二回目の侵入

『ウィスプ』『レイス』『ゾンビ』


 Lv13~17のアンデッド、ゴースト系の魔物が浮遊したり歩いたりしてる。


「これがダンジョン?」


「うん。俺が来たときはゴブリンとかスライムみたいなメジャーどころだったけど」


 序盤のレベルの高さは、あの時以上。このまま下層はもっと強くなっていくのか、それともそうでないのか。

 俺は階層にいるモンスターを『魔力威圧』によって纏めて気絶させる。


「武器もなしにどうやったんだろうって思ってたけど、前のダンジョンでもこんな感じだったの?」


「うん。気絶した魔物を硬くした魔力で潰して終わりだったね。いちかちゃんもやってみてよ」


 いちかちゃんは、目の前にいた魔物三匹に恐る恐るといった感じで魔力の塊を乗っける。いちかちゃんの魔力量は『数値の暴力』込みで五万弱ある。

 俺が初めてダンジョンを攻略したときの魔力は確か百万近く遭ったから、階層丸ごと押しつぶせたけど、五万あれば半径20mくらいなら押しつぶせるだろう。

 魔力を硬くする練度とかを考えれば、もっと狭いかもしれないけど。


 しかし、三匹くらいなら難なくつぶせたようだ。


「レベルが上がってる!」


 今のいちかちゃんのステータスはこんな感じだ。


名前 小林いちか

体力 25580/25594

筋力 6947

魔力 30万7125

敏捷 4875     ▲

Lv 11

職業 なし

スキル ▼

『柔軟Lv14』『体力増強Lv5』『体力増強Lv2』『体力増強Lv1』『体力増強Lv1』『筋力補正Lv9』『筋力増強Lv1』『筋力増強Lv1』『魔力増強Lv36』『魔力増強Lv7』『魔力増強Lv5』『魔力増強Lv3』『演算Lv7』『鑑定Lv75』『アイテムボックスLv4』『超回復Lv2』『超再生Lv1』『敏捷増強Lv2』『敏捷増強Lv1』『体力強化Lv1』『体力強化Lv1』『筋力強化Lv1』『敏捷強化Lv1』『魔力強化Lv2』『魔力強化Lv1』『ダメージ軽減Lv5』『ダメージ軽減Lv3』『ダメージ軽減Lv2』

特殊スキル

『審美眼』『スキル重複』『体力自動回復』『精神完全耐性』『物理完全耐性』『魔力完全耐性』『アイテムストレージ』『真眼』『魔眼』

固有スキル 『慧眼』



 レベルが1つごとにあがるステータスは大体25くらいだが、増強系と数値の暴力の影響で馬鹿にならない数値になっている。

 しかし、レベル11で俺のレベル1の時と同じくらいか。

 やはり、攻略報酬のスキルレベルアップに期待が膨らむ。


 そんなこんなで、俺たちのダンジョン攻略はさくさくと進んでいく。


 俺が魔力威圧で気絶させた魔物をいちかちゃんが、どんどんと増えている魔力量によって範囲も硬さも上がっている魔力の塊で潰していく。

 一度「気絶させないで」と言われたので、なにもしなかったら逃げようとされたのでそれ以来は全部気絶させている。


 レイスもゾンビも、デスプリーストも。アンデッド系は全体的に魔力が高く、大抵が耐性持ちである。

 しかし、俺の魔力ステータスは去年の時点で250億越え。

 今は、いちかちゃんとパーティを組んでいる扱いだからなのか、俺が気絶させてるからなのか解らないけど、僅かばかり、レベルも上がっている。


 それに、あれ以降も鍛えているから魔力量は増えているのだ。


 耐性諸共、数値のゴリ押しで気絶させることは容易いし。『完全耐性』などでダメな相手も、アンデッドは筋力の数値が低いので『筋力威圧』で気絶させた。

 それでも気絶しなかった奴は危ないので、俺が潰した。


 そんなこんなで15階層。敵のレベルが40の大台に近づき始め、しかしひたすらに俺が気絶させて、いちかちゃんが魔力で潰すの作業を繰り返しながら歩いていたら以前見たような見てないような、ローブを着た老人の絵が描かれた扉の前へ着いた。


「靖くん、ここがボス部屋?」


「多分」


 俺は、初めて訪れるラーメン屋さんの扉を開けるくらいの緊張感でボス部屋の扉を開けた。


種族名 吸血鬼

名前 なし

体力 1万7255/1万7452

筋力 25万8990

魔力 34万5500

敏捷 8万2720     ▲

Lv 60

職業 闘士

スキル

『体力増強Lv3』『筋力増強Lv22』『魔力増強Lv35』『敏捷増強Lv7』『格闘術Lv13』『物理攻撃耐性Lv5』

特殊スキル

『体力自動回復』『魔力威圧』『魔力完全耐性』『精神完全耐性』『吸血』『手刀』



 レベル60の、全体的に能力が高い吸血鬼だった。

 レベルも俺とそんなに変わらないし、増強系のレベルを見る限りどのステータスも元数値自体は攻略報酬で結構底上げされている俺よりも総じて高そうだった。

 流石に吸血鬼だけあって、素のステータス自体は人間である俺より強いか……。


 しかし、素のステータスが高いってだけでお生憎様増強系のスキルレベルが低い。数値だけで言ったらどれもこれもが俺の1%にも遠く及ばない。

 鼻息一つで消し飛ばせそうなステータスの差である。


 以前、キマイラと戦ったときのことを思い出す。あの時は、迷宮から逃せば日本に大きな被害が出る。だから食い止めねば、と使命感に燃えたものだ。

 今もこの吸血鬼を外に出せばヤバいのは変わらないが、以前に比べても、彼我のステータスの差が凄まじい。


 これだけ差があれば小指の先でワンパンすることも容易いだろう。


 しかし、今回の最大の目的はあくまでいちかちゃんの強化である。

 とは言え、いちかちゃんが相手にするには吸血鬼のステータスは高すぎる。つまり危ない。俺は少し思案した末に魔力を操作して吸血鬼の全身を拘束した。


「いちかちゃん!」


「わ、解った!!」


 いちかちゃんは魔力を操作し、槍みたいな形状にしたものをチクチクと吸血鬼に刺していく。吸血鬼はうーうー唸っているが、身動きは全然取れない。

 吸血鬼を鑑定してみると、着実に体力が減少しているのが確認できた。


「ね、ねえ。今更だけど、こうして無抵抗の相手を刺し続けるのは罪悪感が湧いてくるんだけど」


 少し辛そうな表情で訴えてくるいちかちゃんに、まぁ、そろそろ良いかと思って吸血鬼を締め上げる。


「あと一突きだけお願い!」


「わ、解った!!」


 俺の魔力による締め上げで、体力を100にまで削られた吸血鬼はいちかちゃんの最後の一突きによってトドメが刺された。

 これで、例えトドメを与えた人間にのみしか報酬が与えられないとしてもちゃんといちかちゃんに行ってくれるだろう。


 そんなことを思っていると、いつか聞いた機械音声のような声が脳内で響いた。


《吸血鬼の討伐が確認されました。ダンジョンが攻略成されたのを感知しました。ダンジョン内の全てのモンスターの討伐が確認されました。魔力によって全モンスターおよびボスが討伐されたのを確認しました

 報酬として挑戦者全員のステータスが+1500されます。また称号『魔力のゴリ押し』を獲得しました》


 ……まぁ、アンデッドには魔力耐性あったしね。


《攻略者の条件が満たされていることを確認しました。

 エクストラボス『アンデッド・ドラグーン』がこれより出現します》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る