初めての恋人
「ほんとそれ! マジで前世のうちから告白しとけば良かった!!」
いちかちゃんに言われて、最初に抱いた俺の感情は圧倒的な『共感』だった。
だってそうだろう。仮に今回のように6歳に戻れるにしても、前の人生の内にいちかちゃんと恋人になっていれば、もう一回恋人になれたし。共有出来る思い出も沢山増えていただろう。
そうじゃなくっても、人生やり直して。いちかちゃんとであってから、どれだけ「好き」の一言を飲み込んできたことか!!
しかし、そんな後悔や不満すらもいちかちゃんと恋人になれた喜びの前には些細な問題。そんなのこれから時間をかけてじっくりと取り戻せば良い。
何せ、やり直した人生は今は未だ12歳。時間はいくらでもあるのだ。
不安はないわけじゃない。
俺に恋人なんていたことがないからどうすれば良いか解んないし、俺みたいな奴にいちかちゃんをちゃんと幸せにさせてあげることが出来るのかも解らない。
それだけじゃない。二年前、突如出現したダンジョンのことも気がかりである。
それに「一緒に受験しよう」なんて誘っておいて、万が一にも落ちたら格好がつかない。
そんなこんなで六年生は、自身の筋トレよりも受験勉強といちかちゃんの強化に多くの時間を割いた。
受験勉強はつるかめ算をうっかり連立方程式で解かないようにしたり、漢字のとめはねはらいなどの凡ミスを減らしたりする方向でやっていった。
流石に人生二周目だし、一度受かった学校なので多分大丈夫そうだが。
いちかちゃんも、流石に二周目と言うことでこちらは余裕そうだった。
そしてもう一つの――次にダンジョンが出てモンスターが現れたときに、いちかちゃんが万に一つも死なないための強化だ。
勿論、恋人になった以上いちかちゃんのことは死んでも護るつもりだが、しかし、ダンジョンの出現自体が完全なイレギュラーだ。
片時も離れないなんてことは出来ないし、万が一というのもある。
それに、新しく手に入れた『スキル伝授』の力を試したいというのもあった。
伝授の際にはボディタッチが必須なものも多く、なんなら必要がなくても触ったり出来るので、下心がなかったと言えば嘘になるが……。
こ、恋人になった訳だしギリセクハラじゃないってことで許して欲しい。
……この強化では、一番最初に特殊スキル『スキル重複』を習得させた後に各種ステータス『増強』系と『強化』系、『体力自動回復』や『超回復』『超再生』の回復系、『精神完全耐性』『物理完全耐性』『魔力完全耐性』『ダメージ軽減』などの耐性系、最後に経験値増加を伝授した。
スキル伝授の効果なのか、いちかちゃんの『慧眼』による学習サポートがあるのかは解らない。だが、二個以上持つ意味のない完全耐性系と『超回復』『超再生』以外は全て3~4個ずつ伝授した。
そんなこんなで、受験勉強とスキル伝授と。偶に一緒に買い物に行ったり、いつかの大車輪以来二家族一緒に遊びに行く機会も多かったので、その一環で恋人であることは隠しつつ一緒に海に行ったり。
紅葉狩りに行ったり。そう言えば秋の暮れ頃にいちかちゃんが「農作業の体験してみたい」と言って俺の祖父母の家に着いてきたときはかなりドキドキした。
じいちゃんばあちゃんも両親も、びっくりするほど歓迎ムードだった。
「……いっつも一人で筋トレばっかりしてるけど、彼女を連れてきたわい」「ひ孫の顔も見れそうで安心しましたね」とじいちゃんばあちゃんは喜んでいたし、親父に至っては「こんな馬鹿息子だが、いつも一緒に居てやってくれてありがとう」と酔った勢いで土下座までしていた。
……俺には一体家族から、どんな目で見られているのだろうか。
成績だって悪くないし、運動だってめちゃめちゃ出来る。……どこに不満があるのだろうか。
しかし、いちかちゃんが俺の将来の嫁さんみたいな扱いを受けていたのは悪い気はしなかった。寧ろスゴく嬉しかった。
そんなこんなで冬が来て、一月の暮れ。いよいよ受験をした。
見覚えのある問題だった。前の人生で、受験を受けた後に塾で回答の反省会をしたのを思い出していた。
例えば国語の大問三の説明文。筆者の考えを読む問題を間違えた記憶がある。
未だに筆者の考えは解らないが、出題傾向と過去の問題の解答と照らし合わせると――まぁ、こんなものか。
そんな感じで行く月来る月去る月と時は流れ。
二月の合格発表の封を開封するのはスゴくドキドキしたが、俺もいちかちゃんも合格で、年甲斐にもなく抱きついて喜びを分かち合った。
……いや、正直自己採点の時に合格は確実だと思ってたし。「喜んで思わず」みたいな雰囲気でただただいちかちゃんに抱きつきたかったってのが本音なんだけど。
い、良いじゃん! 一応、正式に恋人になったわけだし!!
そんなこんなで小学校も卒業である。
思い返せばこの六年間、スゴく楽しかった。
筋トレしたり。いちかちゃんと遊んだり。筋トレしたり。筋トレしたり。ダンジョンに行ってレベルが上がったり。筋トレしたり。いちかちゃんと恋人になったり。
前の人生では先生主導で虐められたり、同級生にちょっかいを出されて多少なりとも面倒な思いをした記憶があるけど、今世はスゴく手加減した『魔力威圧』とか『筋力威圧』で脅してやれば誰も嫌なことはしてこなかった。
因みに中学一年生をもうすぐ迎えようとする、いちかちゃんのステータスは大体こんな感じである。
名前 小林いちか
体力 2025/2025
筋力 1080
魔力 4万3200
敏捷 675 ▲
Lv 1
職業 なし
スキル ▼
『柔軟Lv14』『体力増強Lv4』『体力増強Lv1』『体力増強Lv1』『体力増強Lv1』『筋力補正Lv8』『筋力増強Lv1』『筋力増強Lv1』『魔力増強Lv36』『魔力増強Lv6』『魔力増強Lv4』『魔力増強Lv2』『演算Lv7』『鑑定Lv75』『アイテムボックスLv4』『超回復Lv2』『超再生Lv1』『敏捷増強Lv1』『敏捷増強Lv1』『体力強化Lv1』『体力強化Lv1』『筋力強化Lv1』『敏捷強化Lv1』『魔力強化Lv2』『魔力強化Lv1』
特殊スキル
『審美眼』『スキル重複』『体力自動回復』『精神完全耐性』『物理完全耐性』『魔力完全耐性』『ダメージ軽減』『アイテムストレージ』『真眼』『魔眼』
固有スキル 『慧眼』
強化系はやはり上位スキル故にLvが上がりにくいのか、相変わらずLvは1のままである。
それでも俺の称号『数値の暴力』が適用されるから、ステータスは低くない。
反復試行があればもっと楽に上がりそうだが、固有スキルの伝授は出来なかった。
他に『魔眼』は鑑定Lv75で手に入れたスキルみたいだ。
魔力を眼で見たりどうにかこうにか出来たりするらしいけど、俺は持ってないので解らなかった。
そんなこんなで、俺たちは中学生になった。
俺の記憶と予想が正しければ今年の夏も新潟で災厄が起きるだろう―
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