成長の記録2

 更にあれから一年と半年が過ぎ、俺はとうとう十歳の誕生日を迎えた。学年にして四年生である。

 前の人生の俺の記憶だと、小学生の頃の俺はまだ比較的にコミュニケーションが取れていた気がする。

 特にこの辺の時期は普通に友だちもいたし、性格も明るかった記憶がある。


「先生、やす……佐島くんは運動会の種目玉入れに出たいって言ってます」


「ええ!? 佐島くんこのクラスで一番足速いのに!? お願いだから、対抗リレーのアンカーやってよ!! ……って言うか、いい加減自分の意見を小林さんに代弁させるの辞めない?」


 しかし今では、幼馴染みとして辛うじて交流を保っているいちかちゃん以外の人でコミュニケーションが取れる人が居なくなってしまっていた。

 と言うのも、その原因はこの人生になってから欠かさずトレーニングを続けていることに起因する。……それも、トレーニングのために人間関係をドブに捨てているからと言う理由ではなく。いや、人間関係をドブに捨ててるのも否定しないけど!


 そのお陰なのか何なのか、現状唯一俺とコミュニケーションを取れる(と先生に認識されている)いちかちゃんは、二年生以来ずっと俺と同じクラスだったりする。

 やっぱりクラス分けは仕組まれてるんだなー。


 そんな俺のステータスがこれである。


名前 佐島 靖 

体力 1万2000/9250

筋力 6500

魔力 93万6100

敏捷 6500     ▲

Lv 1

職業 なし

スキル ▼

『鑑定 Lv24』『敏捷増強Lv63』『体力増強Lv72』『筋力増強Lv63』『超回復Lv82』『並列思考Lv7』『魔力増強LvMAX』『魔力増強Lv32』『農業Lv11』『教授Lv12』『柔軟Lv42』『ダメージ軽減Lv38』『魔力効率増強Lv42』『遊泳Lv50』『魔力強化Lv22』『隠密Lv22』『体力強化Lv5』『敏捷強化Lv4』『筋力強化Lv4』

特殊スキル

『精神完全耐性』『俊足』『剛力』『体力自動回復』『魔力操作』『魔力吸収』『魔力完全耐性』『魔力解放』『魔力威圧』『超演算』『物理完全耐性』『瞬歩』『縮地』『神速』『加速』『体力吸収』『体力貯蓄』『審美眼』『関節可動域増加』『金剛力』『筋硬化』『筋力威圧』『阿修羅』『スキル重複』

固有スキル『反復試行』


 見ての通り、ステータスの値がとんでもないことになっている。

 筋力一つとっても平均的な成人男性の100倍近い値なので最早自分が今どれくらい強いのかよく解んないんだが、特に、魔力がヤバい。936100ってなんだ!? ってくらい馬鹿げた数値である。


 俺がこうなってしまったのは数ヶ月前『魔力増強』をカンストさせたからだった。


 魔力増強はLv100でカンストだった。その時に得たスキルが新たなる『魔力増強』そして、魔力増強は本来元の数値(今は平均50)に補正が掛るが、二つ目の魔力増強は一つ目の魔力増強の補正が掛った2550に更に補正が掛るのである。

 その時点で、42550。その上で、『増強』系がLv50になったときに習得できるスキル『強化』系は対応するステータスにLv倍の補正を掛けるものだった。


 当然、レベルの上がりにくさは今俺が持っているスキルの中で群を抜いている。


 故に魔力以外の奴は低めのレベルで留まってるが(それでも4~5倍はえげつない)しかし、魔力だけは別格だった。

 日に日に、それこそ指数関数的に上がっていく筋力や敏捷に適切な負荷を掛ける必要がある魔力は必要に応じて強くなっていく。

 そのほかにも授業中圧縮したり硬化させて弄くりつつ、果ては日頃の移動や寝るときのベットになど、俺はついぞ二十四時間魔力を使うと言う状態になってしまった。


 そして俺の固有スキル『反復試行』――使えば使うほど成長が早くなっていくこのスキルのせいで、魔力の強化は歯止めが利かなくなる。


 特に何がマズかったかと言えば、魔力を利用して空中を移動できるようになったことだ。硬化させた魔力を足場にして空を掛ける。

 しかも、かくれんぼ中に会得した『隠密』を鍛えまくった結果。そして、敏捷を上げまくって音速を超えて走れるようになった結果、航空カメラ程度では捉えられない程になったのだ。


 そんなこんなで、スキルのレベルが10上がるごとにスキルを得たりしている間に得たスキル『魔力威圧』と『筋力威圧』――Lv60で手に入れたのは、ステータスの値によって相手を威圧する(具体的には、相手の魔力か筋力のどちらかが俺のステータスの1/100だったときに相手を気絶させる)と言うスキル。


 一応任意で発動できるステータスだが、それでも持っていれば自然と滲み出るみたいで、これを手に入れてからは輪を掛けて人が寄りつかなくなった。

 以前は先生に「偶には友だちと遊んだら?」とか余計なお節介を言われるくらいはあったけど、今ではそんなことを言う前に筋肉をぴくりと動かせば先生は涙目になって「ひっ」と言うだけである。


 さっきだって「小林さんに代弁させるの辞めたら?」と言っていたけど、俺が先生を直接見て意見を言おうものなら、先生は俺の無意識下で威圧されて、生徒の前で失禁してしまうことだろう。

 うん、あくまで無意識下の話である。強すぎるって孤独なんだなー(棒)


 しかし、そんな威圧振りまくほどに強くなりすぎて人を寄せ付けなくなった俺にも変わらず接してくれるいちかちゃんは完全に俺の天使である。


 以前「俺が怖くないの? なんで今まで通り一緒に居てくれるの?」って聞いたら「やすしくんが本当は良い子だって知ってるから」って答えてくれたのだ。

 惚れたね。惚れ直したね。流石俺の初恋の人である。いちかちゃんマジ天使。


 冗談抜きで、こうなってしまった俺は割といちかちゃんなしでは人間社会で生きていくことが出来なさそうなので、どう媚びを売ったものかと思案しながら。

 とりあえず、性懲りもなく。魔力を操り、筋トレに勤しむことにした。

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