした記憶があるのだ。
参考データが前回の中越地震の時の一回だから、その地震のタイミングでダンジョンが出現するかは解らないけど。
ダンジョンの出現があの一回だけだとは思えないのだ。
「それに……ダンジョンを攻略すればレベルが上がるし。報酬としてスキルレベルが上がったり、ステータスの元数値が上がったりするし」
いちかちゃんにはある程度強くなって貰いたいのだ。
昔は、せめて俺が護りにいけるまで死なないで欲しいって意味が強かったけど。今はどちらかと言えば、俺のステータスで抱きしめても壊れないくらい丈夫になってほしいと言う思いが強かった。
ハグの時とか、壊れそうで怖くて抱きしめ返すことが出来ないのだ。
それは以前、いちかちゃんに話したこともある。
「解った。それで、中越地震って新潟でしょ? いつ起こるの? 休日ならまた靖くんのおじいちゃんちに泊まりたいけど」
「そ、それは……願ってもないけど」
うん。いちかちゃんが泊まりに来るのは、照れとか恥ずかしさもあるけど、それ以上にパジャマ姿見れたり、湯上がり姿見れたり、夜こそこそとおしゃべりできたり、役得が結構多いのだ。
以前泊まりに来た日のことを思い出して、少し顔が熱くなるのを自覚する。
「多分平日だったと思う」
「じゃあ、どうやって行くの?」
「それはね……」
◇
「ちょ、ちょちょちょままま待って!?」
俺の家から新潟にある震源地まで、走って一分掛らない(敏捷数値5億超え)
7月16日月曜日の、昼頃。昼休み中にいちかちゃんを連れ去るようにこっそりと学校を抜け出して、震源地を調べた俺は、いちかちゃんをお姫様抱っこして。震源地までゆっくりと走っていた。
音速なんてとっくに優に越えられるから、ソニックブームで轟音と衝撃波を起こさないように魔力で衝撃を緩和しつつ、音漏れを防ぎつつ。
抱えているいちかちゃんにも、一切の負担が掛らないように魔力で高速移動に伴う負荷や風圧も全て魔力で防いだ。
2500億を超える魔力だ。不可能はない。
「と言うわけで、到着」
「はぁ、はぁ。死ぬかと思った!!」
お姫様抱っこされたまま、涙目で詰め寄ってくるいちかちゃんは、ジェットコースターとか苦手な人なのかもしれない。来るときも、ずっと目を瞑っていた気がする。
怖い思いをさせた俺は、ごめんごめんと軽く謝った。
「学校も、せめて仮病とか使って早退くらい伝えれば良かったのに」
恨みがましい目をするいちかちゃんも、相変わらずかわいいと思った。
そんなこんなで和みながらも、俺は震源地の周辺を見渡していた。
「ねぇ、靖くん。本当にここにダンジョンがあるの?」
「さぁ?」
「だってここ、海のど真ん中じゃん!!」
いちかちゃんは落っこちないように、俺の首回りに必死にしがみついている。
「いや、だって中越『沖』地震だしなぁ……」
一応海の中でも、魔力を駆使すれば攻略出来ないことはないが。しかし、海の中を見てもそれらしきものは見当たらない。
海を見るために魔力の膜を張って、海に潜ったらぽかぽかされた。
俺は陸の方へ軽く走って、一番地震の被害を受けたっぽい場所を軽く見渡したり、散策したりした。
前回は特に何もしなかったけど今日はいちかちゃんの前だったので、人の気配を探って瓦礫の下に埋もれていたら、魔力でどかすくらいの偽善行為はした。
この地震大国で震度六で崩れる家には住みたくないなぁとは思った。
そんなこんなで、不自然な気配を感知する。
そう、見つけたのだ。三年前以来のダンジョンを。
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