ステータス
高校生の頃、入部に失敗してなんとなく人間関係孤立していた頃の俺の趣味はバイトと筋トレだった。
まぁ、バイトが好きだったかと問われれば微妙だし趣味にカウントして良いのかは微妙だが、筋トレは割と好きだった。
筋トレは持久走に通じるものがあるが、持久走に比べて家でも出来る点――即ち、天候にあまり左右されないお手軽さが利点か。
朝、酸欠でぶっ倒れるまで走って、親父に回収された俺は外出禁止を言い渡されてしまったので、性懲りもなく筋トレに勤しむことにした。
効率的には、身体の主要な筋肉の七割を鍛えられるというスクワットが良いらしいが、俺個人としては腕立伏臥腕屈伸――腕立て伏せが好きだったりする。
まぁどちらにせよ、スクワットも腕立て伏せも腹筋も満遍なくするつもりだが。
「はぁっ、さ、三十っ……!!」
腕立て、腹筋、スクワット。それぞれ三十回(間に二分ずつクールタイムは設けてる)しただけで、息が切れる。
流石六歳児の身体。未熟だ。
学生の頃は百回ずつなんて余裕で出来たのに。……社会人になってからは暇がなくて出来てなかったし、それもあるのかもしれないけど。
とにかく……
名前 佐島 靖 ▼
Lv 1
職業 なし
スキル 『鑑定 Lv2』『敏捷補正Lv3』『体力補正Lv4』『筋力補正Lv3』
固有スキル『反復試行』
「よっしゃ、スキル増えてる!!!」
それにレベルも上がってる!!!
親父の「なんで外出禁止にしたか解るか? 大人しくしとけよ……」と言わんばかりの冷たい視線は気になるが、しかしそれよりも今はスキルだ。
筋力補正……これも最初からレベルが高めなのは、前の人生で学生の時筋トレを欠かさずやっていたからだろう。
この一瞬で体力が上がっているのは、前の人生の経験による影響か。あるいは、固有スキルである『反復試行』の影響なのかは解らない。
と、筋トレの休憩時間に自分の掌を見つめていたらふと気になるものを見つけた。
自分の名前の隣にある『▼』……さっきは気付かなかったが、鑑定のレベルが上がって見えるようになったのか?
俺はその『▼』を注意深く見てみる。
すると……
名前 佐島靖
体力 7/12
筋力 5
魔力 1
敏捷 5
Lv1
……ステータスのようなものが出てきた。
体力はHPのようなもので敏捷は素早さってのは、なんとなく解った。だとすると筋力は攻撃……いや、でも防御がないし兼ね備えているステータスで、だとしたら、魔力は魔法攻撃力と魔法防御を兼ね備えているのかもしれない。
確かめる方法が思いつかないので憶測の域は出ないが。
しかし、魔力1か。
魔力があるのは、まぁ、このウィンドウが出たときの驚きや非現実さに比べればそんなにたいしたことはない。スキルがあるのなら、魔力だってあるのだろうって感じだ。
ただ、魔力1。この1って数字が妙に気になった。
1ってのが少ないのは解る。でも0じゃないのだ。そう、0じゃない。
なら存在するのだ。魔力が。
魔力の存在を見て、俺が立てた仮説は大きく二つだった。
まず一つ目は、この世界はパラレルワールドで俺の知る世界とは違うパターンだ。それ故にこの魔力というものが存在しているのであれば、もしかしたらこの世界には『魔法』のような、魔力を使った技術が存在している可能性がある。
だとしたら、もの凄くワクワクする!!!
前の人生、ゲームだって好きだった。あんな単純作業の塊みたいな遊戯、俺が好きにならないわけがないのだ。
ゲーマーなら誰しも、魔法に憧れるだろう!!
ただ、俺はこっちの仮説を推している。
それは、前の人生でも魔力はあったけど、純粋に俺が知らなかったパターンだ。
そして、もっと言えば魔力を応用した魔法なんてものは存在しないパターンだ。
スマホやインターネットが普及した世界。もし魔法を使えるものが居るなら、一人くらい動画を投稿する人が居てもおかしくない。
そうでなくともあのネット社会で、完全に情報を――それも、魔法みたいな、多くの人が気になりそうなそれを隠匿するなんて不可能だろう。
それでも、その存在が確認されないのだ。存在しないと見た方が良い。
実際、昔読んだ本でも、宇宙の大半は観測不能な所謂『ダークマター』で出来てるって言うし、魔力だってその一つなのかもしれない。
だから、魔法の存在の有無は定かじゃないし、ないかもしれない。
でも、これだけは確定している。
魔力は実在する。
数値上では1だけど、実在するのだ。
だったら、せめて魔力だけでも観測して動かして鍛えてみたいだろう!!
俺は、目の前の襖やタンス畳などを『鑑定』したり、座禅を組んで魔力のようなものがないか探ってみたり。
成果が得られず飽きて、筋トレを再開したり。疲れてまた、魔力を探ったり。
六歳児に戻った初日は、途中のご飯とお風呂を除いてひたすらにそのルーティーンを繰り返して寝た。
そして次の日。
昨日調子に乗って筋トレをし過ぎたのがダメだったのか、酸欠になるまで走ったのがダメだったのか。
途轍もない筋肉痛に全身を苛まれていた。
「痛っ、痛たたっ!」
そんな中でも習慣か、子供の身体故に元気が有り余っているのか、六時に起きて、公園を走る。筋肉痛の痛みに耐えながら走る。
そして今日は昨日の反省を活かして二時間ほど走った後に帰り、朝ご飯を食べた。
それから俺は、強烈な筋肉痛に耐えながら腕立て伏せ、腹筋、スクワットを30回ずつ繰り返した。
オーバーワークというか、筋トレ的には休めた方が効率が良いのも知っていたが、スキルになってレベルが上がると言う楽しさ、快感に踊らされて、いつの間にか筋肉痛も気にならなくなったので、繰り返した。
そして、疲れたら休憩時間に魔力とやらを探してみる。
瞑想したり、仰向けになったり、外に出て砂にまみれてみたりしても魔力は見つからなかった。
因みに、砂まみれになって帰ったらお母さんに怒られたし、ひっぱたかれた。
そんなこんなで夜になって、俺はこの二日の集大成を見るべく掌を見つめる。
名前 佐島 靖 ▼
Lv 1
職業 なし
スキル 『鑑定 Lv2』『敏捷補正Lv4』『体力補正Lv4』『筋力補正Lv4』『超回復Lv1』
固有スキル『反復試行』
筋肉を酷使した結果、超回復を得た。それに、敏捷補正と体力補正のレベルが一つずつ上がった。
けど……
「これじゃない!! 俺的には、魔力操作的なのが欲しかった!!」
「うるさい! いい加減にもう寝なさい!!」
お母さんにひっぱたかれて、渋々布団に入った俺は、子供の身体だからか、疲れていたからか、ものの数秒で熟睡の海に吸い込まれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます