成長の記録

 魔力を使ったトレーニングを覚え、両親に外国産の1kg1000円くらいの安いプロテインを買って貰えるようになって、より効率的に、より迅速に筋力を鍛えられるようになった。


 トレーニングに熱中したり。いちかちゃんと遊んでいたら、いつの間にか夏休みが終わっていて、二学期は授業中に座りながら魔力を使って筋トレをする方法を試行錯誤した。

 そのほか、昼休みや放課後、早朝をトレーニングに費やしたり。

 時たまいちかちゃんと登下校一緒にしたり、放課後遊んだり。


 9.11同時多発テロをニュースで見て「そう言えばこれは衝撃だったなぁ」だなんてありきたりな感想を抱いてみたり、トレーニングしたり。

 そんなこんなしていたら冬休みが来て、終わって、三学期になって。

 春休みにいちかちゃんと「来年同じクラスになれば良いね」とか話して、前の人生ではいちかちゃんと同じクラスになるのは六年生の時の一回きりのはずだったのに、何故か二年生は同じクラスになっていて。


 そう言えば、問題児とかは面倒見てくれそうな人と同じクラスになりやすい。みたいな話があったことを思いだして。

 いや、俺は断じて問題児じゃないけど。

 授業聞いてないけど、流石にテストは全部満点だし。寧ろ日々を自己鍛錬に捧げているあたりストイックとも言える。

 ちょっと熱心で、近寄りがたいだけだ。


 お陰で、いちかちゃん以外の人と遊んだりすることはないけど、小学生特有の「女の子と遊んでるなんてだせ~」なんて誹りを受けたこともなかった。

 まぁ、イマドキの子供は懸命だし。変わり者には関わらないのだろう。言っていて少し哀しくなってくるが、トレーニングの邪魔をされても面倒だし問題はない。


 そんなこんなで、俺にとってのイベントは偶にいちかちゃんと遊ぶか両親の付き添いで畑仕事の手伝いをする程度で、後は魔力を使った筋トレと走り込みをする毎日。ルーティーンをこなすのは性に合っているし、固有スキルとの噛み合いも良いのだがとにかく、代わり映えのない日々を過ごしてそろそろ二年生も終わる。

 春休みを迎えた現時点での俺のステータスは大体こんな感じだった。


名前 佐島 靖 

体力 483/500

筋力 400

魔力 1320

敏捷 400     ▲

Lv 1

職業 なし

スキル ▼

『鑑定 Lv12』『敏捷増強Lv18』『体力増強Lv23』『筋力増強Lv18』『超回復Lv28』『演算Lv9』『魔力増強Lv42』『農業Lv7』『物理耐性Lv7』『教授Lv6』『柔軟Lv11』『炎熱耐性Lv4』『ダメージ軽減Lv4』『魔力効率補正Lv8』『遊泳Lv15』

特殊スキル

『精神完全耐性』『俊足』『剛力』『体力自動回復』『魔力操作』『魔力吸収』『魔力完全耐性』

固有スキル『反復試行』


 まず一つ、ステータスがとんでもないことになっている。


 参考までに、極々普通のサラリーマンである親父(38歳)のステータスはこんな感じだ。


名前 佐島 浩介

体力 62/68

筋力 54

魔力 1

敏捷 27     ▲

Lv 1

職業 なし

スキル ▼

『体力補正Lv5』『筋力補正Lv4』『剣術Lv3』


 職業はちゃんと会社勤めのサラリーマンであるはずなのに『なし』ってのは少し気になるが、まぁ魔法使いとか戦士みたいな職業ではなさそうだし、鑑定的にはないに等しいのかもしれない。


 剣術は中学生の部活が剣道部だったかららしいが、しかし、決して運動が出来ないわけでも貧弱な訳でもない親父のステータスがこんなもんなのだ。

 38歳は決して若くないが、年老いているわけでもない。十分現役を名乗れる年齢だ。

 にも関わらず、俺の筋力と敏捷はそれぞれ400ある。


 つまり、俺の筋力は親父の8倍弱。敏捷に至っては14倍近くあると言うことだ。

 もっと言えば、俺の筋力は大体ヒグマやゴリラに匹敵するし、敏捷に至っては新幹線並みに速く走れると言うことである。


 尤も実際の強さに関しては俺の体重が27kgしかないこともあって、800kgにもなるというヒグマと殴り合って勝てるかは微妙だし、逆に軽いが故に新幹線並みの速度で走れているわけではあるが。

 それに関しても、数値にして1320もある魔力を活用すれば問題ないだろう。


 因みに、この1320の魔力。想像以上にとんでもない。


 小一の夏休みの段階の84の時は、座れるくらいの強度で大体バランスボールくらいの大きさになっていたが、今はその15倍以上。

 座れるくらいの強度――粘度を保ったままで大きめの教室一つ分くらいのサイズになる。

 でも、そこまで硬い魔力を教室で展開すればクラスメートが圧死するので、普段の魔力の範囲はいつかの灯火くらいの柔らかさで学校一つ分くらいである。


 しかし、凄まじいのはこの広さではない。


 この魔力は質量もあるし、触れることも出来るのだ。そして、大体水くらいの硬さにするのであれば25mプールくらいのサイズにすることが出来るのである。

 そして、そこまで大きくなった魔力はなんと、泳ぐことが出来る。

 それはもう、端から見れば空を飛んでいるように見せかけることだって出来るのである。


 まぁ、他人に見せたら解剖されかねないので人気のないところでこっそりと楽しむ程度ではあるが。

 もっと魔力量が増えたら、更に色々出来そうなので楽しみである。


 そして、凄まじいと言えばステータスもとんでもないがスキルの方もとんでもないことになっていた。

 まず、体力、筋力、敏捷、魔力の『増強』系のレベルがとんでもないことになっている。一番低い筋力、敏捷でも18。魔力に至っては42である。


 10でカンストだと思っていたけど、そうでもないらしい。となれば100で新たなスキルになるのだろうか?

 それとも、新たなスキルにならずに純粋に頭打ちになるのか。

 よく解らないが、それはまぁ。その時が来た時に考えれば良いだろう。


 因みに新しく増えた『俊足』『剛力』『体力自動回復』『魔力操作』『魔力吸収』『魔力完全耐性』などの特殊スキルや普通の『ダメージ軽減』『魔力効率補正』などのスキルはそれぞれの『増強』のスキルのレベルが10の倍数に上がったときに新たに取得したスキルだ。

 体力増強Lv20の報酬がダメージ軽減だったのは少し意外だったけど。


 他に取得した『精神完全耐性』は精神耐性がLv10にあがったときに変化したもので、効果自体は精神耐性Lv10と変わらないようだ。

 因みに、炎熱耐性はゆで卵を剥くときに火傷して得たスキルだったりする。


 あの夏休みから一年半。魔力トレーニングを見つけてから、走る距離もトレーニングの回数も据え置きで、魔力で負荷を増やせば良いだけだったから、本当に代わり映えしない日々を過ごしてきたのだ。

 さっきもいったように、大きなイベントと言えばいちかちゃんと偶に遊ぶことと、両親の連れ添いで祖父母の家の農作業を手伝うくらい。


 そんな代わり映えの無さが、恐らくレベルが上がるごとに上がりにくくなるのであろうスキルが変わらない……それどころか加速する勢いで、上がっていっているのは間違いなく俺の固有スキル『反復試行』の恩恵だろう。

 比較対象がないから解らないけど、少なくとも筋トレを重ねるごとに。魔力を操るごとに、自分でも無駄がそぎ落とされているのを感じるのだ。


 正直これだけ鍛えて。強くなって、いつ役に立つのかは解らない。


 ただ、鍛えれば鍛えるだけレベルが上がるのが楽しいのだ。

 今の俺は子供だし、楽しければそれで良い。それに、まぁ将来は魔力で銃弾を防ぐくらいは出来そうだし、傭兵とかになってみるのも面白いかもしれない。


 あまり考えないようにしていたが、未だに1のまま動かないレベルも気になっているのだ。あるいは、戦場に出て人を殺せば上がるのか。

 上がるとして、俺はその時喜んで人を殺すのか。


 悩んでいると際限なく、深みにはまっていく。やはり、俺は物事を考えるのがあまり好きじゃなかった。

 その点筋トレは素晴らしい。余計なことも嫌なことも、疲労と充足感で真っ白になって全てが吹っ飛んでいく。


 俺はいつものように、プロテインを飲んで傷ついた筋肉を『超回復』の効果で無理矢理回復させてから、魔力で負荷を掛けて公園に駆け出した。

 全力を出せば新幹線並みと言ったが、負荷を掛けてるので1km走るのに掛る時間は大凡4分である。

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